運命の女神は抒情詩なんて謳わない

六条がびき

序章

ー 神話 ー

命宿らぬ無垢の世界【アルケー】。

ただの真白きその場所に、ある日星々が降り注ぐ。

星々は無垢の世界アルケーの底を穿ち、天蓋までもを貫いて、八本の母なる世界樹【イルミンスール】となった。

イルミンスールは、我が身から溢れる星の煌めきを見て囁く。

「あなたは始源の種、魔力〔デュナミス〕。愛しい息吹たち」


魔力デュナミスは、母の腕に抱かれて美しい精霊〔エネルゲイア〕へと成長した。

そして八柱の精霊エネルゲイアたちは、目覚めたことを喜び謳う。


「命宿す無垢の世界アルケーよ」

「ここは万物の始源であり終端。我らは祝福しよう」


————無〔カオス〕の精霊エネルゲイアは謳った。

「高き蒼穹。始まり来るは光」

————光〔アイテール〕の精霊エネルゲイアは謳った。

「若草萌ゆるもの。育むは地」

————地〔レイア〕の精霊エネルゲイアは謳った。

「清らかに湧き出るもの。恵むは水」

————水〔ネレウス〕の精霊エネルゲイアは謳った。

「種を運ぶもの。巡りは風」

————風〔アネモイ〕の精霊エネルゲイアは謳った。

「暖かく照らすもの。豊穣は火」

————火〔ヘリオス〕の精霊エネルゲイアは謳った。

「静かなる望月。終わり行くは闇」

————闇〔エレボス〕の精霊エネルゲイアは謳った。

「光と闇の流転。無に帰すまでが時」

————時〔ホーラ〕の精霊エネルゲイアは謳った。

「我らとともにあれ。命宿す場所」


魔力デュナミスが世界に満ちると、最初に妖精〔フェアリー〕が生まれた。

妖精フェアリーたちはあらゆる場所に羽ばたいた。

次に獣が生まれた。賢き獣は妖精フェアリーたちとともに、たくさんの命を育んだ。

次にアールヴ〔エルフ〕が生まれた。

彼らは精霊エネルゲイアの祝福に感謝し、イルミンスールを守ると誓った。

そして最後に人間〔ヒト〕が生まれた。

人間ヒトは他よりもか弱かったが、脈々と受け継ぐことを知っていた。


精霊エネルゲイアたちは謳う。

「息吹き溢れる美しき世界。ここは【エンテレケイア】」

「祝福しよう。エンテレケイアに生まれた愛し子たち」       

「忘れることなかれ。我らは常にともある」

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