第7話 ハイテクな機能が搭載された

 せっかく異世界に来たというのに、一か月間ずっと部屋に引き籠ったままだ。

 異世界を感じることができたのは、王宮と、このアパートに来るまでの道中ぐらいである。


 これのどこが異世界召喚……?


「まぁ、職業が『ひきこもり』なんだから仕方ないか」


 深く考えないことにした。


 そして部屋に籠り始めて、五十日が経ったときだった。

 レベルが50に上がったと同時に、今までなかったアナウンスが頭に響く。


〈ユニークスキル:部屋セキュリティが取得できるようになりました〉


「部屋セキュリティ……?」


 確認してみると、確かにスキルリストに加わっていた。


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 部屋セキュリティ 100

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「必要なスキルポイントが100か。今まで取ってきたスキルに比べるとかなり高いな。けど、ユニークスキルなんだから優先して取っておくべきだろう」


 幸いスキルポイントは余っている。

 あれから快眠のレベルを10に上げただけで、スキルポイントを貯めておいたため1800もあった。


 それに部屋のセキュリティは、ずっと気になっていた問題だ。

 なにせこの部屋と外を隔てているのは、トタンのようなボロいドア一枚なのである。


 時々、隣の怪しい宗教の勧誘だと思うが、ドアを叩いてくることがあって、その度に居留守を使っていた。


 俺は早速、このユニークスキルを取得することにした。


〈部屋セキュリティを取得しました〉

〈部屋のセキュリティ機能を向上させるユニークスキルです。部屋全体の強度が向上し、破壊が困難になります〉


 これでドアを押し破って侵入される心配が低くなったはずだ。


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 部屋セキュリティLV2 200

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 そしてどうやらこのユニークスキルはレベルを上げることができるらしい。


「できる限り上げておくかな」


〈部屋セキュリティがLV2になりました〉

〈部屋セキュリティがLV3になりました〉

〈部屋セキュリティがLV4になりました〉

〈部屋セキュリティがLV5になりました〉


 残りスキルポイントは300になってしまったが、効果を考えると安いものだろう。

 さらにLV5に上げたことで、新たな機能も追加された。


〈部屋のセキュリティ機能を向上させるユニークスキルです。部屋全体の強度が大幅に向上し、破壊が非常に困難になります。また、ドア越しに来客の姿を見ることが可能になります〉


「この部屋チャイムすらなかったのに、めちゃくちゃハイテクな機能が搭載されたぞ」


 怪しい奴が来てもすぐに分かるぞ。

 まぁそもそも誰が来てもドアを開けるつもりはないのだが。







 引き籠り生活を始めてついに100日が経った。


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小森飛喜

 職業:ひきこもり

 レベル:100

 HP:1000 MP:1000

 筋力:100 耐久:100 敏捷:100 魔力:100 精神:100

 ユニークスキル:部屋の主 部屋セキュリティLV10

 スキル:排泄耐性LV10 空腹耐性LV10 暇耐性LV10 清潔維持LV10 騒音耐性LV10 寒さ耐性LV4 快眠LV9 消音LV4 瞑想LV4

 SP:1000

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 あれから変わらず毎日同じ時間にレベルが上がり続け、今やレベル100に到達した。


 部屋セキュリティは最大までレベルを上げており、その効果は次のように強化された。


〈部屋のセキュリティ機能を向上させるユニークスキルです。部屋全体がほぼ破壊不可能になります。また、部屋の周辺環境を常に把握することが可能になります〉


 今までドアの向こうに人が立つと、ドアが空けたようにその姿を確認することが可能だった。

 だがレベル10になると、全方位においてそれができるようになったのだ。


 つまり隣の部屋や上の部屋の中まで、俺には見ようと思えばいつでも見ることができるということ。


 も、もちろん見てないぞ?

 あくまで見ようと思えば、だからな。


 本当に見てないからな?

 たまに上の階から喘ぎ声が聞こえてくるからって、そんな倫理にもとることはしないぞ。


 あとはこちらの生活音が周囲に漏れないよう消音というスキルを、暇耐性があるとはいえ何か暇潰しができればと思って瞑想スキルをそれぞれレベル4まで取得した。


 とそこで、レベル50のときと似たようなアナウンスが頭に響く。


〈ユニークスキル:通販が取得できるようになりました〉

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