第47話:残念イケメン
しかしまだこれで野望が潰えたわけではありません。
明日の朝になればアレクの枕にはまたキノコが生えてきているはずです。
それがある限り何度でもやり直せる……!
「イケメンダケ量産の暁には……ふふふ……」
こうしてワタクシは野心を抱えながら眠りについたのです。
翌朝、ワタクシはアレクの大声で目が覚めました。
「――あぁぁあぁぁぁぁぁ! 待てこらぁぁぁぁ!」
大声は彼の部屋の方から聞こえます。ワタクシはパジャマ姿のまま慌ててアレクの部屋へ向かいました。
「アレク! 何事ですか……⁉」
部屋のドアを勢いよく開けると、なんとそこには走り回るキノコとそれを捕まえようと追いかけるアレクの姿がありました。
「な、なんですかこれ……」
「わかんねぇ! 俺がロボで遊んでたら急にキノコに手足が生えて逃げ出そうとしたんだよ!」
――えぇ⁉ 理解の
「ちくしょー、すげぇ早さで逃げやがった」
「あれって、もしかしてイケメンダケですか……?」
「あぁ、そうだ。でもまさか手足が生えて逃げるなんて聞いてねぇぞ……」
ワタクシ達はわけがわからず顔を見合わせました。
「あのキノコはイケメンの判定が厳しくてねぇ。収穫されるまでは自我があるから、残念なイケメンだとわかるとスッと冷めて他のイケメンを探す為に逃走してしまうのよ~」
「アレクが『残念イケメン』認定されたということですか……」
「え~、残念ってなんだよそれ!」
「もしかしてアレクちゃん、キノコの前で何かイケメンらしくないことでもしたんじゃないのぉ~?」
イケメンらしくないこと……?
ワタクシ達の視線に対し、アレクは手を大きく空中で動かす仕草をしました。
「らしくないって何がだよ。俺はただロボで遊んでただけだぞ……こんな感じで、ブーンって――」
「それです!」
「それよ!」
ワタクシとジンは声をそろえてツッコミました。
それからというもの、何日待ってもイケメンダケはアレクの枕にもワタクシの枕にも一切生えてきませんでした。
きっと今頃はどこかのイケメンの枕元で元気にしているのでしょう。
「まぁ、いい夢は見られましたし、お小遣い稼ぎになりましたから良しとしますかねぇ……」
ワタクシは、空っぽになってしまったガラス瓶を虚しく眺めるのでした。
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