バレー部男子のスナックが『赤いきつね』だったなら

柴チョコ雅

第1話 姉ちゃんの弁当

授業の合間に昨日のゲームの続きが気になってスマホを見てSNSの通知に気づいた。

大学生の姉ちゃんからだ。


『あんた、私のお弁当間違えて持っていったでしょ!』


何?


 慌てて荷物を確かめると俺の青い弁当袋が入っていた。チャックを開けると中は普段の弁当の3分の1くらいの大きさのピンクの包みとピンクの箸と女子の好きなゼリーが入っていた。どうりで軽い。


『俺が間違えたんじゃねぇ。母ちゃんが詰め間違えたんだよ!』


と返信する。


『食べきれないデカさよ!恥ずかしいじゃない!バケモノ!どうしてくれんのよ!』


『俺こそこんなんじゃ足りねぇ。被害者は俺だ!部活までもたねーよ!』


『あんたはなんか買い足しゃいいじゃんか、バーカ』


そこで予鈴が鳴った。


次の授業の後、購買に走った。あんな弁当じゃ足りない。いや、それより財布の残金も大問題だ。150円。この金額で出来るだけお腹いっぱいになるものを入手しなければならない。


購買で真剣に悩む。チョコチップメロンパンかコロッケパンか、炭水化物でどこまでお腹が持つか。悩みすぎて気がつくと俺1人になっていて購買のおばちゃんに声をかけられた。


「そこのあんちゃん随分悩んでるね。どうした?もうすぐ次の授業始まるよ。」


「この中で150円以内で1番腹持ちがいいのってなんですか?弁当が姉のと間違えられて小さいんだ。」


「その大きさだもんね。沢山食べるよね。部活は何?」


「バレー部です。」


「そんだけ背高きゃ強そうだ。羨ましいねぇ。はい。コロッケパン一択だね。揚げ物は腹持ちするよ。それとオマケ。」


おばちゃんは俺にポンと赤いきつねを渡してくれた。


「お揚げ入ってるから。さっき校長先生と掛けをして勝ったから戦利品としてもらったのよ。あげる。」


「え?いいんですか?」


「紺のきつねそばも奪ってきたからね。」


そこで予鈴が鳴り響き、おばちゃんに150円を払ってコロッケパンは130円だが、お釣りは赤いきつねをもらった事だし遠慮して教室へ走った。



「どうした亘一、弁当が!」


昼休み、俺の席近くに中学から仲良しの相井と矢田が来て驚いていた。そうだろう。俺だってこんなハッピーな弁当居た堪れない。知らなかった。母ちゃんが姉ちゃんの弁当だけ気合い入れてキャラ弁にしてるなんて。ってことは今まで海苔や卵焼きの混ぜられたご飯って混ぜご飯じゃなくてキャラ弁の破片の始末…。気づいてガクって頭が垂れた。


「これは姉ちゃんの弁当だ。」


「だろーねぇ。女子の弁当って小さくて可愛いんだな。亘一、これで部活大丈夫か?」


「うん。これとこれ」


俺は戦利品のコロッケパンと赤いきつねを出した。


「赤いきつね?」


「購買のおばちゃんがくれた。」


「お湯どーすんだ?」


「あ!」

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