第5話 冒険者登録

 森に巣食うゴブリンたちの集落を片っ端から潰していった。


「今の集落で最後じゃ」


「ふぅ……なかなかに面倒な仕事だった。しかし、これで森に平穏が戻るんだな?」


「うむ。ゴブリンは繁殖力が強く、どんどん増えるからのう。放置すれば、いずれこの森だけではなく外にも進出しておったじゃろうな。そうなれば、人間にとっても脅威となる」


「なるほど」


「それに、人間の女を犯し、子を産ませることもあるらしいぞ」


「それは許しがたいな」


 やはり、ゴブリンは殲滅しておいて正解だ。


「……さて、今回のことでカエデの強さが証明できたであろう?」


「え、あ、うん」


 この猫耳装備を着たときから、自身の強さには何となく自信を持っていた。

 ゴブリン退治を経験することで、それは確信に変わった。


「ならばよい。街の冒険者ギルドに行って報告しておけば、金ももらえるじゃろう。我にはよくわからんが、人族が暮らしていくのに必要なものなのじゃろう?」


「ああ、そうだな」


 この世界で生きていくために、もちろん金は必要になるはずだ。


「では、行こうではないか」


「ユーリも行くのか?」


「うむ。ゴブリンを倒してもらったお礼に、案内ぐらいはしてやろうぞ。我も人族の街はあまり詳しくないが、異世界から来たというお主よりはマシじゃろう」


「わかった。よろしく頼む」


 こうして、俺たちはゴブリン集落を後にし、街へと向かったのだった。



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 街に着いた。

 大きな街だ。

 城壁に囲まれている。


「へえ、これは凄いな」


「うむ。我がこの街に実際に来るのは初めてじゃが、なかなかの街であるようじゃ」


 俺とユーリはそんなことを話しつつ、街の入口に近づいていく。


「おい、そこの妙な格好をしたお嬢ちゃん」


 街の門番らしき男が声をかけてきた。


「ん? 俺のことか?」


「そうそう。君のことだよ」


 妙な格好、か。

 確かに、俺は猫の着ぐるみを着ている。

 この世界の人から見れば、俺は着ぐるみを着た変人としか見えないよなぁ。


「君のその格好はなんだね?」


「俺の趣味だよ。なんか文句あるのか?」


「いや、文句はないが……」


「ならいいじゃないか。そんなことよりも、早く通してくれ。急ぐんでな」


 この格好について長々と問答する気はない。

 ユーリに対しては、この装備が高性能なことを伝達済みだ。

 しかし、あまり広く言いふらすことではないだろう。


 万が一この装備を奪取されたりしたら、俺はこの世界でチートなしで生きていく必要が出てくる。

 か弱い少女の肉体でだ。

 それは避けたい。


「あ、ああ、わかった」


 門番は納得していない様子だったが、とりあえず通してくれた。


「さて、まずは冒険者ギルドに行くんじゃったな?」


「ああ。報告しないと報酬も受け取れないしな」


「よし。こっちのようじゃ」


 俺はユーリについていく。

 しばらく歩くと、立派な建物が見えてきた。

 あれがギルドだろうか?


 俺は建物の扉を開き、中に足を踏み入れる。

 酒場が併設されているようで、昼間だというのに結構賑わっていた。

 受付があり、そこに並んでいる列がある。


「む、どうしたカエデ?」


「いや、こういうところに来ると、俺も緊張するなと思って」


「ふむ。まあ、初めてのときは誰でもそうなるものじゃ」


 ユーリは余裕たっぷりに見えるが、内心はどうだろう。

 彼女もこの街は始めてだそうだが。


「ほれ、並ぼうではないか」


「あ、ああ」


 ユーリと並んで順番を待つ。

 そして、ついに俺たちの番になった。


「はい、次の方どうぞー」


「おう」


 俺とユーリは、受付嬢の前に出る。


「えっと、今日はどのようなご用件でしょうか?」


「冒険者登録じゃ。我はユーリ、こっちはカエデじゃ」


「はい、かしこまりました。ユーリ様とカエデ様ですね。それでは、こちらの水晶に手を当ててください」


 受付の女性に促され、ユーリが手を当てる。

 水晶が青く光る。


「これは?」


 俺はそう問う。


「犯罪歴がないかを調べるためのものです。犯罪者の場合は赤く光りますが、それ以外は青く光ります」


「ほう」


 ユーリの場合は青く光ったので、犯罪者ではないようだ。


「次はカエデさん、どうぞ」


「おう」


 ユーリに続き、俺も水晶に手を当てる。

 水晶が青く光る。


「はい、問題ありませんね。お二方はパーティですか?」


「ああ。そうだ」


「では、こちらに名前と年齢、職業を書いてください」


 指示された通りに書く。


「はい、ありがとうございます。確認しました」


 受付嬢が処理を進めていく。


「それでは、ギルドカードをお受け取り下さい」


 カードが渡される。

 そこには名前とランクが書かれている。


「えっと、このランクとは何だ?」


「それは、依頼をどれだけこなしたかで決まります。最下級のE級からスタートになります」


 最下級からスタートか。

 ここから成り上がっていかないとな。


「ちなみに、C級以上になるには、昇格試験を受ける必要があります。その試験に合格して初めてC級になれます」


「へぇ~」


「では、お二人のギルドカードに血を一滴垂らしてください」


 針のようなもので指を刺し、血をギルドカードの表面に一滴たらす。

 すると、ギルドカードに紋章が浮かび上がった。


「これで登録完了です。このカードの再発行にはお金がかかるので、無くさないように注意して下さい」


「わかった」


「他に何かご質問はありますか?」


「いや、特にないな」


「そうですか。それでは、良い冒険ライフを」


 受付嬢に見送られ、受付を離れる。

 ユーリとともに、依頼が貼ってある掲示板に向かう。

 さっそく手頃な依頼をこなしておくか。

 猫耳装備を持つ俺なら、軽くこなせるだろう。

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