第4話

 前世、サフラは魔法少女だった。

 こことは異なる世界、ビルが立ち並び、電車や車が走る忙しない国ーー現代日本。

 サフラはそんな現代日本に住む紫川純子しかわじゅんこという名前のどこにでもいる女子だった。


 サフラが十六歳の時、この世界からやって来た紫の花の妖精であるポルと契約を交わし、魔物を倒す魔法少女になった。

 魔物たちはポルと同じこの世界からサフラたちの世界にやって来ては、世界中に溢れる自然の力を奪おうとしていた。そんな魔物たちに対抗出来る存在として、ポルを始めとする花の妖精たちは魔法少女になれる者を探していた。

 その内の一人がサフラの前世である純子だった。


 ポルと契約を交わして魔法少女となったサフラは、他の魔法少女たちと一緒に魔物と戦った。約一年もの戦いの末、ようやく全ての魔物を撃退すると、魔法少女たちはそれぞれの日常に戻って行った。

 サフラも同じ様に元の日常に戻った。学生を卒業し、社会人になった。

 しかしサフラが二十三歳になる頃、再び魔物が世界を襲う様になった。

 その頃になると、サフラ以外の魔法少女たちの大半が魔法少女の資格を失っており、サフラが数少ない魔法少女の一人となっていた。


 後からポルに教えてもらったが、魔法少女になるには素質以外にも、身も心も少女であるという条件があったらしい。

 この頃になると、かつて魔法少女だったほとんどの少女たちは、恋人がいるか、あるいは結婚、出産をして大人になっていた。

 真面目に魔法少女をして、勉強と仕事に明け暮れていたサフラは、年齢と彼氏いない歴が同じという独身女性だった事もあり、心は別として、身体はまだ魔法少女の条件を満たしたままだったらしい。


 サフラは再度魔法少女として戦ったが、魔物たちは前より強くなっており、魔法少女たちは一人、また一人と倒れていった。

 最後の魔物と戦う頃には、とうとう魔法少女はサフラ一人だけとなってしまった。

 その頃には、サフラも魔法少女の力の使い過ぎで、大分身体が弱っていた。

 ポルからも、これ以上戦うとサフラの寿命まで力を使う事になり、やがてサフラは死んでしまうとまで言われた。

 それでも、自分に世界の平和がかかっていると言われた以上、サフラは止める訳にはいかなかった。サフラは自分が持つ全ての力を集めると最後の魔物を倒し、力を使い過ぎたサフラも倒れた。


 そのまま息絶えたはずだったが、サフラと契約していたポルが最後まで戦ったサフラを労い、元いた世界へ帰る際にサフラの魂も連れ帰ったらしい。

 そうして、サフラの魂はポルが住んでいたワームウッド王国に連れて行かれ、王国の城下町で花屋を営むアマランス夫妻の一人娘・サフラとして第二の生を受けたのだった。


 最初こそ前世の記憶を忘れて、サフラとして生きていたが、サフラが六歳の頃、両親について花の仕入れに隣町に行った帰り道に前世を思い出す事となった。

 サフラが父親が操る馬車の中で遊んでいると、前世でも戦った魔物たちが馬車を襲ってきたのだった。

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