第188話 異空間転移スキル「ゲート」

 半年ぶりにステータスを確認してみると、軒並みレベルが上っており、新しいスキルが一つ増えていた。

 そのスキルは、異空間収納の発展形である異空間転移スキル『ゲート』であった。


 異空間収納は、オレが女神フィリアから与えられた『英知の指輪』の機能のひとつで、異空間になんでも収納することができるスキルであるが、出し入れできるのは1箇所のみであった。

 その出入口ゲートが複数箇所に拡張したのが、異空間転移スキル『ゲート』である


 出入口ゲートから異空間を通り、別の出入口ゲートへ距離に関係なく即時に移動できるのだ。

 例えばアクアスターリゾートのペントハウスのドアを開けると、その先は王都公邸の執務室といった感じの使い方ができるのだ。


 あの国民的アニメ『ド○え○ん』の『ど○で○ドア』と似ているが、出入口ゲートが固定されている点が違うのでパクリではない。

 現在のスキルレベル3では、出入口ゲートは6箇所まで設定できるようだ。


 ステータス・ヘルプをじっくりと読んでみると、こんな事が書いてあった。


 ★異空間転移スキル『ゲート』使用説明書★

 任意の場所に出入口ゲートを設置し、空間や距離の制約を受けずに即時に移動できるスキル(同一ワールド内限定)。

 ①ゲートには『自由ゲート』と『固定ゲート』の2種類がある。

 ②現在いる場所に入口を作ることができる『自由ゲート』は1箇所のみ。

  入ることは出来るが、出ることは出来ない、一方通行である。

 ③予め、設置が必要な『固定ゲート』は、1レベル毎に2箇所まで設置可能。

  レベルが上がれば設置箇所も増える。

 ④『固定ゲート』は現地で設置する必要があり、削除、再設置が可能。

 ⑤ゲートを設定できるのは『英知の指輪』の所持者のみ。

 ⑥『自由ゲート』は『英知の指輪』の所持者のみが開く事ができる。

 ⑦『固定ゲート』が見えて開閉出来るのは『英知の指輪』『女神の指輪』『天使の指輪』の所持者のみ。

 ⑧『英知の指輪』『女神の指輪』何れかの所持者と物理的に接触している状態であれば、第三者も『固定ゲート』間の移動が可能。


 なるほど、これは凄いスキルを手に入れた。

 今まで何時間も掛かっていた移動が、ゼロになるのだからチートスキルと言って良いだろう。


 オレは試しに『ゲート』を設置してみることにした。

 ヘルプに従いながら、1箇所目の『固定ゲート』をリビングの壁に設置してみよう。

「ゲート・インストレーション」と呪文を唱えると、部屋の内装に合ったお洒落な白いドアが現れた。

 見た目は普通のドアと何ら変わらない。

 ドアプレートには『固定ゲート1』と書かれている。


 今度は、もう一箇所の『固定ゲート』を寝室の壁に設定してみた。

 何もない壁に、内装と違和感ない新しいドアが設置された。

 ドアプレートには『固定ゲート2』と書かれている。


 これで2つのドアを行き来できる条件が整った筈だ。

 寝室のドアの向こうは物理的に考えれば廊下で、間違ってもこのスイートのリビングではない。


 早速、『固定ゲート2』のドアに向かって、ヘルプに書かれている通り「ゲート・オープン」と唱えるとゲートが開き、中は4畳半位の白壁の部屋であった。


 部屋には窓も何もなく、反対側にドアが一つあるのみである。

 ドアプレートには『固定ゲート1』と書かれている。


 そのドアを開けてみると、そこは確かに、このスイートのリビングであった。

 物理法則を無視した異空間転移スキル『ゲート』を体感してオレは身震いした。


 今度は『自由ゲート』を試してみよう。

 ヘルプに寄ると『英知の指輪』に向かって呪文を唱えれば『自由ゲート』が現れると書いてある。

 早速試してみた。

「エントランス・オープン」とオレが呟くと眼前の虚空に金色こんじきに輝く、ドアが現れた。

 何もない空間に浮かび上がるように現れた『自由ゲート』は、眩い光を放っていたが、ドアノブを引くと、中は先程の4畳半くらいの白い部屋であった。

 中には、『固定ゲート1』と『固定ゲート2』の2つのドアがあった。

 『自由ゲート』を閉めると、その部分は跡形もなく消えて無くなった。


 なるほど、入口専用とはそういう事か。

 でも、出口を作らずに入口から入ってしまったら、永久に出られないのではないか?などと余計なことを考えたが、ヘルプによると出口が設置されていなければ、入口も開かないそうだ。

 そういう面では誤操作発生対策フェイルセーフがしっかりしているようだ。


 今度は『固定ゲート2』から寝室に出た。

 実験は全て成功したので、後はどう使うかじっくり考えなければならない。

 実験用に作った2つの『固定ゲート』はすぐに削除した。

 ちなみに削除用の呪文は「ゲート・デリート」である。


 早速『固定ゲート』の設置場所の検討を行った。

 まずは、アクアスターリゾートのオレの居住スペースに1箇所設置は必要だろう。

 色々と考えた結果、『固定ゲート』の設置場所は下記の通り決めた。

 ◎アクアスターリゾートの12階リビングルーム

 ◎王都の『秋桜の館』のリビングルーム

 ◎王都の情報大臣公邸執務室

 ◎領都エルドラードの領主執務室居住部分

 ◎シュテリオンベルグ城領主邸(建設後)

 ◎エルメ島領主専用室のリビング(建設後)


 あとは、ゲートの使用許可を誰に与えるかが問題だ。

 このスキルは、とても便利だが、使い方を誤ると飛んでも無い事態を引き起こす可能性がある。

 信頼できる人間でなければ、危なくて使わせることは出来ない。

『天使の指輪』は婚約指輪代わりに婚約者の3名、ジェスティーナ、アリエス、アスナに渡してあるので、彼女たちにゲートを使わせて様子を見てみよう。

『女神の指輪』は『天使の指輪』の上位版で所持している者に数々の加護を与えてくれるらしい。

 ゲートの利用に問題が無いようであれば、ポイントで『女神の指輪』を3つ交換して婚約者3人に渡し、回収した『天使の指輪』のうち1つをサクラに渡すことにしよう。


 異空間転移スキル『ゲート』が使えることで、何時間もかかる各都市間の移動が無くなるのは、オレにとってこの上なく嬉しいことだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る