4、メイド服はお好きですか?
「ようこそ! 流離のダンジョンへ!」
受付で可愛いメイド服を着た勇者マルチナ。
「‥‥‥何か違うな。もっと柔らかく言えんのか?」
「私にはわからん!」
メイド服勇者マルチナは、ドンドンと足を床に打ち付けた。
「落ち着け‥‥‥其方は美しいのだ、もうひと頑張りだ」
「がんばる!」
勇者マルチナの扱いが上手くなっている村長。
「村長、これはここでいいですか?」
受付の横に大きな掲示板を取り付けていた、カークス村の村人A。
「うむ、そこに頼む」
「では我々は武器屋の方を手伝ってきます」
そう言うと掲示板を持ってきた村人Aと村人Bはお辞儀して出ていった。
「これは何だ?」
受付の横の壁に取り付けられた、大きな掲示板を見ながら勇者マルチナ。
「ランキングボードだ」
「何だそれは?」
「ダンジョンは地下100階まであるが、簡単には踏破できん。‥‥‥というか、現状で100階まで行けるのは其方のパーティーくらいだろう」
「クリアー出来ないのに入場料を取るのは詐欺ではないか!」
融通の効かないメイド服。
「ダンジョン内のモンスターの経験値は悪くない。何度も挑戦し、レベルを上げ作戦を立てればクリアーは出来るのだ」
「レベルが上がる前に諦めないか?」
「故に階層踏破ランキングを作る。毎週10位以内に入ったパーティーには豪華アイテムを与える」
「‥‥‥そんなので上手くいくのか?」
「豪華アイテムもそうだが、人間は自尊心が強い。勝手に争いあって何度も挑戦するであろう」
よくわからない顔の純粋勇者マルチナを見て、村長はフッと笑う。
「‥‥‥其方には縁遠い話かもしれんな」
「それは褒めているのか?けなしているのか?」
「褒めておる」
「ならば良し!」
村長の間。
玉座に座る村長の前に、魔王軍の魔法使い達が集められていた。
「魔法陣で御座いますか?」
跪く先頭の黒いローブを着た魔法使いが村長を見上げた。
「そうだ、全ての階層に宿屋に戻れる魔法陣を用意せよ」
「‥‥‥はっ!」
「魔法陣の側に『非常口』と書いた看板を付けるのを忘れるな」
頷くと魔法使い達はダンジョンに消えていった。
「村長さん、何故そんなものを用意するのですか?」
勇者マルチナと共に玉座横に立っていた、バニーガールの神父メリルが可愛らしく小首を傾げる。
「100階までクリア出来んようなパーティーに、入り口まで戻るのは困難であろう?」
記録更新を狙って、体力魔力共にギリギリまで次の階層へ挑戦できる為の配慮でもある。
「そうでしょうね」
ニコリと笑い村長を見つめる神父メリル。
「‥‥‥無いとダンジョンに挑戦するたびに死ぬことになる、そんなダンジョン嫌であろう?」
「私の仕事が減り、儲けが減ります」
「‥‥‥何故とは、そういう意味か」
「それに死ぬまで出れないダンジョンなんて素敵じゃないですか、挑戦するたびに苦痛を味わい死ぬ勇者達の心は歪んでしまうかもしれませんね」
ニヤリと冷たい笑みを浮かべるバニーガール神父メリル。
「‥‥‥神父メリルよ、其方は魔王よりも魔王らしいぞ」
村長の間に沈黙が訪れた。
赤く染まるカークス村を歩く村長。
一日の仕事を終え、散歩するのが彼の日課。
彼はいつ攻めて来るかわからない勇者達を待ち構える為、魔王城を出た事がなかった。
外を歩くのは楽しい。
村長の後ろをずっと付いてまわる勇者マルチナ。
散歩は彼女の日課にもなっていた。
「余はただ歩いてるだけだ、付き合わんで良いのだぞ」
「嫌か?」
「‥‥‥嫌ではない」
「散歩してる時の貴方は嬉しそうで見てて楽しい!」
「‥‥‥そうか」
ニコニコしながら付いてくる勇者マルチナを見る村長。
村長から貰ったメイド服を着たままだ。
「似合うか?」
「豪華なマント以外は何を着ても似合うであろう」
「あの布地の少ない服も着てやろうか?」
「‥‥‥今は大丈夫だ」
「そうか!」
2人の散歩は続く。
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