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「…ああ、ミカヅキ。すまなかったな……」


 ミカヅキから布団を退かし、運良くまだ眠りに就いていたミカヅキの頭を撫でていた時だった。


「──ヤマトっ?!」


 式神の蛇から文を受け取ったらしいチヨの声だった。その声は何処か動揺を含んでいた───。


「……………」


「……?」


何か悪い知らせでもあったか…、ヒズミがミカヅキを撫でながらその次の行動を推測していると───…。




──ガッタァーンッ!!!


「──あんの、タワケ者めがっ!!」




 どんな憶測よりも遥か彼方(かなた)上を行き、衝立が半壊しながらミカヅキの直ぐ枕近くまで吹っ飛んで来た。


「???」


そこには只、無心に文へと目を落とすチヨの姿があった。


「………っ…」


 その頬には僅かに赤みが差しており、普段のチヨからは見られぬ一人の若い女の姿が窺い知れた。


 チヨの目が文の最後の一文らしきに止まり、一拍の間。


「……クドいわぁっっ!!!!」


ベシッ!!、と式神の蛇の直ぐ傍らへと文を乱暴に叩き付ける。


「??、とうさま、何…?」


 その騒ぎにミカヅキが目を覚まし、ヒズミに目を擦りながら訊ねた。


「───何でもないよ、ミカヅキ…」


ハッと我に返ったチヨが、些か赤面しながら投げ捨てた文を拾い上げる。


「──す、すまないな。ミカヅキ…。起こしてしまったようで………」


 式神の蛇は訳も分からずに只ビクビクとし、側に控えた黒い獣の姿のヨミは呆れ返ってその瞼を閉じていた───。


 勢い余り倒した衝立を引き寄せると、チヨはもう一度ミカヅキに「すまぬ」と言い、ボロボロな衝立の向こうにて、文の返事を書く支度へと取り掛かり始める。



 

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