11 凄戦2

 エリカはクラリスポートを攻めている艦船の間に入り、なんとか突撃艇と駆逐艦を倒したあと、残る重巡洋艦2隻に向かっていく。

 2隻の巡洋艦は、今度はなぜか固まらず距離を置いて進撃してくる。


「エリねぇ、何かおかしい。罠かもしれない」

 カイトが忠告するが

「大丈夫よ。あと二隻だし」

 楽観的に言うと、横に立つルナをみて

「もう少しだから、ルナ頑張って」


「わかってる、でもちょっと疲れたかな………」

 ルナは、真っ青な顔をして、速度も攻撃力も、あからさまに落ちているのがわかる。

 ほとんど休憩なしで、さらに傷ついているのだ。

 エリカは、「ごめんね」と何度もつぶやきながら、一方の巡洋艦に向かっていく。

 

 戦闘を続けるエリカを見ながらカイトは(ルナもかなり疲れている。敵は何か秘策があるかもしれない、大丈夫だろうか、この二隻を倒せるのか)

 不安だったが、やるしかない。


 二隻の巡洋艦のうち一方の艦船に向かい、砲台などを攻撃して、なんとか無力化し、その艦船から離れようとしたときだった。


 突然大きな衝撃とともに、スカーレットルナが停止した!


「急にとまった! どうしたの、ルナ」

「わからない、動かない! 」

網に絡まったように、締め上げられるような軋む音を出して、船が進まない。


 するとカイトが

「磁力アンカーだ。おれたちを、繋ぎとめたんだ」

 スカーレットルナはブースターを全開にして脱出しようともがいている


「こんなの、元気ならすぐに振りほどけるけど………」

 ルナは力なく言う。


「でもどうして繋ぎとめるの、下の巡洋艦の攻撃力はないはず。まさか自爆」

 それにはミルフィーユが顔をあげ


「それはできません。相手のコンピューターの自爆装置は私がロックしました、作動しないはずです。それと磁力アンカーの司令系統と照査箇所を探って、アンカーの解除を試みます」

 ミルフィーユは懸命に作業をはじめ、ルナも脱出しようと必死だ。


「ルナ! とにかくがんばって振り切って」

「わかってるぅーーー! 」

 両手を握って唸るように言う。


 エリカは真下の、自分を繋ぎとめている巡洋艦を見つめて

「相手は何を考えているの。弱ってはいるけど私たちが、磁力アンカーをふりきるのは時間の問題なのに。ひょっとして、白兵戦………やってやろうじゃない! でも、あのゴキ虫ロボが出てきたら………」

 聞いていたミルフィーユが作業をしながら


「ゴキ虫ロボって、なんですか」

 不思議そうに聞くと、エリカは震える声で


「聞いてよミルフィーユちゃん。このまえクラリスの中に六本足の無人白兵マシンが襲ってきたの。それが、まるでゴキ虫そのもの! もう背筋がぞわーーーとなったよ。あんな品のないもの作る奴って。きっとゴキ虫好きの変態よ」


 ミルフィーユは絶句して

(それって、私が設計したコンバットGのこと。そう言われると、ゴキ虫みたいかも………私が設計したなんて、絶対言えない………)。

 蒼白になって俯くと、エリカは

「ミルフィーユちゃんも聞いただけで血の気がひくでしょ。二度と見たくないよ」

 違う意味で、血の気かひいたミルフィーユだった。


 その時、敵の無線を傍受していたカイトが

「あいつら! 」

 険悪な表情で叫んだ


「どうしたの。大きな声で」

「おれたちを繋ぎ止めている艦船と、もう一隻の巡洋艦の無線だ。今流す」

 多少雑音の入った声だが、敵艦のやりとりがはっきり聞こえてきた


 ★★


『B2グラネード巡洋艦へ告ぐ。このまま白銀の戦闘艇をつなぎとめておく、これなら主砲でも狙える。そして、我艦もろとも白銀の戦闘艇を葬れ。敵も弱っているが、いつまでこの磁力アンカーがもつかわからない早くしろ! 』


『すまない、ここまで皇帝陛下の艦船を失って、撤退するわけにいかない』


『気にするな。いいか、手加減するな、全ての火力を集中させて跡形も残さぬつもりで我を撃て』


『承知した、貴君の犠牲は無駄にはせぬ』


『皇帝陛下ばんざい! 』


 ★★★

 エリカはこぶしをにぎって

「なんてこと! 自分を犠牲にして、私たちもろとも爆砕させるつもりだわ」


「右! 艦船から多数のミサイル、ビーム砲がくる。ミサイルは核ミサイルだ。大都市を廃墟にするくらいの破壊力だ」

「ほんとに、味方も殺すつもりなの! 」

 エリカは、信じられず呆然とした。


「とにかく防御シールドだ!」 

 カイトが叫ぶと、エリカはつづけて


「半径七00mで防御シールドを全開にして!」

 エリカの指示にカイトは驚いて


「半径七00mって、下の敵の船も守るつもりか! ルナは限界だぞ、わかってるだろ相当疲れてるんだ。防御シールドはレーザーを広い範囲に連続照射するのと同じだ、エネルギーを大量に消費する。自分たちを守るだけでぎりぎりだ」


 エリカはうつむいて、声を絞るように

「わかってる。ルナ頑張って、私たちだけ助かるわけにいかないでしょ。私たちのためにこの下の艦船の多くの命を犠牲になんて出来ない。それに帰ったらミルクチョコレートとエクレア食べ放題でおごってあげる」


「わかった、エリカのためだもの。精一杯頑張る!」

 さらにエリカは後ろを振り返ると。


「今度は本当にだめかもしれない。カイトとミルフィーユちゃんは脱出して」

 カイトは、やれやれと言った表情で

「ばか言うな、あと一分弱で着弾だ、逃げる暇はねーよ」

 ミルフィーユも


「そうです、それにわたしがいないと、帰り道の解析がたいへんですよ」

 ミルフィーユは、祈るように胸で手を組んで目を閉じた。


(一分あれば脱出できるはずなのに………)かといって言い争っている間に着弾する。

 これ以上言っても無駄と思いエリカは言葉がない。


 すぐに、スカーレットルナから広範囲の防御シールドが展開された。

 その直後、対する巡洋艦の全弾斉射の強烈な爆撃に晒される。


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