6、最後の戦い
「魔王様、勇者が攻めて参りました」
物々しい翼の生えたガーゴイルが、魔王の座る玉座の前で跪きながら報告した。
「‥‥勇者マルチナが来たか」
玉座で足を組み頬杖をついている魔王。
「Lv99の勇者マルチナ率いる3人パーティです」
魔王は嬉しそうに笑みを作る。
「‥‥‥私も入り口前を守りましょう」
ガーゴイルは一礼すると外に出ようとする。
「‥‥‥良い。余の創り出した最強の勇者だ、奴らとは小細工抜きで正面から戦う。さあ‥‥扉を開け颯爽と現れる勇者達を出迎えようではないか」
トントン!
トントントン!
トントントントン!
ドンッドンッドンッ!!!
‥‥。
ギギギギギッ!
魔王の間の扉が開いた。
ファッションセンスの欠片もない、派手なマントに身を包む勇者マルチナのパーティーが颯爽と現れた。
「よく来たな勇者マルチナと仲間達よ。二度と歯向かえぬよう‥‥」
「どうして開けてくれないんだ!」
魔王の決め台詞の途中で勇者マルチナが口を挟む。
「‥‥‥なんかもう‥‥色々と雰囲気が台無しだ‥‥‥」
「何故だ!もう私の事はどうでもよくなったのか‥‥‥‥この指輪はやっぱり嘘だったのか!」
仁王立ちの勇者マルチナ。
少し悲しそう。
「勇者マルチナよ、其方らは強くなった。余も本気でいくぞ」
魔王は嬉しそうに笑みをつくる。
「‥‥‥嫌いではないんだな?」
「‥‥‥‥そんな話はしておらん」
「どっちなんだ、はっきりしろ!」
勇者マルチナの罵声が響く。
「‥‥‥こういう場合、どうするのだ?」
ガーゴイルに呟く魔王。
「愛してると叫べばよろしいかと」
ニヤニヤとガーゴイル。
「‥‥‥それでない事くらい余でもわかる。‥‥怒るぞ」
元村娘の2人も、キラキラした目でこちらを見ている。
それに気付いた魔王は溜息を吐いた。
「‥‥‥どうするのだ、戦わんのか?」
「戦うに決まってるだろう!」
勇者マルチナはそう言うと、勇者の剣を構えた。
戦士レナと僧侶メリルも武器を構える。
「‥‥それで良い」
魔王はニヤリと笑うと、恐らく最後になるであろう決め台詞を吐く。
「よく来たな勇者マルチナと仲間達よ。二度と歯向かえぬよう、其方らにこの世の物とは思えぬ絶望を味合わせてくれるわ」
「魔王、覚悟!」
勇者と魔王の壮絶な戦いが今始まる。
「次のターンでブレスを吐くぞ。耐えてみよ」
「メリル、結界を!」
「任せて!」
激しい攻防は続く。
「‥‥まだだ。まだ足りぬぞ、勇者マルチナ」
「くそ、やっぱり強い!」
勇者の剣での攻撃を、容易く受け流す魔王。
「‥‥魔王の雷(イカズチ)を喰らえ」
「行って、マルチナ!私が全て受け止めるわ!」
戦士レナの声と共に、勇者マルチナは渾身の力で魔王に斬りかかった。
「‥‥‥やるな」
深々と身体を斬りつけられ、片膝をついた魔王は自分の体力が100を下回った事に気付く。
同時に自らの死期を悟った。
笑みを浮かべる魔王。
「よくぞここまで強くなったな勇者マルチナよ。‥‥‥よく聞け、これが余の最後の助言だ」
「‥‥どうした突然」
勇者マルチナは構えを解き、魔王を見つめた。
「余の体力が100を切ると、邪神が復活し弱った余を殺すイベントが発生する。其方らに宣戦布告すると邪神はすぐいなくなる」
「‥‥‥なんだそれは!」
「もう余り時間が無い‥‥聞け。其方らはこの場で邪神と戦う事にはならない。街に戻って装備などを整えしっかり準備してから挑め。‥‥邪神は余より数段強い筈だ」
「貴方は死ぬのか?!」
「‥‥今の余に、邪神に抗う力は残っておらん」
刹那、魔王の間に閃光が走る。
無数の閃光は次第に集約し魔王の間の中心に。
集まった閃光は形を作り、それが現れた。
禍々しいオーラが魔王の間を支配する。
邪神の復活。
「‥‥‥来たか」
勇者マルチナの背後に現れた邪神に目をやる魔王。
漆黒の羽で宙を舞い、黒い球体の魔力を溜めた大きな4本の腕が魔王に向けられていた。
「‥‥‥‥」
勇者マルチナも無言で振り向いた。
目が据わっている。
「‥‥‥‥勇者マルチナ、妙な事を考えるなよ。其方も体力は残っておらんだろう」
「‥‥‥うるさい」
邪神に斬りかかる勇者マルチナ。
しかし剣が邪神に届く事はなく、勇者マルチナは邪神の周りに現れた黒い結界に吹き飛ばされ魔王の前に転がった。
「無茶をするな。今の邪神は結界に守られておる、攻撃は当たらん。邪神が去ったら結界を解く方法を探せ」
「うるさい!」
勇者マルチナは立ち上がり、魔王を守るように剣を構え邪神を睨む。
「‥‥‥最後の最後まで手のかかる勇者だ」
邪神が魔法を放つのと同時に、魔王は勇者マルチナを弾き飛ばした。
背後からの魔王の攻撃に抗う事が出来ず、弾き飛ばされた勇者マルチナ。
倒れ込む彼女が顔を上げ目にしたのは、黒い炎に焼かれ崩れ落ちる魔王の姿であった。
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