第146話 王宮での御前会議(前編)
翌日の早朝、『空飛ぶイルカ号Ⅱ』で王都へ飛んだ。
今回同行するのはジェスティーナ、アスナ、サクラと護衛3名の合計7名だ。
王都までの距離は陸路だと約600kmだが、空路では530kmほどで、約1時間10分の旅である。
離陸時に地上は、小雨模様であったが、高度3000mを過ぎると雲の上に出た。
飛行船は、巡航高度6000mまで上昇すると水平飛行に移り、眼下に雲海を見ながら一路王都を目指した。
女性6人は、朝日を反射して輝く雲と青空の美しさに感動していた。
「雲の上って、晴れてるんだね」
「うわ~、何これ、キレイね~」
「なんか、この雲って絨毯みたいよ」
などと口々に非日常の光景に感想を述べていた。
女3人寄れば、
普段、この6人には上下関係があり、身分や立場の差もある。
ある者は王女であり、ある者は商家の副当主であり、ある者は専属の秘書や護衛であるのだが、今だけは気心の知れた友人なのである。
もし、他に乗客がいれば、それぞれの置かれた立場を演じていただろうが、今日はオレの他に乗客は居ない。
つまり、自分たちの立場を演じる必要がないのだ。
十代後半の美少女たちが、気張らない同性との会話で見せる素顔に、オレは何故か穏やかな気持になっていた。
1時間余りの空の旅は、あっといる間で、飛行船が王宮に到着する頃には晴れ間が広がっていた。
「なんか、ここに来るの、随分久しぶりな気がするわ」
ジェスティーナは自分の生まれ育った王宮の風景を懐かしんでいた。
ここを離れてから時間的には、それほど経っていないが、その間に色々な事がありすぎたのだ。
オレとジェスティーナは、そのまま謁見の間に向かった。
午前10時から国王陛下の御前で重臣を交えて会議の予定なのだ。
早めに謁見の間に着いて、王弟のアルテオン公爵、内務大臣のロカレ・ブース子爵、軍務大臣のジョエル・リーン伯爵と世間話をしていた。
話題はジェスティーナ王女襲撃事件のことであった。
ジェスティーナは事件の生々しい状況を重臣たちに話して聞かせた。
「自分の
そこへ国王陛下が
「カイトどの、ティーナ、久しいのう」
「国王陛下に置かれましては、ご機嫌麗しく
「そんな堅苦しい挨拶は不要だと申しておろう」
そう言いながらも国王の機嫌は悪くなかった。
「早速、会議を始めるとするか」
内務大臣のロカレ・ブースが議事進行を担当し、議題を説明した。
1.王国主要都市間の飛行船定期航路開設について
2.領都シュテリオンベルグ(旧サンドベリア)の現状報告と復興の見通しについて
3.ジェスティーナ王女誘拐を図ったルハーゲ子爵の処分について
4.エメラルド諸島におけるリゾート開発構想について
「飛行船による定期航路開設の件は、シュテリオンベルグ伯爵から報告願います」
オレは定期航路の進捗状況を説明した。
1.定員100名のクジラ型飛行船4隻は既に到着済であること
2.飛行船の代金は60ヶ月リース(分割払)にしたので、資金的な余裕ができたこと。
3.離発着場である飛行船ステーションも到着済みで設置待ちであること。
4.就航予定地は18都市で王都内に4隻分の飛行船ステーションを用意したこと。
5.航路は下記の4航路であること。
◎南東航路(5都市)
王都→アストラ→ルミナ→セントレーニア→シュテリオンベルグ→レジーナ→王都
◎南西航路(5都市)
王都→テンカリョーナ→アドミラ→レイゼン→エッセン→マユーラ王都
◎中西部航路(4都市)
王都→ブラボレーン→ラピス→ヴァンフリード→ルンヴィット→王都
◎北西航路(4都市)
王都→レンドルフ→コンカリーナ→シュピーゲル→エレスカーブ→王都
「就航都市の土地の確保と公社職員の採用はどうなっておる」
国王が内務大臣に質問した。
「18都市全て就航先の場所確保が完了しております」
「カイト殿には、順次発着場設置の準備をお願いしたい」
「乗務員は12名採用し、飛行船は1勤務2名体制で週6便を運行予定です」
「各都市では3名の現地職員を採用し、予約と荷物の保管・受渡しが主な業務となります」
「内務省から飛行船公社へ実務管理者3名を出向させて明日からカイト殿の指揮下に入ります」
「真面目で優秀な若い職員を出向させたので、カイト殿ビシビシ鍛えてやって欲しい」と内務大臣は笑顔で言った。
明後日、飛行訓練を兼ねて、実務管理者3名と乗務員12名を乗せフライング・ホエールで南東航路へ訓練飛行することとなった。
そして各地で飛行船ステーションを設置する。
実際に設置方法を見せて他の各都市に飛行船ステーションを職員に設置してもらうのだ。
面倒だが、最初だけは手本を見せなければならないと、オレは諦めていた。
定期航路の就航日は1週間後と決まった。
料金は搭乗区間の距離に応じ、20km単位で小銀貨1枚(1千円)と決まった。
例えば王都とシュテリオンベルグの距離は1200kmあるので小銀貨60枚(=金貨0.6枚、円換算で6万円)となる。
1200kmの距離を馬車で移動すると、1日120km進むとして10日間の大旅行となる。
馬車代、宿泊費、食事代などを考えると、恐らく金貨0.6枚では済まないだろう。
それが2時間40分に短縮できて、この料金なのだから安いものだ。
貨物運賃は大きさと重さに応じて12段階に分け、それに100km毎の基準料金を掛ける方式を採用し、旅客運賃のおよそ6分の1に設定した。
【ソランスター航空公社収支計画(概算)】
年間売上 金貨100,000枚(円換算100億円)
年間経費 金貨 40,000枚(円換算40億円)
年間収益 金貨 60,000位(円換算60億円)
※経費内訳(単位:金貨)
◎リース料 8,640枚(円換算8億6400万円)
◎人件費 5,000枚(円換算5億円)
◎飛行船維持費 15,000枚(円換算15億円)
◎賃借料 3,060枚(円換算3億600万円)
◎管理費 5,000枚(円換算5億万円)
◎雑費 3,300枚(円換算3億3000万円)
経費はかなり多めに見たが、思ったよりも儲かりそうだ。
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます