第69話 侵入
俺たちは、ニコライたちが逃亡した森に入った。
ここは噂では、盗賊団がアジトとして使っているといううわさがありニコライが逃げ込むなら最適の場所。
病院からは、伝説の聖剣も一緒になくなっていた。あれとニコライが一緒だとやっかいだな。さらに、一緒にエレンもいるので注意しなくては!
魔力は世界の頂点にいる実力者。A級冒険者のトルス次長を倒したのもきっと彼女だろう。接近戦を得意とする彼と、アウトレンジ攻撃ができるエレンとでは相性が悪すぎる。一方的に魔力攻撃で
盗賊団は、テイマーを使って魔獣を手なずけているという話もある。ここから先は注意して進まなくてはいけないだろう。
今回の突入班は、俺とナターシャ、ボリスの3人。
マリアさんは、連戦による疲労で体調を崩しているため不参加となった。副会長も同行しようと申し出があったが、まだ負傷が治っていない様子だったので、俺たちが断った。
ボリスも相当なダメージを負ったはずなのに、さすがは白兵戦最強の男。
すぐに傷は治っており、絶対に同行すると言ってくれたので、お願いした。
ボリスもニコライとの因縁を終えたいという気持ちが強い。
エレンがどのような手段で盗賊団を味方につけたかはわからない。しかし、盗賊団は高位冒険者と互角に戦えるほどの者もいる。さらにS級冒険者ふたりとの対立も避けることはできないだろう。
邪龍といいヴァンパイアといいどうしてこんな短期間に、難しいことばかり起きるんだろうな。
「きみには本当に申し訳ないと思っている。ニコライの退場で、世界のパワーバランスが崩れてしまったから、世界中で問題が発生している。今回も報酬はきちんと払わせてもらう。だが、相手も相手だ。ヴァンパイアや邪龍の件とは違って、今回は、かかっているのはしょせん、ギルド協会のメンツだけに過ぎない。君たちの安全を第一に考えて行動して欲しい」
副会長はそう言っていた。
1度勝ったとはいえ、あのときのニコライはまだ本気ではなかった。
光の魔術は使っていなかったし、俺をいたぶるような戦い方をしていた。だから、本気で戦えばどうなるかわからない。
その場合は、エレンをどう対処するかが問題になる。盗賊団の邪魔があるかもしれない。問題は山積みだな。
今回ばかりは出たとこ勝負。作戦はほとんどない。力でねじ伏せるしかない。
「おい、アレク?」
「ああ、後ろにふたりだな?」
「そうだな。もしかすると前にも何人かいる。ナターシャさん、魔術で注意してもらっていてもいいか?」
俺たちが頼む前にナターシャはすでに魔術を発動させている。3人の連携もかなりよくなっているな。
「22時の方向に4人いますね。この一体は、危険地域に指定されているので、一般人の立ち入りはできません。なので、敵対組織の人間だと考えて間違いありません」
「なら、ボリスは後ろのふたりを頼む。きっと盗賊団だ。どんなからめ手を使ってくるかわからない、注意してくれ。ナターシャは俺の近くを離れないでくれ」
「「了解」」
俺は詠唱を始める。前方の敵がどんな卑怯な罠を仕掛けているかわからない。そもそもS級冒険者なら俺たちに見つかるようなヘマは起こさない。だから、前方の敵は雑魚たちだ。
一撃で仕留める。
詠唱が終わった瞬間、俺たちの前に強烈な突風が吹き荒れる。
木々は一瞬にして折れて、俺の前にいた盗賊たちは、鈍い悲鳴とともに地面に叩きつけられる。賊とともに前方にあったはずの罠もすべて消滅しただろう。
ボリスも俺たちを尾行していた2人をみねうちで失神させている。一瞬で距離を詰めてしまえば、ボリスと互角に戦えるほどの人間はそういない。
敵もほとんど抵抗らしい抵抗もできないほどの瞬殺されている。
俺たちは無力化した敵のひとりを捕虜にして情報をはき出させる。
「なんだよ、どうしてこんなに強いんだよ、あんたたち。だって、索敵の安全距離を俺たちはちゃんととっていたんだよ。あんたたちみたいな人外の相手なんてするつもりじゃなかったんだよォ」
「いいから情報をはけ。誰の命令だ? この先にはどんな罠をしかけていた? 情報源はまだたくさんいるんだ。別にお前だけに聞く必要はない。さあ、どうする?」
俺は久しぶりの交渉モードで、冷徹に盗賊から情報を聞き出していった。
「ひぃ、親方の命令なんだ。盗賊団のボスで。あんたたちには懸賞金がかかってるから、集団で袋だたきにあわせてやれって…… あんたたちは、結構手練れだって聞いていたから、罠を木のところに仕掛けたんだけど…… 全部、あんたの起こした風でどっかに飛んでいっちまったんだ」
「どんな罠を仕掛けた?」
「毒矢とか魔力地雷とか……あとは、転移結界とかですゥ」
死の恐怖におびえながら、正直にすべてを話し出した。
「ここには、何人くらいの盗賊がいるんだ?」
「ほかの盗賊団のことはわからねェ。だいたい、10人くらいのグループで活動している団体が20くらい潜んでいるかとォ。命だけはお助けをォ」
「よし、ならば、お前たちのグループのアジトに案内しろ? いいよな?」
もっと情報が欲しい。ならば、こんな下っ端じゃなくて、もっと上のやつから聞き出すしかないよな?
男は必死にうなづいていた。
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