図書室
五更
第1話
うちの高校の図書室は騒がしい。周りのことなど関せずといった構えで流行りのアイドルソングを熱唱する陽キャ女子たち、コールと思わしき奇声を上げる男子生徒、見て見ぬ振りをする気弱そうな図書司書の女性教諭。正直かなり不快だが、教室よりマシな上注意する勇気もないので俺含め読書好きたちは皆無視している。
しかし、今日は違ったようだ。
「ここ図書室だよ」勇者は女子生徒らしい。本棚の影から声のする方に目をやると、陽キャ女子(と取り巻き)たちと向かい合っているではないか。
「なにアンタ、冷めるんだけど」「うわ、キモオタ怒った?」「アンタに関係ないでしょ」陽キャ女子たちは言葉の針を投げつけるも、勇者は退くそぶりも見せない。
「”図書室ではお静かに“って、小学生でも守る最低限マナーだと思うんだけど」勇者さん言葉が鋭い。大丈夫?殴られたりしないよね?
「...なにコイツ。みんな、行こ」リーダーと思わしき陽キャ女子が仲間に言う。どうやら勇者の勝ちのようだ。
すごいな。入学して5ヶ月と続いた環境が1分もせずに変わってしまった。俺は思わず立ち上がり拍手をしてしまう。パチパチ。パチパチパチ。他の読書好きたちも自然と俺に続いて拍手を送る。よほど意外だったのか、勇者は立ち尽くして目をぱちくりさせている。
拍手が落ち着きはっと我に帰った勇者は、こちらに歩いてきた。意図が読めない。そんな目の前で黙っていられてもこまるんですけど。「あの...」「ありがとう、拍手」「あ、ああ!いえいえこちらこそ!」「えへへ..」女子耐性がないんだ俺にはえへへってなんだ可愛いな!「私、3組の柊あかり」「あっ、あの俺、坂井康介って言います」「ふふっ、敬語じゃなくてもいいのに。よろしくね、康介くん」下の名前やめて!好きになっちゃう!「よろしくおね..あっ、よっよろしく柊さん!」授業以外で女子と喋ったのなんて、小学校以来じゃないだろうか。軽くない感動を覚えたが、そんな俺の内心など露知らず、勇者改め柊さんは俺の隣に腰掛けた。「私今日初めて図書室に来たんだ。ちょっと案内してくれないかな?康介くん詳しいよね、きっと」「あっ、はいもちろん!是非!」「ふふっ」
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