閑話 フランス新聞 本日のニュース
フランス共和国 AFP通信 2045年5月15日 朝刊
『国境断絶 戦争の予兆か
昨日の5月14日から、我が国の国境にて虹色の膜のようなものが発生し、他国との往来が遮断される現象が各地で報告されている。
同様の現象は空や海でも確認され、各地の空港や港湾は、立ち往生する航空機と船舶でパンク寸前となってる。
また、この影響はインターネットにも及んでおり、海外サーバーへのアクセスが不可となる状態が続いている。
これに対し、政府からは何の発表もなく、パリ中心部の共和国広場では、大勢の人々が集まって、政府に対するデモを行った。
デモに参加した人々は、広場にて座り込んでおり、参加者の一人は、政府からの発表があるまで抗議を続けると言っていた。
同様のデモはパリ以外でも多数起きており、政府による事態の説明が急がれる。
国境途絶以外にも、考慮すべき問題はある。
本日未明から各地の上空に出現した巨大なスクリーン。
原理は不明だが、そのスクリーンには男女一人ずつが映し出されている。
彼女達の言語はフランス語であり、この現象にフランス人が関わっていることが考えられる。
古代ギリシャを彷彿とさせる神殿群を探索する男性と、どこかの屋敷と思われる場所を探索する女性。
意図の分からない映像に、不安を覚える人々からも、政府への非難の声が聞こえてきた。』
フランス共和国 ル・モンド紙 2045年5月16日 夕刊
『上空に映し出される惨劇 大規模なテロ行為か
昨日の5月15日から各地の上空に出現したスクリーンとそれに映し出されていた二人の男女。
意図の分からない大規模な悪戯かと多くの人々が思っていた。
だが、そんな人々に衝撃が襲った。
映像の中で神殿を歩いていた男性が、何の前触れもなく殺されたのだ。
突然の凶行に人々が絶句する中、さらなる衝撃が人々を襲う。
男性を殺害した犯人は、背中から羽が生えており、頭上には光の輪が浮いていたのだ。
聖書に語られる天使を彷彿とさせるその姿は、信心深いフランス国民にとって衝撃的だった。
この事態を受け、デモ隊への対応に力を注いでいた警察も、ようやく重い腰を上げた。
スクリーンを投影する装置の捜索を行う警察だが、未だに手掛かりを掴んだという発表はされていない。
この醜態に対し、人々は警察への不満と共に政府への不信感を募らせる。
また、一昨日の5月14日から、我が国の国境が陸海関係なく虹色の膜のようなもので覆われている件についても、未だに政府からの発表はない。
共和国広場で座り込みを続ける人々は、有効な対策を打ち出すどころかまともな説明もできない政府への強い批判を口々に吐き出していた。』
フランス共和国 リベラシオン紙 2045年5月19日 朝刊
『日本の快挙 愚昧なフランス政府
昨日の5月18日、日本の探索者が人類で初めてダンジョンの階層を攻略したと発表された。
これは突然戦争を仕掛けられ、不安に包まれていた人類にとって、ようやく差し込んだ一筋の光明だった。
人類史へ輝かしい栄光を刻んだ日本と比較し、我が国の戦績は振るわない。
現在、我が国の探索者アルベルティーヌ・イザベラ・メアリー・シュバリィー女史は、人類同盟と呼称する複数国家の探索者達による集団に属している。
シュバリィー女史は、カトンジツという強力な火炎放射を放つことのできる能力と手裏剣を無数に生成する能力を有している。
これにより驚異的な戦力を誇る女史だが、彼女との連絡を未だに取ることのできない政府によって、十全に能力を発揮できずにいる。
16日の夜、初めて政府が今回の事態を説明した会見で、メスメル大統領はダンジョンから供給される物資により、フランスは未曽有の発展を遂げ、シュバリィー女史は我が国の支援により華々しい戦果を挙げるだろうと言っていた。
しかし、実際にそのような栄誉が与えられているのは日本のみであり、我が国を含めた大多数の国々は満足な物資を供給されないまま、ダンジョンの攻略を遅々として進められていない。
政府による背信行為ともいえる現状に、フランス国民の怒りが爆発した。
16日夜に行われた政府発表により、終息を見せていた各地のデモは再び激しさを増している。
メスメル大統領と政府は、これまでの行動を客観的に見返す時期が来たのかもしれない』
フランス共和国 ル・フィガロ紙 2045年5月26日 夕刊
『フランスの救世主 日出ヅル国との同盟
本日5月26日、日本が再び階層の攻略に成功し、我が国と同盟を結んだ。
今回の攻略には、我が国のシュバリィー女史も大きく貢献しており、これにより日本との関係が大きく深まった。
そして、女史は近年稀にみる外交的成功を治めた。
日本との同盟である。
日本はGDP世界第2位の経済大国であり、西太平洋の中心的国家だ。
ダンジョン戦争では、高い技術力と極めて優秀な人材によって、現在までに4つの階層を攻略し、この戦争で最も戦果を挙げている国家である。
元々我が国と日本は経済、文化、外交の面で強い結びつきがあり、有数の友好関係にあった。
そんな日本との同盟は、我が国の国際的地位を高めるだけでなく、シュバリィー女史への支援など、あらゆる面で我が国の助けとなる。
そして早速、日本から我が国への物資の援助が行われた。
日本の探索者であるトモメ・コウズケ氏は、同盟が締結された直後、我が国とシュバリィー女史が連絡を取れていない状況に気づき、即座に対応した。
それにより、我が国が直面していた深刻な物資不足への問題が解決されたのだ。
今回、我が国に送られた日本からの援助物資は280万t。
これほどの支援を迅速に行った日本とコウズケ氏に対し、メスメル大統領は感謝の意を表明した。
戦争が今後どのような状況になるのか見通しが立たない現状だが、今回の同盟により、我が国の未来に一筋の光明が差し込んだ結果となった。
最後ではあるが、我が国の救世主となったトモメ・コウズケ氏に対し、一人のフランス国民として謝辞を述べたい』
フランス共和国 ル・パリジャン紙 コラム欄 2045年6月4日 夕刊
『フランスと日本 愛憎乱れる女の戦い
ダンジョン戦争における初めての国際裁判に、人々の注目が集まっている。
そんな中で、筆者は敢えて、日仏間における人間関係について筆を走らせる。
具体的に言うと、日本の探索者コウズケ氏を巡る、シュバリィー女史とタカミネ女史の女の戦いについてだ。
我が国の探索者であるシュバリィー女史が、コウズケ氏に並々ならぬ感情を抱いていることは、まともな感性を持つ読者諸氏にとって周知の事実だろう。
また、日本の探索者であるタカミネ女史も同様の感情を抱いているだろうことも、同様に感づいているはずだ。
二人の女性に関して、比較してみよう。
シュバリィー女史は祖父が大統領経験者、祖母は貴族出身、父親は国内屈指の大企業ダッセーCEO、母親は有名デザイナーと、絵に描いたような上流家庭出身者。
一方のタカミネ女史も、日本の貴族にあたる家系で、祖父は現役総理大臣、父親は世界最大の製鉄会社である新日鐵純金神戸製鋼の役員と、こちらも同等の上流階級出身だ。
見た目に関して、シュバリィー女史は少々個性的な服装ではあるものの、枝毛一つない金糸の如きブロンドと宝石のような蒼い瞳、透き通るような白い肌、フランス男が一度は妄想するフランス美少女と言えよう。
タカミネ女史は、アジア人らしい黒い髪と茶色の瞳を持ち、こちらも日本人男性が夢見る大和撫子と言える。
どちらも大変美しい女性だ。
きっと戦後はこの二人がミス・ユニバースのグランプリを競うことになるのだろう。
そんな二輪の高嶺の花から想いを寄せられるコウズケ氏だが、氏はどちらの想いにも応える様子はない。
それどころか気づく様子すらなく、彼女達のアピールは
果たしてシュバリィー女史とタカミネ女史という二人の絶世の美女は、栄光を掴むことができるのか。
明日のコラムでは、より深く恋愛模様を分析したいと思うので、是非とも本コラムを読んで頂きたい』
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