マエストロ、再び

川和真之

第1話

 21××年、春。2か月振りに外出すると、駅前にある巨大なスクリーンに、政府から発信されたメッセージが映し出されている。

 必ずしもやらなくていいこと、それは仕事。

 このメッセージが就職活動の標語として定着したのは、いつからだろうか。僕はそのスクリーンを睨みつける。そして、鼻から深く息を吐いた。散々見飽きたメッセージのはずなのに、頭に血が上っていくのがわかる。満開の桜で彩られた音楽大学の門をくぐるころには、少しは落ち着いてきたけれど、それでも僕の心は高揚したままで、歩くスピードは自然と速くなる。

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