第57話 猫貴族、ダンジョンへ向けて出発する
「神獣?そう言われればあの強さも納得じゃのう」
火の神獣のフェニックスはじいちゃん達に自身が神獣であることを明かさなかったらしい。
クロエ曰く対等の喧嘩仲間としていたかったから明かさなかったんじゃないかとのことだった。
話を聞いてる限り戦闘狂ではあるみたいだけど、気持ちの良さそうな神獣みたいだ。
その後は、父さんと兄さんに対する戦闘のダメ出しが続いた。
父さんは付与に頼りすぎて魔法や剣の訓練を疎かにしてるんじゃないかって言われてたな。
兄さんに関してはもっと辛辣で、同年代で勝ててるからといって天狗になってるし、今まで格上と戦ってこなかったから動きに工夫がなく、直線的過ぎるため非常に読みやすいとボロボロにこき下ろされていた。
「なんと明日からダンジョンへ行くじゃと」
“面白そうじゃのう“と少年の様に目をキラキラさせている。
じいちゃんの魔纏とかも教えてもらいたいし、一緒に来てくれるなら大歓迎なんだけどな。
そう伝えるとばあちゃんと二人で付いていくぞと盛り上がっていたのだが…
「私もやめておこうかしら」
なんとばあちゃんが行かないと言い出したのだ
「なぜじゃ?ダンジョンなんて絶対に楽しいぞ」
「そうだぜ、母上。是非行ってこいよ。なぁ、ルーク?」
父さんはなにやら必死にばあちゃんをダンジョンへ行かせようとしている。
ははーん。さては、屋敷にいると毎日しごかれることになるからちょっとでもいなくなってほしいんだな。
自分で呼び戻したくせにとも思うが、あれだけボコボコにされているのを目にすると、父さんの気持ちもわからないではない。
「あら?なに呑気なこと言ってるのよ。あなたたちのために残ると言ってるのよ?確かにルークにゼファーがついて行けば、ルークやティアにいい経験になるでしょう。でもなにも私も付いて行く必要はないわ。それなら私はここであなたやオーガスト、フェリシアに修行を付けた方がよっぽど効率が良いわ」
ばあちゃんの説明に父さんと兄さんだけでなく、今まで他人事の様な顔をしていた姉さんまで顔を真っ青にしている。
「確かに義母様のおっしゃる通りね~。今後貴族派と戦う時に一番狙われる可能性が高いのは確かにルークだろうけど、私たちも狙われる可能性は十分にあるわ。そうなった時にもっと戦える準備をしておけって義母様は言いたいんですね」
「流石はアリアね。あなたたち四人まとめて私が面倒見てあげるわ」
翌日、僕、ティア、それにクロエとヴィクターは馬車に乗り込んだ。
ちなみに御者は“執事の嗜みですから”とヴィクターがやってくれる。
しかし、まだ出発は出来ていない。
それは何故かというと…
「では行ってくるぞ、メリア」
「あなたなら心配ないと思うけど気を付けてね」
「寂しいのぅ。やっぱりメリアも行かんか?」
目の前で最恐夫婦によるピンクな茶番劇が繰り広げられているからだ。
「んっん。おいおい良い年してやめてくれよ。目の前で50を過ぎた両親のイチャイチャを見せられるこっちの身にもなってくれ」
父さんに注意された二人はそれでしおらしくなったり、赤面したりする玉ではなかった。
「夫婦でイチャイチャして何が悪いんじゃ」
「あら?あなたこそアリアとのイチャイチャが足りないんじゃないかしら?まだ四人目もいける年よね?」
この二人にはどんな攻撃も通じないらしい。
ここは助け舟を出すことにするか。
「もう出ないと予定の街までたどり着けないよ?」
「ん?それもそうじゃのぅ。では名残惜しいが行ってくるな、メリアよ」
「えぇ、気を付けてね。チュッ」
チュッ!?
まさかそんなものを見せられるとは。
僕もまだティアとしたことがないのにと思い、ティアを見ると目があった。
顔を真っ赤にしていてどうやら僕と同じことを考えているようだ。
「おっと、これは子どもには刺激が強すぎたようじゃな。じゃあ行くとするかのぅ」
そして馬車はようやくロッソ家の屋敷を出発した
「で?どこのダンジョンに行くんじゃ?」
「東の男爵領の奥まったところの山にあるダンジョンに向かうよ。なんでもリザードマンがいるらしい」
父さんから聞いたところ、まだ出来て10年程と若いダンジョンらしくそこまで強い魔物は出ないのではないかと言っていた。
男爵領ではダンジョンが見つかった当初は混乱したものの、今ではダンジョンの傍に小さな町を作り、冒険者を呼び込むなど観光の目玉としているらしい。
そんなダンジョンの攻略を狙い、魔力溜まりを吸収してしまっていいのかとも思うが、国としても冒険者ギルドにしてもダンジョンの攻略は推奨しているので攻められることはないとのことだった。
「リザードマンか。奴らは槍で戦うのが多いからのぅ。人型との良い訓練になるんじゃないかのう。あとは時間を見つけては二人に魔纏を教えていくからのぅ。」
「「よろしくお願いします」」
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