第2話 姉

 有は縄跳びを解こうともがいていた。なんとか全て解き終わり自由の身になった時には、すでに夕暮れ時で、その寂しさに有の頬に一筋の涙が伝った。


 有にとって、久しぶりの涙であった。以前泣いたのはいつの日だっただろうかと、彼は考える。

そして、彼は思い出した。姉の葬式の日だ。



 有には年上の姉がいた。彼女の名前は、有識 明理(ゆうしき あかり)。年が離れていたこともあり、有と明理は仲良しだった。明理が中学生になるまでは。


 明理は中学生になると、途端にグレ始め、ヤンキーになってしまった。それにともなって、有と明理のコミュニケーションも減っていったが、それでも有は明理の事が大好きだった。


 そんな姉との別れは、突然訪れた。その頃には、レディースの総長となっていた明理は、バイクを運転中にトラックと衝突。そのまま帰らぬ人となってしまった。


 姉の葬式の日、有は大粒の涙を流した。こんな事になるのならもっと姉と話しておけばよかった。ヤンキーになってから、姉は見た目こそ変化したものの、家族に対して反抗的になるわけでもなかった。


 自分に対しては、姉は少し距離を取っているようには見えたが、それなら自分から姉に寄り添うべきだった。こんな事になるのなら、もっと....。


 有は、大きな後悔に苛まれた。その日以来、有は姉の事を考えない日は無い。もし姉にもう一度再会できたら、どんなに良いだろうか。



 姉との思い出を思い返しながら、彼は、とぼとぼと家に帰る。もはや精神的な支えは、『願いを叶えるための悪魔の呼び出し方大全』しかなかった。


 悪魔を召喚したら、絶対に冬葉ちゃんをぶっ◯してやる...。そんな事を考えながら、暗い道を歩く。


 家に着くなり、彼はさっそく準備に取り掛かった。

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