第70話 王妃と王太子①

 昼食に私は、トムヤムクンラーメンを堪能して、只今食後の休憩中である。


 ルシフェルは管理人なのでマンションに帰って行き、アナリスさんは姉であるミリーナのところに、サクヤはカイル兄様からの頼まれ事があるとかで出掛けて行った。


 カイル兄様は、食べ終わると仕事が残っていると執務室に戻っていってしまった。


 私は、気になることがある。

 それは、国王陛下には会ったことがあるが、王妃殿下と次代の国王である王太子に会ったこともなければ、どんな容姿なのかも知らない。


 国王が世継ぎがいないことなんて、あり得ないし、もし、できない体質なら養子を取ったりする。


 カイル兄様から学生時代同級生だったと聞いているので、王太子殿下がいるというのは知っている。

 だが、王妃殿下に関しては、死別したのか離縁したのかすらわからない。


 そういえば、トマスさんもカイル兄様と同級生だったって言っていたな。


 周りを見渡してみたが、トマスさんの姿がない。

 屋敷内なので、護衛する必要もない。

 どこ行っちゃったんだろうな~。


 同級生だったんだし、カイル兄様は執務室にいるのだからトマスさんを探して聞くより、カイル兄様に聞いてみよう。


「カイル兄様。よろしいでしょうか?」


「ダダダメだ」


「入ります……」


 どんなに忙しくてもダメと言われることがなかったので、反射で入りますと言って部屋に入ると、カイル兄様が四つん這いになり、その背にカイル兄様の専属騎士であるトマスさんが座っていた。


 なんだこの状況は……


「お邪魔しました。ごゆっくりどうぞ」


 私はそう言って、部屋の扉を閉めた。


「アイリス。ダメだって言ったよね~。この状況を見られてしまったのなら、仕方ない……説明すから……絶対にアイリスは、誤解をしているから入っておいで……」


 誤解している?主を四つん這いにさせて、背に乗る専属騎士って普通はあり得ない状況だ。


 主と騎士だけど、実はそういう関係で、騎士であるトマスさんが攻めで、カイル兄様が受けで……


 トマスさん、いないと思ったらカイル兄様の執務室で、二人でこんなことしているなんて……


 公爵家当主になる前からおかしいと思っていたのだ。


「いい加減、退いてくれないかな。私は、アイリスの誤解を解かなければならないのだ」


「はい。はい。よっこらせっと」


 会話の感じから、トマスさんがカイル兄様から降りたみたいだ。


 次期公爵家当主で、成人しているのに結婚どころか婚約者もいない、婚約の話しすら出なかった……男色家だったからなのか。


 納得、納得、ナットクール宅急便。


「早く入っておいで……いないのかぁ~い」


 見ては行けないものを見てしまい、扉を閉めてしまったので、入りづらいだけです。


 一旦、リビングルームに戻って気持ちを落ち着かせいよう。

 それから何食わぬ顔で、執務室に入ればいい。


 そう決めた私は、気持ちを落ち着かせるためにアリスたちの居るリビングルームへと向かった。


「アリスさん。ミルクティーを貰えるかしら」


「かしこまりました。お早いお戻りですがアイリスお嬢様は、カイル様に用があり、執務室に行かれたのではないのですか?」


「忙しいみたいだったから、一旦戻ってきたの。

 しばらくしたらまたいってみるつもりだよ」


 流石にアリスさんたちに、さっきのことを話すわけには行かないもんね。

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