約束 ② sideエイベル

ルーク君と本を読むのは想像以上に楽しかった。知識もあるし、少し話しただけで多くを理解してくれる。だから、夕食の時間だと魔法で連絡がきて、残念に思った。

だけどそれはルーク君も同じだったようだ。俺が片付けようと言った瞬間にふわふわしていたのが一変して、悲しそうな顔になった。少し期待しながら、


「話し足りないのか?」


と聞くと、素直に頷く。懐いてくれたことが嬉しく頭を撫でてしまった。寂しそうにしてくれるのをいい事に様呼びを止めさせ、手も繋いだ。

ルーク君はそのまま、俺が帰るときまで離れず、俺は周りに嫉妬の目を向けられながらも幸せな時間を過ごすことが出来た。


「随分と仲良くなっていましたね。」


帰りの馬車の中、ラスにそう言われる。


「本の話で意気投合したんですよ。羨ましいんですか?」


からかうように返すと、ラスは真面目な顔で言い返してくる。


「当たり前です。私は孤児院の話をしたせいで嫌われてしまったかもしれないのに……。素直でいい子ですし、何よりも凄く可愛いじゃないですか、あの子。ベルと離れたくないけど、自分から手は繋げなかったのか、ベルの服の裾をつまんでいるんですよ!あんなに可愛らしい子と仲良くなれたら、幸せでしかないじゃないですか。」


あまりの必死さに少しの恐怖を覚えながら、ルーク君が聞いたら余計に近づかなるな、と心の中で言う。


「でもいいんです。必ず孤児院関連でまた王城に来てくれますし。その時に絶対仲良くなってもらいます。」


謎の決意表明をするラスの言葉を聞き流し、王城に来た時には本をプレゼントしようかな、と考える。



ラスは自分だけ懐かれなかったのが相当ショックだったらしく、王城についた後もずっと騒いでいた。

そのおかげで、第1王子にもルーク君のことが伝わり、ルーク君が次に王城に来るとき、みんなで食事をすることが強制的に決定した。

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