2011年11月29日(火)

2011年11月29日(火)


下唇が割れたので、リップスティックを買ってきた。

うにゅほに見せると、

「……のり?」

と小首をかしげた。

形状は同じだし、仕方ない。

唇に塗ろうとして、止められた。

いわく、口が開かなくなってしまうそうだ。

リップスティックの用途と使い方を教えると、目を丸くしていた。

ようやく唇にうるおいを与えることができると、塗り始めた途端、うにゅほに取り上げられた。

「ちーがーう!」

そして、俺に見せるようにして、自分の唇に塗り始めた。

間接キスに照れるような年齢でも性格でもないが、すこしだけ戸惑う。

塗り終え、軽く唇を噛んでみせたうにゅほから、リップスティックを受け取った。

以前、俺の母親から化粧の仕方を学んだのだそうだ。

口紅とはまた違うような、塗り方はだいたい同じような。

そんなことを考えながら、うにゅほの指示通り塗り直していると、

「く、くちがヘン!」

と言いながら、手首で自分の唇をこすり始めた。

ああ、薬用だからな。

俺は笑いながら、テカってしまったうにゅほの口のまわりを、そっとティッシュで拭き取った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る