第85話 王妃殿下が家出してきた

 屋敷のバルコニーから外を見ていると、大変立派で豪華な馬車が一台、屋敷の前で止まった。


 なんだなんだ。あれは私が国王陛下に献上した魔道馬車ではないか。

 国王陛下が来られるなんて聞いてないぞ。


 そう思いながら見ていると御者台からフードを被った女性が降りて、バルコニーにいる私に気づかれました。


「あら、アイリスちゃん。前触れもなく来てしまってごめんなさいね」


「王妃殿下!!」


 何故に王妃殿下がお一人で来られたんだ?

 元気になったとは、聞いていたけどさ。


 私は、慌てて玄関にお出迎えに行った。


「王妃殿下。いらっしゃいませ。どうされたのですか?」


「家出してきちゃった。テヘ」


 王妃殿下!!家出してきちゃったっではないです。

 何考えているんですか!!あと年を考えてください。お若く見えますが、四十越えてますよね。

 四十超えて、テヘはイタすぎます。


「因みに国王陛下たち王城にいらっしゃる方々には……」


「家出ですもん。黙って来ましたよ。まあ、私が居ないことと魔道馬車がないのに気づけば、大慌てで探すでしょうね」


 王妃殿下……何普通に話されているんですか……


「家出の原因は何なんですか?」



「元気になったというのにルーヴァンもトマスも自由にやりたいことをやらせてくれないのです。

 だから体が鈍ってしまって仕方がないのですよ。

 長い間ベッドから出られなかったので、筋力が落ちているので、運動したいのに……

 それに私だけファミーユに行ったことがなかったので、折角なので、来てみました」



 王妃殿下は、体を動かすのが好きな人なのか。

 でも国王陛下たちは、病み上がりだからと心配していると……じゃあ、王妃殿下のために運動するための魔道具でも作ろうかな。


 心配しているだろうし、王城が大変なことになっているだろうから手紙を転送して、国王陛下たちに知らせるしておこう。


「アイリスちゃん。魔道具で手紙を転送しちゃダメよ」


 先手を打たれた。後でカゲトラさんに頼んで王城に転移してもらって、知らせてもらおう。

 王妃殿下は、ルシフェルのことは国王陛下たちから聞いて知っていたとしてもカゲトラさんのことは知らないだろうからね。


「わかりました。どのくらいいらっしゃるおつもりなのですか?」


「そうね。二週間くらいかしらね」


「わかりました。カイル兄様にも伝えておきます。

 いらっしゃる間、アリステラ邸でごゆっくりおくつろぎくださいませ」


「勿論、屋敷でゆっくりさせて頂きますが、まずは冒険者ギルドに行きましょう」


「ギルドですか?王妃殿下が行かれても面白くはないと思いますよ」


「何言っているの。依頼を受けるのよ依頼をね。

 私、こう見えてルーヴァンと結婚して王妃になるまでは、Aランクの冒険者としても活動していたのよ」


 マジですか。貴族令嬢が行動的すぎやしませんか。

 私も公爵令嬢で冒険者ではあるけど、転生者だからね。


 純粋な貴族令嬢ではないのから仕方がないんだよ私の場合はね。


 私は、カイル兄様に王妃殿下が来られたこととカゲトラさんに転移魔法で王城へ行き、国王陛下たちに王妃殿下がファミーユに居ることと二週間くらい滞在予定であることを伝えてもらうように頼んだ。


「王妃殿下。カイル兄様に報告をして参りましたので、ギルドに行きましょう」


 そう言って私は王妃殿下とギルドに向かった。

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