第25話 「オール・オア・ナッシング」
ショックを受けたクルチアは覚束ない足取りで自室へ向かい、よろよろとベッドに腰かけた。
(もうダメ。 ミカリくんを
ホストクラブは
(ミカリくんと知り合ってたったの4日。 キッ、キスすらしてないのに... やっぱり私はイケメンと結ばれない運命なの?)
目を閉じれば、ついさっきまで一緒にいたミカリの
(ミカリくん、ミカリくん...)
明日にでも他の女にミカリを奪われる可能性を思えば、こうして自室に閉じこもったりせず、彼との残された時間を一緒に過ごすべきだろう。
しかしクルチアの考え方は正反対。 彼女は
(ミカリくんは明日にもいなくなる... それなら、いっそ今すぐどこかへ行って欲しい。 顔を見ても辛いだけだもの。 ずっと一緒にいられないなら... もう二度と会いたくない!)
だが、これまでクルチアの人生でそうだったように、今回も世界は彼女の意に沿おうとしない。
「クルチア、入っていいかい?」
ドアの向こうでミカリの声。 自室にこもったクルチアの様子を見に来たのだ。
◇❖◇❖◇
「イヤ! 入らないで」
クルチアの拒絶は無視され、ドアが開いてミカリが部屋に入ってきた。 幸か不幸か彼女はドアに鍵をかけていなかった。
「入っちゃった」
和解を求めるようなミカリの笑顔と口調に、クルチアは泣き笑いの顔になる。
「入らないでって言ったじゃん!」
ミカリはクルチアの抗議を無視してクルチアの座るベッドに歩み寄り、クルチアの目が濡れているのに気付いた。
「クルチア、泣いてるの!?」
驚いたミカリはクルチアの隣に腰を下ろし、そっと彼女の肩を抱く。
「何を泣いているの?」
尋ねられたのをきっかけに、クルチアのミカリを求める気持ちがオール・オア・ナッシングの壁を打ち破り、
「ミカリくんっ!」
クルチアはミカリの胸にしがみついた。 やっぱり失いたくない!
◇❖◇❖◇
ミカリの胸に顔を押し付けながら、クルチアは頭の片隅で考える。
(ミカリくんの服、鼻水で汚しちゃった)
だがミカリは気にする様子もない。 クルチアを抱きしめて穏やかに尋ねる。
「クルチアが泣いてるのは、オレがホストになったのと関係あるんだよね?」
クルチアは涙声でお返事。
「うん」
「で、泣いてる理由をオレには言えない?」
「うん」そうなの。
「わかった。 ホストになるのを止めるよ」
「えっ?」
ミカリがあっさり言ったので、クルチアは拍子抜けした。
「いいの?」本当に?
「だって、クルチアが泣いてるから」
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