第23話 猫貴族、執事を雇う
屋敷に戻り自分の部屋でエル婆の店でもらった本を眺めていた。
中身は全く読めない文字で書かれており、挿絵もないため中身を解読することは出来なかった。
(でもなんだか気になるんだよな~。魔眼で見てみても魔力反応はないし。クロエ~これまた精霊が眠ってるとかじゃない?)
(精霊が眠ってないのは確かにゃ。でもあたしも確かにただの本じゃないとないとは思うにゃ)
(じゃあ試しに魔力でも込めてみるかな)
本に魔力を込めた瞬間みるみる手から魔力が吸い取られていき、本が怪しく光り始めた。
(くっかなりの魔力が抜けていく…これはきつい)
光が収まるといつの間にか本は消え去り、一人のロマンスグレーの老人が佇んでいた。
燕尾服に身を包みモノクルをかけた見るからに普通の執事だった。
いや、山羊のような見事なツノや大きな羽が生えているのを除けば…だが。
「長き眠りから解放頂き誠にありがとうございます。我が主よ。」
なにやら感謝の言葉を述べながら、綺麗にお辞儀するロマンスグレー。
「えーっとどちら様?」
「これは失礼致しました。わたくしは名も無き悪魔でございます。そちらの方は闇の神獣様…ですな?」
二コリと微笑みながら自己紹介をするロマンスグレー…いや悪魔
「悪魔なんて久しぶりに見たにゃ。てっきり滅んだとばかり思ってたにゃ」
「とある大公級悪魔に仕えていたのですが、破れて封印されてしまい…今に至りますので悪魔族がその後どうなったかは、残念ながらわたくしめにはわかりかねます」
クロエとロマンスグレーの説明によると、この世界が誕生した際に、最も早く生み出されたのが神の眷属たる神獣。
その後幾つもの種族が生み出されるが、争いなどで消える種族も少なくなかったのだとか。
その中でも神獣の次に生み出された種族の一つに悪魔族がいたらしい。
能力が高く好戦的な者が多かったため、同族同士で争いに発展することも多く、その影響で現在は数が減ってしまったのではないかというのが二人の見解だった。
そしてその能力の高い悪魔族の中でも王に当たる大公級の一人に仕え、己れも伯爵級としての力を持つのがこのロマンスグレーなんだとか。
このレベルの悪魔族となると、神獣との会話も可能で、他の神獣と会ったこともあったのだとか。
「………で、封印を解いた僕に仕えたいと?」
「その通りでございます。ご心配でしたら、他の契約と同様にわたくしめに名を与えてくだされば、契約で縛ることが出来るようになります」
(クロエはどう思う?悪魔と契約したら魂取られたりしない?)
(その心配はないのにゃ。他のと同様に契約時に魔力と名前さえ与えれば代償は必要ないにゃ。確かに悪魔は好戦的な奴が多いけど、自らの主には忠実な一族にゃ。)
「わかったよ。ん~じゃあ君は今からヴィクターだ」
「ヴィクター…承知致しました。改めてよろしくお願い致します、我が主よ。」
「その我が主っての辞めてくれない?普通にルークって呼んでくれたらいいから。それにツノとかって隠せたりする?仕えてもらうなら両親にも紹介しなきゃだし」
「かしこまりました、ルーク様。もちろん可能でございます。魔力で隠蔽致しますので、ルーク様以外からは普通の人間に見えるかと」
ヴィクターのツノに靄がかかったのを確認し、報告のため両親のもとへ向かった。
「はぁ…。それで今度は古の悪魔と解約する…だって?」
もうお前のやることには驚かんよ、と言いながら片手で顔を覆ってしまった父上。
いや、僕も今回ばかりは違うと声を大にして叫びたい!これはあくまでも不可抗力なんだ!
一方で母上は初めて見る悪魔に目を輝かせている。
「悪魔さんは何が出来るのかしら?」
「執事としてお仕えするのはもちろんのこと、護衛や眷属を使った簡単な諜報なども出来るかと」
「素晴らしいわね。ちょうどルークには専属執事もいなかったし、能力的にもこれ以上の存在はいないわね」
「じゃあヴィクターを雇ってもいいってことだよね?」
「あぁ、クロエが何も心配してない様子を見ると問題もないんだろうし、お前の好きにすればいいだろう。ルークはこれからも問題を起こすだろうから大変だとは思うが、頼んだぞヴィクター」
ヴィクターは恭しく頭を下げるのであった
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