第3話 猫貴族、3歳になる

~3年後~




僕はようやく3歳になった。


言葉を話せるようになり、3歳で俺というのは違和感があるのではと思い、近頃は自分のことは僕と呼ぶようになった。




この3年間は体内の魔力を感じ、循環することに費やした。


その理由は、クロエに魔法を上手く扱うには意識せずに魔力を体内で動かせる大切だと教わったからである。




そして今から待ちに待ったはじめての魔法にチャレンジするところである。




(クロエ!じゃあ『ダーク』の魔法使ってみるね)




『ダーク』




おおー部屋の中が真っ暗になってる




バタバタバタバタ




(主、あのメイドが来るにゃ!急いで解除するにゃ)




(え、嘘!どうすれば!ええい!ままよ!魔力よ止まれ!!)




ガチャ




「ルーク様、魔力を感じましたがご無事ですか?」




彼女の名前はサーシャ。今年18歳になる黒髪ロングな僕の専属メイドである。




「え?なんともないよ~。サーシャの勘違いじゃないかな~?」




「う~ん。今は何も感じませんね。さっきは魔力を感じた気がするのですが…


でも、まだ3歳のルーク様が魔法を使えるわけないですもんね」




「でしょ~。5歳の神授の儀式までは魔法使えないって父さんが言ってたもん」




そう。本来、魔法は5歳の時に教会で行われる神授の儀式に参加し、女神エステルから魔力を授かることによってはじめて使えるようになる。


5歳までの肉体で魔力を内包してしまうと、体が耐え切れずに死んでしまうからだ。




また、神授の儀式を受けた全ての子どもが魔法を扱えるようになるのではなく、火や水といった属性を授かった子どものみが魔法を扱うことが出来るようになるのである。




ちなみに属性には、火・水・地・風といった4つの基本属性と、氷・雷・光・闇の特殊属性4つを合わせた8つの属性が存在し、親和性の高い一属性のみを扱うことが出来る。




ではなぜ、3歳の僕が魔法を扱えるのかというと、クロエとの契約とアマテラス様の加護の影響によるものである。




クロエとの契約によって俺は生まれた時から闇属性の魔力を持っている。




そして、そのクロエによると、アマテラス様の加護は「健康で強靭な身体」であり、これは異世界でも健康で健やかに育ってほしいというアマテラス様の思いが反映された結果で、お陰でこの3年間全く病気にならずに育ってきた。




「それはともかくルーク様、夕食の準備が整いましたので、ダイニングへご移動お願いします。もう皆さまお待ちですよ。」




「うっそ!もうそんな時間?」




慌てて駆け込んだダイニングではサーニャのいう通り、既に家族が席についていた。




「遅くなってごめんなさい」




「危ないから廊下は走っちゃダメよ~。」




優し気な口調で僕を注意するのは、美しい黒髪を腰まで伸ばした母親であるアリア・ロッソ。

確か今年で24歳であるがまだまだ10代と言っても納得出来るほどのおしとやか系美人である。


「はっはっは、ルークよ!オーガストの真似をしてやんちゃになる必要はないんだぞ」


豪快に笑いながら声をかけてきたのは短髪の赤髪に口ひげをたくわえたワイルドイケメンで父親のグレン・ロッソ。母さんより2つ年上だと聞いている。


苗字があることでわかるかもしれないが、俺はなんと貴族の家に生まれた。

しかも辺境伯という上級貴族で、我がエルマーレ王国の辺境を守護する名家であるらしい。


ちなみに爵位は世襲可能な、公爵>侯爵=辺境伯>伯爵>子爵>男爵と、一代限りの準男爵>騎士爵が存在する。

侯爵と辺境伯は爵位は同等だが役割が異なる。

辺境を守護し、独自の判断で軍を動かせるのが辺境伯でそうでないのが侯爵である。


「親父!なんてこと言いやがる!」


そう声を荒げたのは、父グレンに瓜二つで赤髪で短い髪を全て逆立たせている8歳のオーガスト兄さん。


「もうお父様もお兄様も静かにして下さい!夕食が冷めてしまいますわ」


二人を宥めるように声をかけたのが、赤髪をポニーテールにまとめ、父グレンの快活さ、母アリアのおしとやかさを兼ね備えた美少女が5歳のフェリシア姉さん。


そして、赤毛混じりの黒髪に赤眼という、まさに父と母を足して割ったような容姿をしているこの僕を合わせた4人が今世の家族である。

ちなみに顔は母さん似で綺麗な顔をしているのではないかと思っている。


「ではルークもそろったことだし、食べるとするか。『大地の恵みに感謝を。いただきます』」


と父さんの掛け声に合わせ食べ始めるが、ふと気になったことがあったので聞いてみた


「今日はえらく豪華だけどなにかあったの?」


僕の質問に対し、オーガスト兄さんが


「ルーク何寝ぼけたこと言ってんだよ。今日はフェリシアの神授の儀式だって言ってあっただろ」


「あ~そうだったね。すっかり忘れてたよ。で、フェリシア姉さんの神授の儀式はどうだったの?」


「も~ルークったら忘れるなんて酷いわね。無事にお父様とお兄様と同じ火属性の魔法を授かったわ」


ニコニコと笑顔で答えるフェリシア姉さんに対し、


「やっぱり火属性だったんだね!おめでとう。」


我がロッソ家は代々火属性をもつ者が多いと言われる一族で、姉さんは無事に一族の特徴である火属性を授かることに成功したようである。


「ルークもあと2年ね。どの属性を授かるか楽しみね」


「ルークは私と同じ黒髪だし、闇属性の可能性が高いと思うけどね~」


母さんが言う通り、母さんは家族で唯一の闇属性使いで、俺が同じ属性になることを期待しているようだ。


(実はもう闇属性持ってるし、なんならその上位の漆黒魔法が使えるなんて言える訳ないよな~)


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