優勝の代償
世界ジュニア男子、2011年の優勝者は日本の五十嵐誠也。
ジュニア一年目の14歳、ジュニアグランプリシリーズ二戦で優勝しジュニアグランプリファイナルに進出。
そしてグランプリファイナルでも優勝し、今回世界ジュニアでも優勝。
今シーズン出場したジュニアの大会全てで優勝した。
2位はロシアのアリスタルフ・イシャエフ。ジュニアグランプリファイナルに続いて世界ジュニア選手権でも2位。
3位はアメリカのカイル・パターソン。惜しいところでグランプリファイナルの切符は逃していたものの、今回ついに世界選手権でメダルを獲得した。
4位は日本の高村柚樹。日本国内でも特にスケートがマイナーな地域の出身でありながら着実に実力を伸ばし、今回世界ジュニアという最も大きな舞台で4位の結果を残した。
5位はアメリカのギルバート・ファーマー
控えめな印象とは裏腹にグランプリファイナル4位、全米選手権3位の実力を持った少年はまだまだ強くなる兆しが見えた。
フィギュアスケート世界ジュニア選手権は、男子シングルフリーを以て終了した。
優勝した誠也は言うまでもなく、インタビュー攻めにあった。
終わったあとは可哀想なほど疲れきった顔で、会場を出ていた。
記者の中には兄のことを一切口に出さず、誠也を一人のスケーターとして質問し、優勝を称えた者もいた。
しかし悲しいことに、そのような記者は少数派だった。
柚樹はその疲れた顔をした誠也に
「大丈夫?なんか、そればっかでうんざりするよな...」
と声をかける。
「...まあ...もうしゃーない...兄ちゃん、凄かったもん......」
と諦めたような声音で呟く。
実はシニア男子の歴代最高得点は、昨年のグランプリファイナルで聖司が更新したものから塗り替えられていない。
今尚、その天才を超える人物はいないのだ。
生きていたら、きっとその得点を超える点数を更新し続けていただろう。
生きていたら、きっとバンクーバー五輪の金メダルは聖司だっただろう。
生きていたら、今日優勝した誠也も合わせて天才兄弟として二人一緒に期待されていただろう。
そんなもしもが、直接弟である誠也に降り掛かっていた。
家族を失っただけでも身を切られるほど苦しいのに、一体なんの仕打ちなのか。
「まあ、バンケットあるよ。多分カイルとかギル辺りがまた面白いことやるよ。そこで笑おうよ」
「.......そうする.....」
と誠也は何とか少しだけ口角を上げた。
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