10話 ボスドラゴンとの対決

 そしていよいよドラゴンと対面することになった。ドラゴンは大きな翼を広げて上空に浮かんでいる。その姿はかなり大きい。人間などひと飲みに出来そうなくらいの大きさがある。しかも全身には稲妻のような模様が浮かび上がっている。明らかに普通のドラゴンとは違う感じがした。

これは一筋縄ではいきそうになさそうだな。

ドラゴンは雄叫びを上げて、襲いかかってきた。口から炎を吐き出す。それをギリギリまで引きつけて回避する。よし、これならば避けきれないということはないだろう。

 だがドラゴンはすれ違いざまに強烈な殺気をぶつけてくる。


「くっ!」


 俺は何とか平気だったが、他の3人はあの殺気をぶつけられたらひとたまりもなかった。


「ひぃっ」

「きゃっ」

「うぅ」


 三人は腰を抜かして倒れ、装備のスカートに染みを作り、地面には水溜りが出来ていた。


「おいおい大丈夫か?」

「だ、だめです」

「無理よ」

「こんなの勝てる訳がないわ」


完全に戦意喪失しているようだった。

仕方ないここは俺一人で戦うしかないようだな。

ドラゴンは再び上空へと舞い上がる。

よし、もう一度仕掛けるか。

俺は再びドラゴンの前に立ち塞がる。


「死ね、愚かなる人間よ」

「ふっ、それはどうかな」

「どういう意味だ?」

「こういうことだ」


俺はドラゴンの目の前で爆発魔法を発動させる。

ドラゴンは爆音と共に吹き飛ばされる。


「ぐぉー」

「まだまだ」


更に追い討ちをかけるように連続で爆破魔法を放つ。

その度にドラゴンはダメージを受けていく。


「ぐぁー」

「そろそろいいか」


俺はドラゴンの頭上に瞬間移動し、上空から一気に落下する勢いを利用して剣を振り下ろす。


「これで終わりだ」


ドラゴンの首は胴体と切り離され、やがて灰となって消えていった。


「ふう、終わった」


こうしてドラゴンとの戦いは幕を下ろしたのである。

こうして無事にドラゴンを倒すことに成功した俺たちは下山することにした。


「いやあ助かったぜ。礼を言う」

「いえ。当然のことをしただけですから」

「それにしても嬢ちゃん達は大丈夫かい?」


 街の人の視線はどうしても3人に向く。

無理もない。先ほど勇敢に戦った美少女3人はお漏らしの染みを作って帰ってきたのだ。


「ごめんなさい」

「恥ずかしいわ」

「もう死にたいです」


3人とも顔を真っ赤にして俯いている。


「まあまあ。無事で何よりですよ」

「そうそう」

「うんうん」


周りの人達は優しく声をかけてくれる。


「冒険者の皆さんありがとうございました。これはお礼です」


 そういわれると報酬が渡された。

当初の予定より更に多くの額が渡された。

なかなか太っ腹な街である。

こうして俺たちはドラゴン討伐の依頼を達成したのであった。


ドラゴンを倒した俺たちはギルドに戻った。

すると受付のお姉さんが駆け寄ってくる。


「ドラゴンを倒してきたんですって? 流石ですね」

「はい」

「それでドラゴンの素材とかありますかね?」

「はい。沢山持って帰って来ましたよ」

「よかったわ。それなら買い取りできます。買い取りましょうか?」

「お願いします」


こうしてドラゴンの素材を買い取ってもらうことになった。


「ドラゴンの鱗は防具の材料として需要が高いんですよ。それと爪や牙も武器になります。ただ肉は食用になるので人気があります。それから……」


お姉さんの話は止まらない。どうやら相当な金額になりそうだぞ。

こうして査定が終了するまでかなりの時間を要した。

そしてついに……。


「合計で金貨20000枚(約20億円)となります」

「おお〜」


思わず感嘆の声を上げてしまう。

まさかこれほどの大金になるとは思わなかったからだ。


「こちらが今回の報酬になります」

「はい」

「凄いな」

「こんな大金を一度に見たことないわ」

「私なんて一生働いても稼げません」

「これがお金というものなのね」

「凄い」

「本当に貰っちゃっても良いのでしょうか?」

「ええ。正当な報酬ですから」

「じゃあ遠慮なくいただきます」

「はい。これからも頑張ってください」

「はい」

「また何かあったら依頼を出しますのでよろしくお願いします」

「わかりました」

「では失礼致しました」


そういうとお姉さんは奥へと消えていった。

俺は早速袋の中に手を入れる。ずっしりと重みを感じた。


「これだけあればしばらくは遊んで暮らせるかもな」


そんなことを考えながら俺たちは宿屋に戻ることにした。


だが、この時の俺は知らなかった。

この世界には魔王と呼ばれる存在がいることを。

そしてその魔王の手下達が人間を滅ぼそうと動き出しているということを。

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