追放されたらSランクパーティーから勧誘された

紅 蓮也

第1話 追放と勧誘

 アルトは、幼馴染と冒険者パーティーを組み活動していた。


 メンバー構成は前衛職の剣士でリーダーのジョン、盾士のダン、後衛職の攻撃魔法メインの魔法師のカレン、回復士兼治癒師のユリ、支援魔法師兼荷物持ちのアルトの男三女二の五人パーティだ。


「アルト、お前を英雄の頂きから追放する」


 依頼を終えギルドに戻ると幼馴染の四人を代表してリーダーのジョンからお前は荷物持ちとしてしか使えないのにパーティーのお荷物だから追放すると告げると四人は俺を残し手続きしに受付に向かった。


 ユリは俺に何か言いたそうに行くのを躊躇うようにしていたがダンとカレンに強引に連れていかれた。


 アルトとしても冒険者になったばかりの頃は仲良くやっていたが、次々に活躍してトントン拍子Aランクにランクアップして、Bランクになった頃にメンバーからお荷物扱いされよく思われていないと感じていたので、何を言っても無駄だと思い好きにさせた。



 ジョンはカレンがダンはユリが好きでアルトは特にカレンから好かれていないのはわかっているが女性陣二人がジョンとダンのことをどう思っているのかは知らない。


 登録時に剣が得意だったジョンは剣士、身長も高く筋肉ムキムキのダンは盾士、登録前から回復魔法や治癒魔法が少し使えていたユリは回復士兼治癒師、登録時の検査で俺とカレンは魔力量が多かったので魔法師に決めた。


 その後、ジョンとダンに女性陣二人から少し離れてから相談され攻撃魔法はカレンに任せ支援魔法をメインにしてくれと言われ、活動していくうちに俺とカレンは収納魔法を覚え、収納容量は魔力量に左右されるし、カレンは攻撃魔法がメインなのでカレンより魔力量が多く支援魔法メインの俺が収納魔法を使い荷物持ちをすることになったという経緯がある。



 きっとジョンとダンはパーティ結成時からカレンとユリがからまなければアルトと幼馴染としては仲良く接するというスタンスで魔力量が多い魔法士を攻撃魔法メインにするのが普通だが俺に活躍して欲しくなかったんだろうな。


 そんなことを考えていると受付嬢が嬉しそうに手続きをしているメンバーから少し離れた所にいる俺の方を見てきた。


 パーティー脱退には脱退させるメンバーの了承が必要だが脱退手続きの対応している受付嬢は勿論、ギルド内にいる冒険者たちも大きな声でアマトを追放するやり取りを見ていたので、俺がまだ承諾してないのをわかっている。


 受付嬢に向かって俺は頷いた。

 受付嬢はそれを承諾したと受け取り脱退手続きを進め始めた。

 すると後ろから声をかけられた。

 俺が振り向くとSランククラン奇蹟の薔薇のリーダーであるソフィアさんだった。


「一方的にリーダーが話しているだけだったけど、聞こえてたから話をしに来たけど、アルトくんはパーティを抜けるということでいいのかな?」


「はい。あいつらは返答も聞かずに手続きに向かってしまったので返事できませんでしたが、何言っても考えは変わらないでしょうし、あいつらからよく思われてないと前々から感じていたのでお互いのためにもそれがいいと思いますから」


「そうか。じゃあうちのクランに入らないか。」


「えっ!!」


 聞き耳をたてていた冒険者たちは驚きの表情をしているが声は出さなかったけど、ソフィアさんからの提案を聞いた俺は驚きの声を出してしまった。


「何で俺なんかを勧誘するんですか?話聞いていたなら俺が役に立たないからパーティ抜けることになったと知っているでしょう?」


 幼馴染たちは俺を罵倒したり、使えないと愚痴を言うのが日常茶飯事なのでギルド内での俺の評価は低いので、周りにいる冒険者たちはうんうんと頷いている。


「英雄の頂きのメンバーや周りがどう思っていようが関係ないんだよね。

 私がアルトくんはうちのクランに必要だと思っているから勧誘しているんだしね。」


 ソフィアさんと話していると手続きが済んだジョンたちがソフィアさんと俺が話しているのに気づき、ジョンが話に入ってきた。


「ソフィアさんじゃないですか。アルトなんかと何の話しているんですか。」


「なに。ギルドに来たらアルトくんが英雄の頂きを抜けると聞こえてきたのでね。

 アルトくんをうちのクランに勧誘しているところだよ。」


「「「「えぇ!!」」」」


 話を聞いた四人は驚いて声を出した。


「アルトなんて魔力は多いけど支援魔法も初級魔法しか使えないし、収納魔法習得しているから荷物持ちとしてパーティにいさせてあげていただけで役立たずですよ。

 俺たち英雄の頂きは今はBランクパーティですがパーティ名からもわかる通りクランを作り、いずれSランク冒険者としてもSランククランとしてもトップになるつもりなんですがアルトがいたらパーティとしてこれ以上のランクアップ望めないし、クラン作ってもSランククランは絶対に無理だからアマトに納得してもらって脱退してもらったんですよ。」



 俺の返事も聞かずに手続きに行ったのに納得してもらってとか、脱退してもらったって追放するって言ったよな。

 Sランク冒険者個人としては得意分野や功績の内容に違いはあるが強さという意味での序列を付けることはできる。


 だがSランククランは現在世界に四つあるけど所属人数や得意分野なども違ったりするからSランククランに序列はないのにトップになるって何だった?


 戦闘面や功績数や功績内容に関してということか?それともクランを作り世界で五つ目のSランククランとなり一番人気のクランになるってことか?


 どうでもいいけどさ……


「そうか。納得してもらって、脱退してもらったって言ったが、話しているのが聞こえていたのだがアルトくんを追放すると言っていたはずたが聞き間違いだったか?」


 聞き間違いではないです。その通りですよ、ソフィアさん


「Sランク冒険者のトップならS冒険者に至った功績の違いはあるが強さ限れば序列を付けることはできるがランクに限らずクランは所属人数、得意分野や功績数や功績内容などに違いがあるので序列はないわよ。」


 そうなんだよ。いくら言ってもわかってくれないので、困ってました。


「Sランククランのトップも戦闘面や功績の多さや内容って意味からしら?それとも誰もが加入したがるような一番人気のクランにってこと?まあ、あまり興味ないしトップにどうこうに関してはどうでもいいわ。まあ、頑張ってとは言っとくわ。」


 Sランククランのトップに関してはソフィアさんも俺と同じ考えみたいだ。


 ジョンが指摘されて困って何も言えないでいるのでダンが代わりに答えた。


「アルトにはパーティ内での貢献度やメンバーとの雰囲気などを察してもらって自分からパーティを抜けたいと言ってもらいたかった。

 けど、俺らに寄生するようにいつまで経っても言ってこずパーティに居続けるのでしびれを切らした俺たちが相談してこちらから言って抜けてもらうことにしたんです。そうだよなジョン。」


「ああ……そうだ。こちらから抜けてもらうことにしたから追放と言ったんです。」


 ジョンとダンは俺のことを寄生やろうと思っていたのか。

 ユリはわからないがカレンは頷いているから同じように思っているんだな。


「それでソフィアさんがアルトをクランに勧誘したいみたいてすが提案なのですがアマトの代わりに俺らを奇蹟の薔薇に入れてくれませんか?」


「奇蹟の薔薇に加入したいと……でもそうすると英雄の頂きではなくなわよ。それでもいいの?

 まあクランに加入し、大きな依頼は別として、奇蹟の薔薇内にある英雄の頂きという一つのパーティとして活動するならパーティ名は残せなくもないけどね。」


 クランにも色々あり、複数のパーティが集まってクランを作り、大きな依頼はパーティ関係なく皆で受けて、普段はパーティごとに依頼を受けているところもあるみたいだしね。


「「「それでお願いします。」」」

「……」


 まだ加入できると決まっていないのにジョン、ダン、カレンはもう既に加入確定したように嬉しそうに答えた。


 ユリは何も答えず、俺の方をずっと見ている。

 そしてユリが俺を見ているのに気づいたダンとカレンが俺を睨んできた。


「まあ、聞いてみただけで勧誘したいのはアマトく ん……だから君たちを入れる気はないから君たちは君たちでクランを作って頑張ってよ。応援だけはするから」


 何だ。俺の名前を言った後何か言いたそうにユリをチラッと見て言うのを躊躇ってから話を続けたぞ。

 ソフィアさんはユリも勧誘したいのかな?


「そうですか。わかりました頑張ります。」


 答えたのはジョンだけど俺を睨みつつダンもカレンもガッカリしているな。

 決めたのソフィアさんなんだから俺が責められるいわれはないと思うのだが……


「でぇ、アルトくんは奇蹟の薔薇に入ってくれるかな?」


「パーティ脱退やいきなりの勧誘で混乱しているので、考えさせてもらっていいですか?」


「ああ、構わないよ。断られちゃったら他当たるから無理して入らなくてもいいからね。」


 ソフィアさんが俺に言ったことを聞いて、三人が笑顔になったあと俺を睨んできた。


 ああ、断れっていいたいのね。そうしたら自分たちが勧誘されるかもしれないから……


 でもそれはないと思うな……さっき君たちを入れる気はないって言っていたしね。


 まあ三人のことは気にせず俺は答えた。


「はい。はやめに結論だします。」


「結論が出たら、ギルドの受付嬢に伝えてくれたらいいからさ。」


 そう言ってソフィアさんは俺たちから離れ受付に向かっていた。

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