第16話 冒険者登録。固有スキル獲得


 俺は冒険者ギルド受付に着いた。

 受付には、赤毛のポニーテール笑顔が似合う女性。

 メロンオッパイの名札にはクレアと書かれていた。


(おぉ胸もなかなか)


 クレアさんは、先程キレた人とは思えない程の営業スマイルで。


「いらっしゃいませ。ご用件は何でしょうか?」


 俺は、わからないので適当に。


「冒険者になりたいんですが」


 クレアは「冒険者登録ですね」と言い。

 四角い石板を取り出した。


「こちらで、個人情報と固有スキルを調べますので、手を置いてください」



 個人情報!! そりゃそうだよ! いるに決まってるだろ! 免許取るようなもんだろこれって! 何やってんだよ俺は。


 えぇと先ずは冷静になって。顔は別人だから大丈夫だよな。体はご先祖様なんだよな? やばいんじゃないかこれ……


 俺の心臓は、先程まで冒険者になれると思い、楽しげにリズムを刻んでいたが。


 今は戦闘機に爆撃されたように、心臓の爆発音が耳まで聞こえてくるようだった。


 クレアさんが、笑顔で待っている。

 今更辞めるとも言えず、俺は覚悟を決めた。


 俺が決心を決めると、更に酔った酔っ払いが騒ぐ声が聞こえてきた。


「貴族様! いいの出るといいですなぁ」

「何が出るかねぇ」

「スキルは血筋がでかいからなぁ。ヒック! 聖騎士かな?」


 俺は無視して、汗でずぶ濡れの手を石板に置いた。


 ピッピッピッピッ! ブゥン


 空中に個人情報が表示され、クレアさんが名前を読み上げた。


「ユーリ・ディザアくんね。他の情報に間違いはないですか」


(間違いと言われてもなぁ。俺は自分のフルネームすら、今知ったんだが)


 俺は表示された個人情報を見たが、簡単なものしか書かれていなかった。


 出身地

アルムネ村


名前

ユーリ・ディザア


年齢13歳


「13歳!!! あ」


 クレアさんは、慌てた様子で。


「ええと、何か間違いがありましたか?」


「いえ、問題ないです。すみません」


「そうですか?」



 酔っ払いの声が聞こえてきた。


「なんだぁ。自分の年齢に驚いたのかぁ?」

「貴族のぼっちゃんだからなぁ、知らなかったんだろうぜ」

「あぁ、ちげぇねぇ」



 そうだよ。知らなかったんだよ! 悪かったな! にしてもだ。13歳って、ご先祖様の年齢だよな? 見た目からして、若いとは思っていたが……


 13歳で仲間に殺されるとか、どんな辛い人生だよ。あとは、この出身地も、ご先祖様のでいいのか?



 酔っ払いから、俺の出身地が見えたのか話し出した。


「アルムネむらぁ? あんなど田舎に貴族様なんているのかぁ?」


「けどメイドの嬢ちゃんがいるからなぁ」



 酒場のカウンター席で、ノンアルを飲んでいたイフリータは、立ち上がり、スカートを持ち上げ話し出した。


「この服は、ご主人様の趣味なんです」と言って笑っていた。


「しゅみぃ? メイドじゃないってことかぁ?」


「だなぁ。アルムネ村に貴族が居たなんて聞いた事ないからなぁ」


「じゃあ俺達と同じ平民ってことかよ。緊張して損したぜ」


 酔っ払い一同は「しゅみかぁ」と俺を見て、いいじゃんと笑っていた。



 余計なこと言ってんじゃねぇよ! イフリータ! これじゃ変態じゃねぇか!


 まぁ本当に貴族じゃなかったら、貴族を偽った大罪になるかもしれないし、誤解が解けたならいいのかもな。でかしたぞ! イフリータ!



 考え込んでいると、音が鳴り、固有スキル名が表示されていた。


『「固有スキル願望?」』


 やはり外野が、うるさかった。


「願望? 聞いたことないな」


「平民さまぁ! 説明書いてるでしょぉ! なんて書いてますぅ?」



 平民様ってなんだよ! だが聞かれたら答えるしかない。無視して酔っ払いが暴れると面倒だからな。


 スキル説明


『「あなたの願い叶います?」』


「それだけか?」


「あぁ」


「あなたの願い叶いますって! 神頼みでもするのかよ!」


「ちげぇねぇ! 敵を前にお願いします。死んでくださいって、な!」


【ゲハハハハ】


 酔っ払い供の缶を潰すような、へしゃげた笑い声が、店全体に響き渡った。


 俺は、こいつら殴りてぇと思ったが。


 ご先祖様のヒョロ細い体では、体格的に勝ち目はなかった。



 俺が諦め「次は?」と、クレアさんを見ようと振り向くと、建物が壊れるような激しい音がした。


 バギャァン!!! メシメシバギ!!! ドゴォン!!!


 クレアさんの拳で、受付台は真っ二つに破れ、先程までの営業スマイルが鬼の形相に変わっていた。


「てめぇら! うちの客に、ちょっかい出すんじゃねぇって! いってんだろうがぁ! この台と同じにしてやろうか! あぁ!!!」


 酔っ払い達は、謝り、肩を落とし、静かにチビチビと酒を飲み出した。


 そして矛先ほこさきは、酒場のマスターに向いた。


「つかさぁ、マスターも、ちゃんと注意してくれないと困るぜ」


 マスターはコップを拭きながら頷いた、無口な人のようだ。


 しかし、この状況ではクレアさんを怒らせるだけだった。


「なんだぁ! そのへんじはよぉ! 無駄な、ちょび髭ムシるぞ! ゴラァ!」


 ガシャン!!!


 マスターはヒゲが大事らしく、ヒゲをムシるの言葉に動揺し、拭いていたコップを落とした。


「み……みなさん。他のお客様に、ご迷惑をかけないで、お酒を味わってくださいね」


 マスターは、焦りながらもキャラを崩さないよう冷静に話していた。

 客達は、静かに頷いた。



「ちっ! それで、いいんだよ。最初からやりやがれ!」


 クレアさんは、舌打ち混じりに話すと、俺にお辞儀をし「少々お待ち下さい」と言い、呪文を唱え木魔法を発動した。


『木々の記憶』


 木をメイン素材にした生産品を、壊れる直前の状態にほぼ修復する。


 崩れ落ちた受付台の破片から無数の芽が出ると。芽は、グルグルと巻き付き1つになり壊れた受付台を修復した。


「おぉ、戻った!」


 クレアさんの表現も営業スマイルに一瞬で戻った。

 やはり、どんな仕事にもプロはいるものだ。


 俺は、クレアさんにお礼を言って気がついた。

 受付台の中心には小さな小枝が残っていた。


 クレアさんは「あぁもう! またぁ」と言うと、小枝をへし折り、植木鉢にぶっ刺した。


 よく見ると小枝が、ぶっ刺さった植木鉢が無数に並んでいた。

 道理で、なれてらっしゃるわけだ。


 次に、普通にヤスリを取り出し、磨き上げ拭き取りワックスらしき物を塗り、何食わぬ顔で笑顔になり話した。


「次は、隣にある。スライムフェアリーに触れて下さい」

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