城塞へのみちのり

第57話 ガチャで着せ替えとは!

 あの激闘の日々から二週間。

 タリルの大森林も冬景色になっていた。


 冒険者も活動は停滞する。

 今日は自宅で催し物が開かれていた。

 そう。ガチャ衣装アイテムのお披露目である。


 ガチャに衣装は多い。夏は水着、それ以外は可愛い衣装が多い。男性用衣装もあるにはあるが、女性用衣装が圧倒的だ。


 アーニーは逃げようと画策し四天王と共に旅立とうとしたが、すでに彼らはクエストに旅立ったあとだった。

 明らかに誰かが手を回した気配がある。


 自宅待機とアーニーは厳命されている。


 自宅には女性陣、そしてマレックのメイド部隊が揃っている。

 使っていない部屋を衣装部屋と着替え室に改造した。


 彼女たちは本気だった。


「アーニー様」


 女性陣が揃っている時に、エルフメイドであるテレーゼが切り出したのだ。


「こんなお宝を眠らているというなんて、実にもったいないです」

「俺にとっては外れでしかないんだ! 着る機会など……」

「なければ作ればいいのです! 素敵な女性がたくさんいるのに! 本当にもったいない!」


 テレーゼの提案に飛びついた十代女性三人、ウリカ、エルゼ、ジャンヌである。


「ガチャの有効活用ですね。アーニー様」

「私、着てみたいなあ」


 ジャンヌがアピールする。


「私は浮くからいいよ。三人で」


 ポーラは遠慮した。


「絶対だめ。ポーラさんも」

「似合う服ないよー。丸顔ぽっちゃりだし」

「お似合いの服はありますのでご安心ください。エルフメイドの名に賭けてわたくしが保障します」


 そしてポーラの参戦も決定し、今日を迎えたのだ。

 男性陣でその場にいるものはアーニーとマレック二人だけである。


『実は俺もいる』

「いるのかよ!」

『守護遊霊だからな。男性陣にはカウントしないでくれ』

「明らかに男だろう、あんた!」

『いやー。女性陣のガチャの衣装、大変楽しみです。出資者ですから』

「あんたの世界ベースの衣装も結構あるんだよな……」

『うむ。のんびり待つか。最近の異世界はありとあらゆるガチャの手段を模索しておる。別の世界では格好変更スタイルチェンジで冒険者性能まで変わるんだからな』

「神々にそういう要素いれてもらうか……」

『危険だぞ。露出が激しい衣装になったり、ダメージを受けると鎧や服が破けたり……』

「なにそれこわい」

『そして欠けたリンゴと人造人間の審査が…… っとそろそろはじまるぞ!』


 テレーゼが姿を現し、一礼する。今日の進行役を兼ねている。


「では私、ウリカから! とう!」


 軽やかに部屋の奥から出てきた女性はウリカだった。

 クラシカルなピンストライプの上下、スカートの丈も長い。清楚な感じである。


「ほう、これはなかなか。魔法学園の生徒みたいだ」


 マレックが実に満足げだ。


『スクール系みたいだな! いいわー。新鮮だー』

「うん、これはいいな。普段着にしてもいいんじゃないかな……」


 露出も少なく、清楚だ。彼好みである。


「やっぱりアーニーさんは露骨な露出少ないほうが効くんですね! アドバイスありがとうございます!」

「誰だよアドバイスしたの」

『ククク。俺だ』

「おい!」


 思わず虚空を睨み付けてしまった。


「わ、私は着慣れてないから少し恥ずかしいですね」


 次にエルゼがでてくる。


 姿は——凜とした黒が基調のクラシカルなデザインのワンピース。胸元にはジャボをつけている。

 確かに普段着慣れない衣装だろう


「実に良いな。本当に実に我ら好みだ」


 吸血鬼らしい感想のマレック。


「色っぽい。似合う」


 素直にアーニーも褒め讃える。


『おお、銀髪ポニテゴスロリエルフ……属性さらに盛り盛り。 アメムラやハラジュクはもう俺には厳しいからなあ。似合うぞエルゼ』


 どうやら守護遊霊は知っている口ぶりだ。アメムラやハラジュクなるものがどこかはアーニー達にはわからない。


『やはりこの世界はいい…… こっちの世界はゴスロリ系はめっきり減ってしまって。アメ村も減ったなあ……」

「落ち着け守護遊霊」


 旅立ちそうな守護遊霊にツッコミだけはいれておく。


「次は私ですね! 私は皆さんとちょっと違いますが!」


 幅色のブラウンの帽子にジャケット、シャツ。ラフなデニムジーンズ。

 短髪のジャンヌに良く似合っていた。ボーイッシュスタイルで決めている。


「なんとこれは…… 男装の麗人というに相応しい。女性陣のアプローチが凄そうだな。いやよく映えるぞジャンヌ」


 マレックが微笑んだ。


「普段と別人に見えるな。うん。格好良い」

『現代風で攻めてきたな。別の意味で破壊力が高い』


 最後のポーラはなかなかでてこない。

 エルフメイドたちに背中を押されてでてきた。


「やっぱりやだー。私は…… マレックさんまでいるー!」


 思わず顔を覆ってしまった。


 彼女はミニハットに白を基調にしたフリルデザインのドレス。妖精をイメージしたようなデザインだ。

 可愛い系丸顔のポーラにはよく似合ってる。

 小型のステッキを持っているが、魔法攻撃力ありな武器であることは内緒だ。


「いっそ殺してー」


 悲鳴を上げるポーラ。


「ポーラさん似合ってます!」

「可愛いなーポーラさん」

「とてもお似合いです」


 女性陣が真っ先に反応する。


「素敵ですぞ! ポーラ殿! テレーゼでかした」


 興奮するマレック。

 眼が><になるポーラ。


 テレーゼはドヤ顔だった。


「これはポーラの母にもみせてやりたいぐらい、いいな」

「魔法喰らいたいの! アーニー!」


 顔を真っ赤にしていやいやする。


「褒めているんだよ!」

『いいよね! 甘ロリもいいものだ!』


 守護遊霊も喜んでいる。


「皆様、夜は長いですよ。何せ衣装だけはたくさんありますからね。あと二巡はさせていただきます」


 テレーゼが告げる。


「私はもういいよね? ね?」

「ポーラ様にお似合いそうな服はまだまだありますよ」

「うわーん」


 ポーラは奥に連行されてしまった。


「どれだけガチャを回しているんだ」


 マレックが思わず聞いてしまった。


「四人五巡は間違いなくできるな」


  アーニーが虚空をみつめながら答えた。


『それ以上できるよなあ』


 守護遊霊もそれを認めた。


 まだまだ終わりそうにない。

 もっとも張り切っている者たちは、メイド部隊なのかもしれなかった。


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