第39話 猫貴族、ギルマスと出会う
魔力溜まりの処理を終えた僕たちは洞穴にある仕掛けを施し、今回の件について報告するため、冒険者ギルドへ帰還した。
「エドモンドさん、森の調査について内密に報告したいことがあります」
「その様子だと只事じゃなさそうだな。ギルマスにも同席するよう頼んでくるから待っててくれ」
こうしてエドモンドさんは二階へ上がりギルマスに確認を取りに行った。
ギルマスって会ったことないけどどんな人なんだろう?
やっぱり威厳ありそうなおじいちゃんとかなのかな?
「今すぐ会うそうだ。ついて来てくれ」
案内されたのは二階の一番奥にある少し豪華そうな部屋だった。
コンコンコン
「ギルマス、例の冒険者を連れてきました」
「入ってくれ」
意外と若い男性の声が部屋の中から聞こえた。
「失礼しま…ッッ!」
ドアを開けるとオーラ全開の虎?の獣人が執務机に座っていた。
一瞬気を持ってかれそうになったが、なんとか耐えることが出来た。
「これに耐えるか。しかも後ろの執事は無反応と来た。報告以上に出来るみたいだな。俺が冒険者ギルドエルマーレ王国王都支部のギルドマスターのベルガーだ。見て通り白虎の獣人でSランクの冒険者でもある。」
「Dランク冒険者のルーク・ロッソです。こちらは我が家の執事で同じくDランク冒険者のヴィクターです」
「お前さんの肩に乗ってる黒猫に無性に跪きたい気持ちが湧いてきてそこんとこの話も聞いてみたいところではあるが、早速報告を聞こうか。わざわざ内密に報告したいってことはよっぽどだろう」
「実は…」
森が異常に静かだったこと、森の奥に進むと隠れるように洞穴があり、武装したホブゴブリンたちがいたこと、極めつけに最奥に魔力溜まりがあったことを順を追って報告していった。
ただし、漆黒魔法で除いたホブゴブリンの記憶にいた黒い男については話さず、武装したゴブリンがいることは不自然であり、人為的な意図があるのではないかという理論で説明した。
「武装したホブゴブリンに魔力溜まりだと…。明らかに異常事態だな。これは頭が痛いな」
「魔力溜まりってなんですか?」
「あぁ、エドモンドは知らなかったか。魔力溜まりは極稀に原因不明で発生するもので、そこから魔物を生み出したり、ダンジョンへと成長したりするかなり危険な代物だ」
「なぜそんな危険なものが我々ギルド職員に知らされてないんです?」
「そもそもダンジョンと遺跡の違いは分かるか?」
「ダンジョンは強力な武器や希少な魔道具が発掘されるものの、大量に魔物を生み出し危険なため、Aランク以上の冒険者にしか情報が開示されないもので、遺跡は魔物もほとんどいないので魔道具や武器の発掘のために数多くの冒険者が派遣されてるとの認識ですが…」
「まぁ間違っちゃいないな。遺跡ってのは過去にダンジョンだったものが魔力を失い朽ちちまった姿だ。ダンジョンと同じく強力な武器や魔道具が発掘されるのはこのカラクリがあるからだ。過去、ダンジョンという魔力の塊が武器や魔道具を生み出しているのに目を付けた国が意図的にダンジョンを増やそうとしたことがあってな。途中まではダンジョンが順調に増え、強国になるかと思われていたんだが、ダンジョンから魔物が溢れるスタンピードの発生によってあっという間に滅んでしまった。結果、ダンジョンは恩恵をもたらすと共に非常に危険な物だと認識した各国や冒険者ギルドの上層部はダンジョンの立ち入りを制限し、同じ過ちを繰り返さないためにも情報を制限することに決めたんだ」
「では今回のことが人為的に引き起こされたのだとしたら非常に危険なのでは?」
「そうだ。だからこそ頭が痛いと言ってるんだ。魔力溜まりを早々に処理しないといけないが、準備にかなりの手間が必要でな。今からでも各国のギルマスに声をかけないと…」
「あっ魔力溜まりならもう処理しておきましたよ?」
「「…は?」」
「ルーク!お前さんはキリキリ知ってることを話そうか」
なんだかギルマスが悪い顔をしてるが、僕が言い出さなかったんじゃなくて、言い出す暇がなかったんだ!
だから僕は無実だ!
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