第47話 猫貴族、学園長に報告する


ルドルフが指揮する場所へ向かうと、Sクラスの皆が声を張り上げて他の生徒たちを落ち着かせようとしていた。


「殿下だ!殿下が帰ってきたぞ」

「おぉー殿下!よくぞご無事で」


一人が僕たちに気付くと、一斉に注目がこちらへ向けられる。


「みんな聞いてくれ。オークの群れはここにいるルーク・ロッソが中心となり殲滅に成功した。ただ、いきなり発生した原因は不明だ。だからオークがもういないことが明確に確認出来るまではここで指示に従ってほしい」


「あのオークの群れをたった三人で!?」

「殿下!殿下!」


皆が殿下の言葉に夢中の間に、笑顔のルドルフがこちらへやってくる。


「流石だねルーク。君ならやってくれると信じてたよ」


「いや、ルドルフがそっちを指揮しながらクリスとティアを派遣してくれたからこそだよ」


ルドルフとがっちりと握手しながら互いを労う


「それよりも先生たちは?」


「それなら今カイトとアダンが呼びに向かってる。そろそろ帰ってくるはずさ」


噂をしているとクルト先生たちをを連れたカイトとアダンが戻ってきた。


「ルークがここにいるってことは全部倒したのか?」


「ええ、クリスとティアの協力のお陰で」


「そうか。助かった礼を言う。詳しい事情は帰ってから聞く。まずは森を出ようか」


「えっと本当にクルト先生?」


「なんだよ!真面目な顔しちゃ悪いか?俺だってやる時はやるんだ」


珍しく真面目な顔をしたクルト先生に違和感を感じつつも、先生の指示に従い撤退の準備をしていく。


「よーしお前たち、クラス順でこの森を出るぞ。順番はE、D、C、B、A、Sの順だ。Sクラスは何かあったときに殿として頼むぞ」


その後は皆緊張感を持って森から帰還していったが、特にトラブルはなく学園に帰り着くことが出来た。








他の生徒たちは帰宅していく中、僕とクリス、ティアの三人は事情を説明するため、学園に残っていた。

クルト先生についていくと、待っていたのは学園長だった。

学園長は元宮廷魔術師師団長を務めたという白髪にサンタ髭を生やした見るからに魔法使いのおじいさんだ。

幼少時のクリスの家庭教師を務めていたらしく、王家からの信頼も厚い人らしい。


「入学式以来じゃのう。学園長のゼルビアじゃ。今回はよく他の生徒たちを守ってくれたのう。感謝する」


あの後、先生たちによる被害確認の結果、怪我をした生徒はかなりの数いたのだが、幸いにも死者は出ていなかった。


「Sクラスとして、そして王族として当然のことをしたまでです」


そしてクリスがここだけの話としてほしいと断った上で、今回の原因が人為的なものであり、ブランデンたちがなんらかの事情を知っていると思われることを説明した。


「おそらく殿下が考える通りじゃろうが、マクレガー公爵子息は口を割らんじゃろう。取り巻きにも既に口封じの指示はしておるじゃろうしの。一応事情聴取という形は取るが強引な手を使うとマクレガー家が煩いじゃろうし形だけになる可能性が高いのう」


「でしょうね。ただ、貴族派が魔物を生み出そうとしていることと、それを用いて何か起こそうとしていることは間違いないでしょう」


「学園側も目立たぬように貴族派の子息、令嬢の動きを監視するようにしよう」


「お願いします」


「ところで、既に殿下は予想しておるかもしれんが、今回の件でSクラスの生徒たちは王宮にて表彰されることになるじゃろうの。こんな大問題が発生したにも関わらず被害を0に抑えられたんじゃからのう」


「勲章が与えられるのは間違いないでしょうね」


勲章というのは国にとって非常に有益だと認められる実績を打ち立てた時に授けられるものらしく、かなり名誉なものだそうだ。

勲章は二種類あるらしく、通常与えられるのは【白竜勲章】で、国家の危機を救うなどの活躍をした際は【双竜勲章】が授けられるらしい。


今回の例だとSクラスの10人に【白竜勲章】が与えられるだろうとのことだった。


「王宮で緊張なんて緊張するね」


「でもみんなと一緒だし平気なんじゃない?」


「ふふ、そうだといいがな」


「じゃのう」


ティアと楽観的に話しているとクリスと学園長がやれやれといった感じで首を左右に振っている。


「え、違うんですか?」


「俺に聞くな。俺は知らん」


クルト先生に確認を求めると慌てて知らんと言われてしまった。

なんだか少し不安だけどなるようにしかならないよね。

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