第36話 異世界流、落とし前のつけかた
おはようございまーす…
今わたしは、とある民家の一室のクローゼットの中におりまーす…
ここから、部屋の様子を伺って参りまーす…
と、スター寝起きドッキリ風のレポートを心の中でしてみたり。
そもそも何でクローゼットの中にいるのかというと。
________________
5分前
いのりの↑強(頭突き)を食らった俺はそのまま部屋の床に倒れ込んだ。
そしてすぐに立ち上がると、先にオネンネしているNeighborの一人を俺が倒れ込んだ位置に移動させ、仰向けにし目出し帽をかぶせた。
俺が着ている誘拐犯コーデは急いで脱いでベッドの下に放っておく。
ついでに3人から奪っておいた武器などもベッドの下に放っておいた。
万が一作戦中に意識を取り戻して反撃されたら面倒なので没収したのだが、杞憂に終わって良かった。
1階が騒がしい。
既に施錠を破って職員が屋内に入っていると思われる。
流石に手際が良い…
俺は窓からそっと外を見ると、何人かの職員と鬼島や大月が居た。
ここから大ジャンプして逃げる予定だったが、今は厳しいかもしれない。
そうこうしている内に、2階に上がって来た職員が廊下のメンバーを見つけたらしく、騒いでいる声が聞こえる。
時間が思ったより無いな。
「いのり」
「は、はい!」
頭突き以降一言も発さず俺を見ていたいのりの両肩に手を置くと、お願いをする。
「いいか、間もなく警察がこの部屋に入って来るが、全部コイツの仕業だ」
床に倒れているNeighborを指さす。
「オーケイ?」
「お、おーけい!」
「よし、そして俺は今からそこのクローゼットに身を隠すが、今回塚田という人間は一切関与していないし、存在していない。誘拐犯はいのりの華麗な頭突きで解決!ここまでが事の顛末ということで」
「っ!で、でもそれじゃあ卓也くんが助けてくれたことは…」
『この部屋だ!』
いのりの肩から手を外すと、俺はクローゼットに向かう。
「っヤベ…じゃあ、俺は隠れるから。こっち向くなよ」
「あ…」
「…親父さんと、幸せにな」
「っ!?」
俺はいのりに軽く右手を上げて挨拶すると、クローゼットの中に入り扉を閉め内側から片方の扉のロックをかける。
それだけだともう片方の扉は簡単に開いてしまうので、ロックのかかる方の扉にかからない方の扉を適当な紐で括り付け、紐の硬度を能力で強化する。
ついでにクローゼット全体の強度も上げ、簡単には開けられないようにしたのだった。
________________
ということがあり、今俺はクローゼットの中で気配を消し、潜伏しているのでした。
幸い扉の上部には無数の穴が開いており、外の様子が少し伺えるようになっている。
俺がクローゼットに入って1分もしないうちに、職員が扉を開けて入って来た。
そして無線でいのりを保護したと伝えている。
もう一人入って来た職員が床で仰向けに倒れている男を拘束し、起こしていた。
職員に起こされたNeighborの男は状況が呑み込めず、慌てふためいている。
(続きは署で、だって。ざまあないぜ)
いのりを怖がらせたのは事実だし、ちゃんと罪を償ってくれ。
あと、先日襲ってきた礼だ。
Neighborの男が部屋から連れられて数分後、今度は部屋に司が入って来た。
そして父娘二人はどちらかともなくゆっくりと抱きしめあった。
久しぶりの父娘の触れ合いと、誘拐という緊張状態からの緩和で二人の目には涙が見られた。よかったな、いのり。
そして少しして、職員が二人を部屋の外に出るよう促していた。
入れ替わりで別の職員が部屋に入り、今度は中を探索し始める。
程なくしてベッドの下の服や武器を見つけていた。
そして段々と俺の潜伏しているクローゼットに近づいてきた。
(あーヤバイ…)
簡単には開けられないようにしているが、捜査ということであれば簡単には引き下がらない可能性が高い。
職員の両手がクローゼットの扉の取っ手にかかろうとする。
その瞬間。
「柴くん」
一人の男の声が聞こえた。
「あ、鬼島さん!」
「1階の捜査を手伝ってあげてくれ。ここは私と清野くんが調べておこう」
「分かりました、では失礼します」
(危なかった…)
柴と呼ばれた職員は、鬼島の指示に素直に従い部屋から出ていった。
代わりに部屋には鬼島が入って来た。
そして何をするでもなく歩き回ると、ふいに話し始めたのだった。
「5年前くらいだろうか…南峯いのりさんが能力者に目覚めた時に、丁度私が説明をしにご自宅に行ったんだ。父親の司さんもいたよ」
独り言のように話しているが、明らかに俺に対して語り掛けているのが分かる。
「その時に、ちょっと揉めてしまってね。私の目の前であの父娘は決別してしまったのだよ」
以前真白から聞いているので、その辺りは勿論把握している。
「私が説明を担当した件数は10や20ではないから、こういったケースは少なくない。でも大抵はその後に話し合って、警察に預けるにせよこれまでの生活を続けるにせよ、親子双方が納得して答えを出す。しかしこれほど長期間に渡り折り合いがつかないのは私の中でも初めてでね…。それがずっと気がかりだったよ。私が1組の父娘の人生を壊してしまったのか…とね。ただの説明係がこんなことを気にするなんておかしいと思うかね?」
鬼島は自嘲気味に語った。
自身もこの5年間、ずっと南峯父娘のことを気にしていたと。
清野が言うように、怖い見た目に反して非常に優しい人だった。
「今回の誘拐事件、犯人は非常に許せない行いをした。…が、しかし」
鬼島は咳ばらいをし、俺の居るクローゼットに向いた。
「結果的には1組の父娘と、一人のしがない警察官が少し救われた。そこだけは感謝しても良いかもしれんな」
他の部分は許せんがな、と付け加える鬼島。
「しかしまあ、根回しが大変だったなぁ…。急遽人払いの職員を用意して、司さんを呼び出して、大事にならないよう慎重に。いやー…気を揉んだなぁ」
「すんません」
「っ!」
思わず扉越しに声を出して謝ってしまった。
一応潜伏している"てい"なのだが、かなり迷惑をかけたのは事実だったから…
今回の作戦、鬼島の協力無くして成功はなかっただろう。
そういう意味では、一番の功労者と言える。
「…ぷっ」
「…?」
「はっはっはっはっは…」
あれ?
なんかウケてる。
「オホン…まあ、なんだ。今はとても気分が良い。これほど晴れやかなのは久しぶりかもしれないね。だから、苦労した甲斐があったというものだ。」
よく分からないが、特に怒っていないのであればよかった。
この人は清野が敬愛する上司だ、怒らせてしまったとあれば申し訳が立たない。
俺は内心ホッとしていた。
「鬼島さん、いっすか?」
「構わないよ」
部屋の扉がノックされ、中に二人の人物が入ってきた。
「私の用は済んだから、後は頼んだよ清野くん」
「了解」
「彼のフォロー、よろしくね」
「…っす」
「君も、よかったね、主人が和解して」
「はい、この度は大変お世話になりました…」
「礼を言うのは私にじゃあないよ。それじゃ」
鬼島はクールに去っていった。
そして代わりに入ってきた清野は部屋の扉を閉め施錠をすると、何も言わずストレートに俺の居るクローゼットに迫ってきた。
俺はロックを解除し、鍵代わりの紐を解く。
すると清野は両手をそれぞれの扉の取っ手にかけ、勢いよくクローゼットを開けた。
「…」
「…おいっすー☆」
清野の強烈なボディが俺にさく裂した。。
___________________
「いやーダンケダンケ!」
「ダンケじゃねーよタコ。どんだけ苦労したと思ってんだ」
「悪かったって」
清野はプリプリと怒っている。
俺から突然メールで誘拐が起きたことと、それを利用した作戦の大まかな概要を送り付けられ、準備の大部分をやらされたのだ。
ご立腹なのも無理はない。
そしてもう一人の入室者もまた、怒っていた。
「何なんですかあの作戦は。心臓が止まるかと思いました」
「だから悪かったって…」
いのりの世話係で、俺とも面識のある真白愛はこれまでの印象とは打って変わって感情を表に出していた。
この前会ったときは、クールな感じだったのに。
「ていうか、何でここに残ってんの?いのりと親父さんは?」
「お二人は警察に事情聴取に行かれました。私はご当主様をここまでお連れした車を運転して帰らなければなりませんので、警察の車には乗りませんでした」
「あー…ね」
「それより、話を逸らさないでください。あんな無茶をやるなら事前に説明をですね…」
「いや、二人の関係を修復するには荒療治が必要かなって思ってね?」
一応つか…親父さんの事は事前に調べて、真白の話と合わせ俺なりに原因を予測した。
それは誘拐犯役を演じた際のセリフに反映されている。
そして俺の読みは概ね当たっていたので、何とか親父さんの本心を引き出すことが出来た。
「それに、言ってたら反対したろ?」
「当たり前です」
ホラね。
誘拐が起きたのは本当に予想外で、作戦を思いついたのもたまたまだった。
そこで真白とやる・やらないの議論を交わす余裕もなかったので、独断で決行することにした。
結果としては上手く行ったが、確かに無茶な作戦だったし心配をかけたのも事実だ。
だからマジに悪いと思っている。
「ごめんて…」
「…はぁ。もういいです」
「ほんと?」
「ええ。それにあれだけ深かったいのり様とご当主様の溝を埋めてくれた点はとても感謝していますし」
「あー…よかった」
「もう…」
真白は呆れたように笑っていた。
一先ず、この件で悲しい思いをした人間が今のところ居ないと分かり安心した。
あとは、ここからバレずに帰るだけだが…
窓の外の景色を見る。
「じゃあ、これからお前を外に逃がすから。準備しろよ」
「逃がす?どうやって?」
清野が俺に提案をしてきた。
もちろん在り難いが、一体どうやって。
「こうやんのよ」
清野は右手を前にかざすと、能力を発動させた。
するとどこからともなく水が集まり、俺の体をぴったりと覆い始めた。
そしてすぐに目・鼻・耳・口・腕時計以外を水の衣が覆い尽くした。
「おお…!」
「すごい…」
「これでお前は完全にじゃねーが、姿が背景に溶け込んで見えにくくなった。サッと移動すりゃここから抜け出せるぜ」
詳しくは分からないが、光の屈折角だかなんかを弄って、鏡のように全反射する水の衣を俺に着けてくれたってことか…
水の能力も鍛えればこんなことまで出来るようになるのか。
かなり感心した。
「助かるわ」
「今日だけで、貸し"3"な」
確かにこれだけの事をしてもらったら、3くらいは仕方ない。
むしろ安すぎるかもしれない。
だが、この男にあまり大量の貸しを作っておくのは危険だ。
少しずつでもいいから返済していかないとな。
「なぁ清野」
「あん?」
「貸し"1"だけ、今夜豚貴族で返してもいいか?」
「……これから現場検証やらの後始末と報告書を作成して、交番でやるハズだった残務を部下に押し付けるのに2時間はかかるな」
「じゃあ19時に神多駅でいいか?」
「ああ。ちなみに、"日本酒飲み比べセット"いくからな」
飲み放題はダメってことね…
「それでいい」
「分かった、じゃああとで。その衣はお前が出てって2分後に解除するからな」
「オーライ」
話がまとまったところで、俺は早速窓に足をかけて部屋から立ち去ろうとする。
すると。
「あのっ、塚田さん」
「ん?どした」
「後日改めて、お礼に参りますからっ。いのり様と私で」
「いやいいよ、それは。てかもう連絡してこないでいいから」
「え…」
真白は驚きの表情を見せる。
「だっていのりは家族の問題が解決したから、これからは一般人として生活していくわけじゃん。だったら能力者の知り合いとは縁を切った方が良いと思うよ」
「…何故ですか?」
「巻き込まれちゃうかもしれないじゃん、こっちの事件とかに。一般人として暮らしたいなら俺に連絡なんてしない方がいいよ」
多分ヤーさんとカタギの人間の関係に近いと思っている。
ゴタゴタに巻き込まれたくない人間は、わざわざヤーさんと積極的にコンタクトを取ろうとはしないだろう。
俺みたいなまだどっちつかずの人間がいのりの生き方・今後の方針にアドバイスできた義理ではないが。
しかし、真白はまだ引き下がらなかった。
「ですが、このような恩を受けておいて何の礼もしないのは、南峯家の名折れです」
「いやいや、塚田卓也という人間は今回の件にはノータッチ。その為の工作だし。そこんとこはいのりにも言ってある。だから俺に恩義を感じる必要は無し!オーケイ?」
「…」
全く納得はしていないが、反論の切り口を掴めないでいるといった表情の真白。
そういうとこは主従ソックリだった。
クローゼットに入る直前のいのりと似たようなカオをしている。
会って間もない俺のことなんか忘れて、ただ日常に戻ればよいだけなのに。
律儀だなぁ。
「おい、あんまりモタモタしてる時間はねーぞ」
「おっと、そうだな。捜査があるんだったな」
清野の言葉をキッカケにこの話題は打ち切り、俺は部屋を後にしようとする。
今度こそ窓枠にかけた足に力を込め、能力を発動し自身の身体能力を上げる。
「じゃな、真白。主人共々、幸せにな!」
「っ!?」
「じゃあ清野、あとで!」
「解除は2分後だぞ」
「りょー…かい!」
窓から飛び出し、民家の屋根伝いにどんどん清野たちから離れていく。
道には先ほどまで居なかった通行人や近隣住民の姿がチラホラ見えた。
犯人といのりたち父娘の移動が完了したから、人払いの能力を解除したのだろう。
割と本気で移動した俺は約束の2分を迎える少し前に、ランニングをしていた
地点まで戻って来ることができた。
俺は適当な公衆トイレを探すと個室に入り、その時を待った。
そして水で覆われていない腕時計が約束の時間経過を指し示すと、体中にあった水が
どこかへ消えてしまった。
ずぶ濡れになることも覚悟したが、その辺りの配慮はしてくれていたようだ。
「あー、疲れた…」
思わずそんな言葉が口から出てしまう。
Neighborの誘拐を利用した南峯父娘仲直り大作戦は、無事一人の犠牲者を出すことなく完遂できた。
周りの助けもあって、ギリギリなんとかなった…といったところだ。
俺は慣れない演技と緊張で、精神がクタクタだった。
なのでこの後の飲みで、大いに回復しようと心に決めた。
_________________________
誘拐事件のあった日の翌日、日曜日。
時刻は18時を過ぎた頃。
俺は自室のベッドに仰向けで寝転がり、天井を見ながら考え事をしていた。
あのあと清野とは結局朝まで飲み明かし、帰宅したのは朝の6時だった。
昼の12時まで寝てから溜まっていた洗濯などを済ませ、駅まで出かけ軽く昼食を済ますと足りない消耗品や食料などを買い帰宅。
他にもなんやかんや用事を済ませていたら、もうこんな時間だ。
我ながら"贅沢な連休"を過ごしたなと感じる。
何をするでもない、かと言って何もしないわけではない、時間の浪費。
自分の為だけに時間を使える喜び。
しかも来週は海の日…3連休だ。
何が嬉しいって、勤務日が減るのがイイ!
それにあと少ししたら夏休みも取得できる。
自然とテンションも上がってくるというもの。
「はぁ…」
それにしても…
昨日はやっちまったなぁ。
思い返すと、やはり粗の目立つ作戦だった。
鬼島と清野に大部分を助けられた感はある。
次はもっと根回しを徹底して、不確定要素を取り除かないとな…
(…次?)
次っておま…
こんな疲れるような事、またやろうとしているのか俺は。
笑っちゃうね。
あともう一つ気がかりな事がある。
Neighborの連中だ。
ヤツらが定期的に覚醒したばかりの能力者を襲い、自分の組織に囲い込むよう動いているのは間違いなかった。卑劣なやり口だ。
思わず自分の左腕を見る。
切断されたのは左肘の少し先あたりだ。
能力で完璧に直したので、そこには跡すら残っていなかった。
しかし心の傷はどうだろう。
脳裏に浮かぶのはいのりの泣き顔。
危害を加えるつもりがない事を俺は聞いていたが、もちろんいのりはそんな事知らない。
知らないまま、適当な時間に解放され恐怖心を植え付ける。
そして後日、誘拐犯の
の危険さを煽り組織に縛る算段だったのだろう。
考え出すと段々腹が立ってくる。
年端もいかない女の子に対してマッチポンプみたいな事をかましたり、過去にも同様の被害にあっている人間がいたと考えると、怒りがこみあげてくる。
俺にしたって、自前の能力でなんとかなったから良かったものの。
Neighborの治療師がヘボで、後遺症でも残っていたらどうするつもりだったのか。
俺の頭にふと、ある人の言葉が浮かんでくる。
(自分の正しいと思った事を全力で、か…)
約ひと月前。
自分の命を俺に譲り、目の前から消えた女性。
直接ではなく手紙だったが、俺に少し前を向いて生きる事を教えてくれた。
その彼女が言った、思うようにやれと。
「…よしっ!」
覚悟完了。
俺はベッドから起き上がると、さっそく準備に取り掛かる事にした。
まさかこんなに早く再び使うことになるとは、自分でも思わなかったが。
準備が整ったら、俺はある人物に電話をかけた。
___________________________
日曜日 20時
JR神橋駅からモノレールに乗って行く事の出来る臨海エリアにある、とある海辺の大型倉庫の事務室。
能力者集団Neighborの拠点の一つであるこの場所で、二人の男が話をしていた。
「拘留!?3人が!?」
「はい…」
「どういう事なんだい、青柳くん」
「いえ、私にも何が何だか…」
組織のトップである平はメンバーの一人青柳に急きょ呼び出され、メンバーの3人が警察に捕まったという報告を受けた。
平にとっては寝耳に水の事態であり、ひどく動揺している。
それに対し青柳は、事情を知らないと告げた。
無論、青柳は事情を把握していた。
南峯いのりを誘拐するよう命令した張本人の青柳はあまりに帰りが遅いメンバーを気にし、別のメンバーに探らせたところ、警察に身柄を確保されていることを知った。
解放されるよう色々と手を打ってみたものの力及ばず、とうとう組織の代表である平に打ち明けるに至ったのだ。
もちろんバカ正直に「誘拐を依頼したら失敗し捕まった」とは言えず、平には嘘をつかざるを得なかった。
この先はもう、流れの中で臨機応変に対応する他ないと青柳は悟っている。
捕まった3人の誰かに自分の命令やこれまでの工作をバラされた時の、最悪のケースも想定して動かなければならない。
そもそも青柳にとって、誘拐が失敗したことが想定外だった。
3人が下手をうつとは考えにくかったし、事情を探らせていたメンバーの報告によると、誘拐現場ではなく潜伏先の家に警察が駆けつけ御用になったのだという。
青柳はその不自然なシチュエーションに疑問を覚えた。
万が一いのりがテレパシーで周囲に助けを求め続けた時の為に、能力を妨害する手段も3人には与えていた。
にも関わらず、拠点に連れて行った後に警察に確保されたという事実に何か妙なものを感じずにはいられなかった。
「君も知らないか…。あー、ともかく、警察に事情を聴きにいかないとな…」
「…私もご一緒します」
「そうか、助かるよ。じゃあ早速…」
「平さん、すみません」
2人が警察に向かおうとした時、他のメンバーが事務室に入って来た。
「ん?どうしたんだい」
「塚田という人がいらして、平さんに用があると」
「ああ…塚田くんか」
「いかがいたしますか?」
「私が直接行くよ、ありがとう」
平は警察に行く準備をし、訪ねてきた卓也と話をしに倉庫内へ向かった。
________________
「ようこそ、塚田くん。よくここが分かったね」
「どうも」
「わざわざ訪ねて来たってことは組織に入ってくれる気になったんだね。嬉しいよ。でも今ちょっとバタバタしていてね…。手続きはまた今度でいいかな?」
「バタバタですか…。メンバーが警察に捕まりでもしましたか?」
「!?」
内情をピンポイントで当てられた平と青柳は、信じられないといった表情で卓也を見た。
「お前…なんでそれを…」
「今日俺がここに来たのは、Neighborに入るためではありません」
怪しい笑みを携えて、卓也はゆっくりと話す。
「貰いにきました、Neighborを」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます