第29話 ぶっ飛ばされた
いってー、ぶっ飛ばされた。
性癖聞いただけなのにこんな仕打ち、しかもこいつのためにしてやっているんだぞ俺は。それなのになんでグーで、しかも2回も殴られなきゃならんのだ! おかげで俺の両頬は真っ赤だよ!
「そんな恨みがましい顔してもダメよ。彼女でもない女の子に直に性癖聞いて来るなんて、本当は警察案件なんだからそれぐらい甘んじて受けなさい」
「おいおい、俺だってな別にお前の性癖なんて知りたくて聞いたわけじゃないわ! あーあ、最初会った時はあんなに清楚感出してたくせに今じゃ暴力を簡単に振るう暴力女になっちまうなんてな!」
両頬を抑えながらそう言う俺に対して、シオンはスッと後ろに回りヘッドロックを仕掛けて来た。く、苦しい、首が絞まって息が出来ん!
「へ―そんなこと言うんだ。へー」
「グエエ、ギブ! ギブ!」
「ふふふふふふ」
クソっ、シオンのやつ黒いオーラはさっきので消え去ったはずなのに、今度はゆらゆらと赤いオーラが出ているように見える。てか力強っ、ゴリラかよお前。
これが怒り狂った幽霊のサイコキネシスというものか。ならばこちらも幽霊には幽霊をぶつけるまで!
俺はポケットからスマホを取り出し、夏海にメッセージを送った。
”俺は今お前の作戦を実行してシオンに首を絞められている。長くはもたない早く来てくれ”
これですぐに奴が飛んで来てくれるはずだ。あいつはいつも目が疼くとか左腕がっとか言っているが、家に居る幽霊の中では一番霊能力が高い。イカレタ設定が本人の霊能力自体にも効力を及ぼしているのだろう。これでシオン、お前は終わりだ。
”あ、ごめんなさい今日は締め切りが近くて動けないです。あと今から買い物行ってくるんで何か買ってくるものありますか? ぎゅーにゅーは買ってきますから他のやつ”
は? ふざけんなおい! 今さっきリビングの方から声がしてただろ。まだ居るなら先にこっちを優先させろや! じゃないと俺死ぬよ!?
仕方ない、じゃあアカリだ。アカリを呼ぼう! あいつならあのホンワカした雰囲気でシオンを説得してくれるはずだ!
”アカリ! 今すぐシオンの部屋に来てくれ! 今大変なことになってんだ、子の間じゃ俺死んじゃうよ!”
”ええ!? だめだめ、だめですよっ! 私と結婚する前に死んじゃうなんて! まだ初夜も迎えてないんですからね! 今すぐ行きますから待ってください静流君!”
よしっ! 流石困ったときは頼りになるアカリ先生! あのくそボケ邪気眼小娘とは大違いだ!
「静流君っ! 大丈夫ですか!?」
来た! 俺の救世主!
「あら? あらあらあら? まあ!」
何故かシオンを止めずに首を絞められている俺の前に回って来るアカリ。おい、何でちょっと嬉しそうな顔をしてる!?
「まさか! ええ!? やっぱりそう言う事なんですか!? やっぱりシオンさんも静流君の事が好きなんですね!!」
……。
「は?」「は?」
え、なんで。なんでこの状況見てそう思うの? 首絞められてるんだよ俺。どう見ても凶悪な幽霊に善良な一般市民が殺されかけてる構図じゃんこれ。
や、待て。まさかこれは不意打ちなのでは? この一見突飛過ぎる解釈を大声で俺たちに聞かせることによって、シオンに許容できない脳破壊を起こさせ拘束を緩ませる。実際今俺の首は……締まってない!
いまだっ!
「シオンちゃんが後ろからならぁ。私は前からぎゅーってしますね! では失礼して、ぎゅーっ」
「ギャーッッ!!?」
抜け出そうとしたら、前から巨乳が迫って来た! 挟まれたっ! 巨乳と虚乳に挟まれたっ! 首がっ!? グエッ。
シオンが後ろから回していた腕は拘束が緩んでいたが、前から来たアカリの締め付け攻撃により圧迫強度が増し増しになってしまってより締まる。ぐるちい。 あっでもおっぱいやわい。
これが世に聞く天国と地獄か。前と後ろで二面性を現してくるとは恐れ入った。現代アートで誰か銅像でも作って残してくれ。
「おい、いま無い乳とか思わなかったか?」
!?
「ぎっ、ぎや、おぼっでないでず!! やわいくてきもぢいいだー! あばばばば」
「え、きも」
え、酷っ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます