第75話 マーガレット義姉様たちは、転移魔法初体験

「じゃあ、トマスの後任が決まるまでは、トマスもファミーユにいるということで、いいかな」


「仕方がない」


 マーガレット義姉様が自分が行くからトマスさんは、王城で王太子として仕事しろと言い出し、トマスさんが、今までもやって来たのだからファミーユでも出来ると反論しだしたので、妥協点を見つけて、後任が決まるまでは、トマスさんもファミーユにいることに決まった。


「早急にカイル様の専属騎士を任せられる者を探さないといけませんね」


 でもアリステラ公爵家の騎士団は、トマスさんとカイトさん以外は、旧本邸の結界の中なんですよね。

 私が張った結界のお陰で危険がないからと後回しにしていましたが、トマスさんの後任を探す以前に、騎士団のメンバーを集めないとですね。


 それをわかっているから、トマスさんも後任が見つかるまでという案をのんだのでしょうからね。


「トマスの後任を探す前に騎士団のメンバー集めないといけないんだよね」


「それは、後任が決まってからでいいのではないですか。

 私がカイル様の補佐をするので、サクヤさんにトマス兄上の後任になってもらったらいいではないですか。

 勇者ということですし、お強いのでしょう?

 剣はお持ちではないようですけど……」


 マーガレット義姉様は、後任の誰にするか考えていたのですね。

 サクヤに後任が決まれば、トマスさんはこのまま王城に残ることになりますからね。


「剣が必要なら、宝物庫にある聖剣を持っていってよいぞ。

 あれを抜いたのはサクヤ殿であるし、宝物庫にあるよりは使ってもらった方がよいからな」


 国王陛下は、マーガレット義姉様の味方をするみたいですね。


 カイル兄様とサクヤはどうするつもりでいるのかな。


 サクヤは、強いけど、護衛騎士としての経験はないし、空いている時にという条件付きではあるけど、冒険者として私たちのパーティーのメンバーなわけだけど、カイル兄様の専属騎士になったら、カイル兄様と屋敷内以外では、常に行動を共にすることになるんだよね。


「確かにサクヤは、強いが騎士として護衛した経験がないからな。

 もし、私の後任がサクヤになったとしても任せられるようになるまでは、私も一緒に護衛をすることになるな」


 勇者と王太子殿下に護衛される公爵家当主……想像するとカオスだね。

 普通は、王太子殿下は、護衛される側だもんね。


「なら、サクヤ殿がカイルの専属騎士になるかならないかは、別にして王城の近衛騎士からだせばいいな。

 どちらにしろ、マーガレットの護衛をさせるジャックは、着いていくことになるのだからな」


「わかりました。私は、王城で王太子として頑張ります」


「やっと、わかってくれたようじゃな。トマスには、次期国王として教えなければならぬこともあるし、今まで、会うことが出来なかったからクリスティーナも喜ぶだろうしな」


「父上。母上のことを出すのは、卑怯ですよ」


 サクヤがカイル兄様の専属になるかは、別にして聖剣はサクヤに渡され、トマスさんは王城に残ることが決まった。


 アリステラ公爵邸にあるトマスさんの部屋の荷物だが、こんなことになるだろうと、私が以前あげた、アイテムバッグに入れて持ってきていたらしい。


「はじめまして、マーガレット様の専属メイドのハルナです。

 それから一緒に行く事になるアンジェリカ、レベッカ、ソフィアです」


「アンジェリカです」


「レベッカです」


「ソフィアです。アイリス様には、元愚弟がご迷惑をおかけした様で、申し訳ございませんでした」


 ソフィアさんは、ズイラン男爵の娘さんで、あのお坊っちゃんのお姉さんらしい。

 それより気になったのが、専属メイドのハルナさんだよね。

 見た目も名前も日本人っぽいんだよね。後で聞いてみよ。


「もう終わったことですから、ソフィアさんが気になさることはないですよ」


「俺は、マーガレット様の専属騎士のアーロンだ」


「同じく、専属騎士のリットです」


「はじめまして、アイリス様。急遽、行く事になったハロルドです」


 王女様の専属騎士だから女性もいるんだね。

 ハロルドさんは、カイル兄様の専属騎士候補ってことかな?

 何で、私だけにはじめましてと言ったのかを聞くとハロルドさんもカイル兄様の学生時代の同級生らしい。


 そして私たちは、転移魔法でファミーユに転移した。


「まさか。伝説の転移魔法を体験できるとは思わなかったわ。

 アイリスちゃんは、凄いのね」


「直接、屋敷に転移したから町の様子は、後で案内するから、その時に大いに驚いてくれ」


「驚くほど凄いの?王都でも見たこともない馬車みたいなのがはしっていたけど」


「アイリスが色々やらかしたから凄いことになっている。

 あと、国に張られている結界については、世界中に公表されているから知っているだろうけど、この町にも同じものが張られている。

 国の結界は、維持するのに罪人を魔力供給源にしているが、こっちは、アイリスの魔力だけだけどね。

 あと、人族以外に魔族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族など他種族も住民として、暮らしている」


「元魔王もいるのよね。早く、会ってみたいわね

 勇者と元魔王が同じ町で、暮らしているなんて凄いわね」


「ルシフェルは、食事の時には屋敷に来るから夕食の時に会えますよ」


 スノーとグレンも紹介しておかないとね。


(スノー、グレン。来てくれるかな)


(わかった)


(かしこまりました)


「えっと、白いもふもふの毛並みのフェンリルがスノーで、フェニックスがグレンです。呼ぶ時は、名前で呼んであげてくださいね。」


「まさか聖獣様までいるのね」


 それから屋敷にいる使用人たちの紹介をしたりした。

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