第30話 梅雨の時期ってなんかテンション下がるよね

「なぁ〜。」


「どうしたの?」


「いやー、6月入ってからよ。」


「うんうん。」


「毎日雨やんけぇぇーー!!!!」


そう、俺らの学園生活は3ヶ月目を迎えていた。案外中間終わった後は特になにもなく、日常の繰り返し。

そして、なぜか6月に入ってから急に毎日が雨である。ほんま極端すぎるやろ。


「これ、ゲーセンに行くまでが一苦労だよ…。」


「バチとか財布濡れたら終わりもんやからな。手塩かけて作ったもんカビたら一発やぞ。」


「ずっと曇空だと、なんか紫外線が晴れの日より多いって聞くしね。お肌に悪いったらないよ。」


「アレ、お前そんな肌気遣うやつやっけ。」


「そ…そうだよ。悪いかよ…。」


「ふーん、いや全然ええと思うねんけど。やっぱ秘訣はそれか、と思って。」


「ま…まぁ、とにかく、この天候だと外にも遊べないし…どうしようか。」


ピンッと、俺のガチガチでちっこい脳みそに電気が走った。


俺は閃いたぞ。


「おい…毎日雨なんやったら、もういっそのこと雨に一日中うたれたらええやん。」


「え…なんて無茶な…。風邪ひいちゃうし。」


「いや、なんか最近あったかいからいけるって。これで俺ら天気と一体化できるぜ。」


「やばいことさっきから言ってるからね?景一。」


「まぁやろうぜ!やってみーひんとわからんやろ!」


「そ…そうだけども、ってあー!景一まて〜!!」


________ということで日曜日


「いや〜集まってくれて嬉しいぜ。」


「おう!なんか楽しそうだからな!」


「なんか…雨にうたれるって、神秘的だよね。なんかわからないけど、夜の街の情景と雨が混ざり合うと、すごく美しい。」


「いやー、それめっちゃわかる!めっちゃインスタ映えするんだよねー!」


「ああ…ほんとにやっちゃうんだ。」


「そらそやろ、ってことで、着替えはもってきた?」


『YES』


「んじゃ、俺んちに全部とりあえず置いといてや。てことで公園傘無しで行くぞ!!!」


『おーーー!!!!!』


「なんでそんなみんなノリノリなんだよぅ。」


________


ボクは楽しそうだなと思いながらも、バレるのではないかと思っていた。


だって…スケスケになるじゃん!!!


ブラバレちゃうよぉ…景一にバレちゃうよ…とかずっと思っている。


だから、シャツを着て誤魔化そうと思った。


幸い、胸があまり…ない。というか…自分では言いたくないが…小学校からずっと同じままなんだよ!もっと成長してたら…女の子って気づいてもらえたのに…。ずっとAとBを彷徨っている。


だから…シャツを着ていたらバレないだろうと思う。


________


「うぇーい、っしゃあ!じゃ次お前外野なー。」


「久々に中あておもろいぜ!女子達にも、手加減はしないぜ?」


「ドーンとこい!ボクが全部受け止めてみせる。」


「伊織…かっこいい。私、守られる!」


「わたしも…容赦しないよー?」


「ボコボコにしてやるさ!」


俺たちは人のいない、広い公園で大雨の下、中あてをしている。側から見たらアホ共5人の集い…しかし楽しすぎる。こんなウキウキするとは…。


「あーーー!!!!最高やぜ!!!!!!」


『気持ち良すぎるぅぅぅ!!!!!!』


俺たちは雨に打たれ、濡れながらボール遊びを楽しむ。


「おいおい、お前ドロドロやんけ笑笑。」


「って、景一が当てたんじゃないか!」


「ボク達もドロドロだよぉ。」


「やっばい〜、ちょーたのしいー!サイッコー!」


「楽しい…楽しい…!!雨の日の中遊ぶのってこんなに楽しいんだ…!」


「おぉそうや、滑っても知らんけどよ、鬼ごっこしようぜ!」


『さんせーい!』


「ええよ、提案者の俺が鬼で、この公園内な!」


俺たちは鬼ごっこをやることになった。


まぁそれはそれは楽しいもので、釘本は盛大にずっこけ、


「あーー、いてぇけど楽しいー!!!」


麦野は転び、


「あはっ!怪我ないし大丈夫よ!あー最高すぎる!こんなに雨に打たれながら走るのって快感なんだねー!!」


鍵塚はスケートやってる人みたいになって、


「う…うぁあぁ、止まらないよーー!誰か止めてーー!!」


そして俺と景一は、曇天の下、上を向きながら仰いでいた。


「ヒャー!!もう服なんかどうでもええわ!サイッコーやなぁ!」


「あぁ、ひなたぼっこより気持ちがいいよ…。このまま土に浸透してゆきたい…。」


「わかるわ〜その気持ち。そやお前らも寝転んでみろ!もう服なんか気にするな!エグ気持ちええから!」


そして親友5人、輪っかを作るように寝転んだ。


『あぁ…なんだろう、この癒される気持ちは…。全てが浄化されてゆく…。』


「よっし、まぁ宴もたけなわということで、そろそろ帰ってシャワー浴びるか。」


「そうだねー!」


__________


「ふぅ…っと、ただいまー!」


『お邪魔します!』


「って、今日は誰もおらんかったわ。よしささ、みんなタオルで体拭いてから順番に風呂入ってもらおか。」


「よし、風呂のボタン押しにいくわ。」


ボクは忘れていた。これからが地獄だということを。

忘れていた。こっから風呂なんだから、隠し通せるのかと。

忘れていた。


これは本気でやるしかない。

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