第2+3話

 ドス黒く染まった世界に、きらきらとしたものが舞っていました。何もかもが私にとっては攻撃的で刺激的に感じられて、たまらず強く目をつむります。ひぐらしの鳴き声が頭の中で響いていました。反響するそれはひどい頭痛となって襲ってきて、私の脳内を攪拌します。平らな地面に立っているはずだというのに、まるで船の上にいるかのように落ち着かないのでした。

「早く見つけていたら……。わしがもっと早く見つけていたら……。わしがもっと……」

 そのような低い唸り声が聞こえてきました。目を開け、その声がする方を見ると、目の前に立ったおじいさんが私の顔を見つめていました。長い眉とげっそりとした頬と焦点の合わない虚ろな目。ほんの少し前に、倒れた私を心配そうに覗き込んでいたあのおじいさんと同一人物であるとは思えないほどの様子でした。しかしながら、この神社で首を吊った彼女について私に教えてくれたあのおじいさんとは、同一人物であると思える様子でした。

 おじいさんは目を伏せ、涙を流しました。その嗚咽を聞き、私はこの世界を思い出します。喉のところに酸っぱい感情たちが這い上がってきました。この世界に、彼女はもういません。不自然でした。不自然でしたし、楽ではありませんでした。何もわかりませんでした。何も考えられませんでした。何も。ただただわからなくて、息苦しいのでした。私は頭から血の気が失せるのを感じました。ひどく痛む頭。鼓動にあわせて明滅する世界と、そこに飛ぶ星。ひぐらしの叫び声。後ずさった私は石畳に尻餅をつき、そのまま仰向けに倒れました。後頭部の鈍い痛みとともに世界はひときわ明るく照らされます。目の前には、赤くて赤くてどうしようもなく赤い夕焼け空がありました。

「この夢の世界は絶対に、何かが、おかしいです」

 私がそうつぶやくと、世界は暗闇に飲まれました。

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