第97話 ノルディー帝国アイメールの街

ハヤト達一行はクリエラのご両親の墓参りも終えて、エルフの王様たちからの見送りを受けながらノルディー帝国に向かっていた。


オスビッチ迄無事戻ってきて、国境沿いを北に向かって街道をゆっくり走行することにした。


1日目の泊まりの街、アイメールに向かっている。


途中街道だと言うのにかなりの魔物の数が出てきた。


最初は街道の茂みからトロールが出てくるが『万能乗用車』の【サーチモニター】に事前に検知されていたので、レーザービームで顳かみに1発打ち込んで回収し、暫く進むと今度はファングウルフの群れが28頭程襲ってくる。


アレンとドリス、それにラッティーが7匹から10匹を首を切り落として、止血後に回収する。


アイメール手前3キロほどのところでは今度はホーンラビットが10匹襲ってくる。


ドリスが全て対処して回収する。


やっとアイメールの街につく頃にはお昼になっていた。


ギルドに行く前に食事をしようと、4人で定食屋に入る。


「ハヤト様、ここは家の売却金が入ったのでご馳走させてください」とクリエラが言うので、お言葉に甘えることにする。


昼食を食べ終え皆でギルドに向かった。


アイメールのギルドは割とこじんまりした佇まいで落ち着いた雰囲気のある冒険者ギルドだ。


クラス毎の掲示板になっていたので最上位のクラスの掲示板を見てみる。


キマイラの討伐依頼とワイバーンの討伐依頼があったので、その両方を剥がして受け付けに出した。


「あのー、この両方をお受けになるのですか?」受付嬢はハヤト達がこの街では見かけない冒険者なので恐らく心配してくれたようだ。


全員のカードを出して「大丈夫ですよ、差程大変な依頼でも無いのですぐ片付けて来ます」とハヤトが受付嬢に言った。


彼女はカードを見て驚いて、納得したようだ。


キマイラの居る場所とワイバーンが居る場所を聞いてギルドを後にした。


ハヤト達は『万能乗用車』に乗って、受付嬢から聞いたキマイラの生息する場所に来ている。


【探査(サーチ)】でキマイラのいる場所はすぐわかり、ガードマンが車から降りて一瞬で間合いを詰め、キマイラの炎を盾で防ぎつつ獅子の頭の付け根を切り落とした。


ハヤト達はすぐに次の場所に移動していく。


ワイバーンのいる場所は、キマイラがいた場所から3キロほど西に行った平原にいた。


今度はアレンがまず翼をレーザービームで穴を開けて、空に逃げないようにしてから、【瞬足】を使いあっという間に首を切り落とした。


クリエラもけっして弱い冒険者ではないが、彼らの戦いかたを見て、ハヤトファミリーの圧倒的強さに驚愕していた。


「セリーヌ様、私自信が無くなってしまいましたわ」


「最初は皆同じよ!ラッティーもそうだったわ!でも1週間もすれば自信がついて2ヶ月半でSクラスになれたわ、貴女なら大丈夫よ」


ゆっくり、アイメールの冒険者ギルドに戻り、キマイラとワイバーンを裏の解体場に持って行き、納品書を受け取ってギルドの受付嬢にだした。


受付嬢はクエストを受けて未だ2時間も経っていないのに、すでに強力なAクラスの魔物を簡単に討伐してきたパーティーに驚いていた。


「ハヤト様、キマイラ討伐依頼が金貨40枚、ワイバーンが金貨50枚になります。それと、途中の街道で討伐した魔物の買取が銀貨490枚になります。カードに入金しますか?」


「そうしてもらえます?他のギルドより若干高めに買い取ってもらえたけど?」と受付嬢に聞くと、


「状態がとても良く、魔石も通常のより大きかったそうで素材のチーフがそれぞれ金貨10枚をプラスで支払うように指示されましたので・・・」


「ほんと!チーフに”熱き絆”がお礼を言っていたとお伝え下さい」と言って、ギルドを後にした。


ハヤト達は【マッピング】で安くて美味しい宿で検索して、ギルドから50メートル街なかに入った宿”灯火”に入ってみる。


「すみませ〜ん、1泊泊まりたいのですがぁ!シングル2部屋ダブル1部屋空いてますか?」


「はい、大丈夫ですよ。シングル銅貨50枚、ダブル銀貨1枚で夕食、朝食は5時から10時です。ラストオーダーが9時半なのでそれまでに済ませてください。それではシングルが200,201、ダブルが205号室です」と鍵を渡されて4人で2階に上がった。


「夕食を少し早めに食べて4人で街を散策しましょう」とセリーヌがクリエラとラッティーに声をかける。


「夕食まで各自ゆっくり休んでのんびりしてください」とハヤト。


ハヤトはクリエラのために部屋に上がって、真っ先に『100倍時計の指輪』と『シールドの指輪』それとセリーヌが嵌めていたものと同じ機能の『魔力増幅リング』をそれぞれ『マジック創造ボール』で作り出して、夕食時に渡すことにした。


もともと身体能力は凄いものを持っているクリエラなので、これらのマジックアイテムを使えばSランクにはすぐにでも到達できるだろう。


ちょうど夕食前には作業を終えて、3個のマジックアイテムをセリーヌに渡して、奥様からクリエラに渡して貰うことにした。


ただでさえエルフは希少種族で目立つのに美人二人でもうひとりも可愛い美人の獣人兎族のラッティーで3人の美人を連れたハヤトは目立ってしょうがない。


夕食時にセリーヌが「クリエラ、ラッティーも持っているファミリーのマジックアイテムを渡しておくわ、これを身に着けていれば貴女の能力は数倍に上がるわよ」

と言って、順番に機能を説明していく。


「セリーヌ様、これって全て神級のマジックアイテムじゃないですか、こんな凄いものを皆さん身につけていらっしゃるのですか?」


「全員では無いわ、ラッティーと一部は私が身につけて居るけど旦那様は一つも身につけてないわ、全て自身の体に身についているから・・・」


「戦闘能力を数倍引き上げてくれるのは多分『100倍時計の指輪』で相手の【ブースト】での瞬間の動きもゆっくり見えるほどで相手の隙きを見分けられるよ。あと『シールドの指輪』はそのまま身を守ってくれるからドラゴンと戦っても炎の息吹は1万度までなら十分防ぐからね」


「ありがとうございます、これを持って更に精進して早く皆様と一緒のフィールドに立てるようにがんばりますわ」


「クリエラさんは、もともと私よりお強いし体術も凄いのですぐに皆と同じクラスに追いつきますよ」とラッティーも応援してくれた。


”灯火”の夕食はマナバイソンのステーキか白身魚のバターソテーを選ぶので3人の女性陣は白身魚のソテー、ハヤトがマナバイソンのステーキにし、両者に野菜サラダがふんだんに付いていた。


パンが食べ放題でこれで寝具の部屋が銅貨50枚は凄くお得だと4人でよろこんでいる。


食後に、全員で街を散歩する。


アレンが執事服でガードマンが騎士の姿、ドリスがメイド服のままでついていくので、他の人達から見ると異様な集団に見えるようだ。


スライム夫婦はラッティーとクリエラの二人が抱いて、銀龍はいつもの定位置であるハヤトの左肩に、キラービーが皆の数メートル先を監視しながら飛び回っている。


ケープの街ほど人口が多くないので夜の喧騒はまったくなく、緑豊かな街はとても穏やかな風が吹いている。


「こういう街も落ち着いて居てホント、いいよね!」とハヤトがのんびり歩きながらいう。


「ノルディー帝国はオスビッチの街もそうでしたが、緑が豊かで騒々しくなく静かな街並みが続いていて良かったですし、皆こんな感じの街がおおいのでしょうかね?」とラッティーがほんの少し疑問に思いながら皆に言った。


「ラッティーは何か違和感が有るの?」とハヤト。


「違和感というか、夜は魔物が出でくることが多いのが常なのに魔物の気配すら感じないのが不思議で、しかも魔物が少ないわけではなく、オスビッチからここアイメールに来る街道筋にですら魔物が出るのにこの夜の静けさが逆に不気味な気がして・・・」


「ラッティーよく気がついたね!僕もこの国に入って、魔物が多い割には夜にその魔物たちの気配が街の周辺で全く無くなるのに違和感を感じていたんだ」


「どういうことですか?旦那様」


「いや、この国というよりこの近辺の地域に強力な魔物を思いのままに司るちからの持つものが夜に魔物を押さえ混んでいるような、そんな気がしただけだよ」


「そんな、魔物をいのままに操る力って、『眷属スキル』とかですか?」


「いや、『眷属スキル』だったら昼間僕らが討伐した魔物は完全に野生の魔物で魔石も僕が感じたのでは、『眷属』の兆候は全くといってなかったよ。


「セリーヌやクリエラは精霊達と交信できるのでしょ?何か感じることはない?」


「そういえば、緑の木々が多いのに全く精霊が居ないのがすごく不思議です。エルフの国と近いのですからもう少し精霊がいても不思議じゃないのですが」


「でしょ?僕もこの国に来て最初に違和感を感じたのは精霊がいないことなんだよ。本来セリーヌが言うように緑の木々に囲まれた街には木の精霊達が飛び回っていても可笑しくないのに全然いないのが不思議でね!」


「それに、ラッティーが言うように、普通の街ならメインの街道筋にあれ程群れをなしてファングウルフが居るのが可笑しいわね、森や平原なら分かるけどね」


「どういうことなのでしょ?」とクリエラ。


「なんだかこの平和な静けさが作られた仮初の姿なような気がしてね・・・」


「ドリスは何か感じるかい?」


「ご主人さまの言う通り、何かはっきりした魔力ではない、思念の流れがノルディー帝国の東部一体を包み込んで魔物の意思を封じているようなきがしております」


「だよねー、オスビッチで僕は思念の流れを感じていたけど、敵対しているわけではないし流しているのだけどね」


「でも旦那様、今のこの街でも別にのどかな夜を楽しめているのでそれはそれで良いのでは無いのですか?」


「そうだね、平和でのどかな街づくりにその思念が動いているのであればね」


そんな事を話しながら、みんなで宿に戻って行くのだった。


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