第90話 空中戦
無数の魔力が空中で爆発する。火炎魔法と氷魔法、爆発魔法など別系統の魔法がそれぞれ炸裂するようにしている。そうすれば、どんな魔物でも対応できるはずだからな。
本当なら俺も参加したいところだけど、副会長からはできる限り体力温存するように言われているので、参加できないのが歯がゆい。
索敵班は魔力攻撃が落ちつくまで待って、正確に状況を分析していた。
「撃破確認3です! 未だに敵軍、進行中!!!」
あれだけの弾幕で魔力攻撃したのに、全然数が減っていない。ということは、魔力攻撃耐性がある魔物が潜んでいるのか!
これはまずい。
「迎撃班、魔力攻撃を続けろっ!」
副会長はすぐさま攻撃を指示した。さすがの決断力だ。敵が接近する前に数を減らさなければ、反撃で大きな被害を受ける可能性がある。
甲板上で魔力の詠唱がはじまる。荘厳な詠唱が響き空気を震わせる。魔力波がぶつかり合い、海面には小さな波まで発生していた。
「第2波撃て!」
再び魔力の波状攻撃が空中の魔物たちを襲う。近くにあった雲も散れぢれになっていく。
大爆発が発生し、発生した煙で水平線が黒く濁っていく。
「観測急げ!」
「やってます!」
「敵の反撃が届く距離になってきた。全艦注意しろ! どこから攻撃が飛んでくるかわからんぞ!」
「魔力感知! 無数の火球が飛んできます!!」
射撃観測が終わる前に、敵の反撃が飛んでくる。ドラゴンが吐いた火球攻撃か!
これはまずいな。さきほど詠唱が終わったばかりで、迎撃班の準備ができていないのに。
こうなったら命令違反させてもらうしかないな。
俺は両手に魔力をこめる。
あのすべての攻撃をひとりで無効化するのは難しい。でも、俺が得意な氷系魔法なら威力減退くらいはできる。威力を落とせば、救える命はたくさんある。なら、許してくれるよな、副会長さん!
「アレク君、援護するよ!」
ベテラン黒魔導士のニキータ局長は、楽しそうに笑う。いつもは渋いナイスミドルだと思っていたけど、本当はやんちゃな魔法使いさんらしいな。
「よろしくお願いします。ニキータ局長となら、副会長に怒られるのも怖くないです」
「それは光栄だね! 久しぶりの実戦だ。世界最高戦力のアレク君に、笑われないように、老いぼれも頑張るとしますかな?」
そう言いながら、ニキータさんは詠唱に入る。
詠唱の種類から爆発魔法だとわかった。だが、その詠唱のリズムや口上は独特だ。これが伝説の黒魔導士ニキータ局長。いくつものオリジナル詠唱で、魔力の攻撃力や範囲を器用に使い分けることができるらしい。こんな芸当ができるのは、世界で彼だけができる技術だ。
実際に見るのは初めてだが、さすがは魔力の才能は史上でも屈指と言われている大魔導士なだけある。汎用性の問題で、俺やエレンよりも下位の位置にいるが、魔力の威力だけならたぶん現在、最強のはず……
「さきに、私の爆発魔法で、いくつかの火炎を吹き飛ばすので、残りの処理をお願いします」
「わかりました」
ニキータさんの両手から巨大な魔力が解き放たれた……
―――
<ギルドカード>
氏名:ニキータ(51歳)
職業:黒魔導士(職業内序列1位)
ギルドスコア:860(S級)
能力
体力:790(世界ランク290位)
魔力:975(世界ランク2位)※エレン除名後のため
攻撃魔力:980(世界ランク2位)※同上
治癒魔力:―
補助魔力:―
魔力防御力:970(世界ランク1位)
総合白兵戦技能:120(世界ランク測定不可)
総合白兵戦防御力:450(同上)
知力:860(世界ランク15位)
総合能力平均値:735
総合能力ランク:25位
判定:A級上位相当(※冒険者クラス認定は本人の能力以外に実績も反映されるため、この判定はあくまで参考です)
主要実績
・独自の詠唱による魔力コントロール方法を確立。
・上記の研究で世界ウィザード賞を複数受賞。
・著書『魔力コントロールとその応用』が最優秀魔法著作賞を受賞。
・30年前ギルド協会を裏切った黒魔導士ルイスとの決闘に勝利する。
・クラーケン討伐作戦時に、魔王軍別動隊を爆発魔法で撃破する。
―――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます