第2話 楽聖国家
私の所属していた国は、楽聖国家と呼ばれていた国だった。
貴族よりも、領主よりも、楽聖と呼ばれる人が権力を持つ国だった。
楽聖。
音楽を奏でる技術に長けた彼らは、強大な恩恵をもたらす音魔法を操り、様々な奇跡を行使する。
だから、生身の人間百人よりも、楽聖一人の命の方が重かった。
戦いの最中では、楽聖一人の命を救う為に、何百人も犠牲になる事がよくあった。
そんな楽聖国家は、世界救世の意思を掲げて、他国を侵略してまわっていた。
肉の器を捨てて、精神体になる事でこの世界に住む人達を救う事を目的とした彼らは、敗北した国を統治することなく、捨ておいた。
壊された街並みの中で途方に暮れる住人に手を差し伸べる事はせず、利用できるものだけを略奪していく。
それどころか、余力が残っているようなら、再起不能になるまで徹底的にいためつけていた。
見の毛のよだつ行いだと思う。
だが、軍人として国のために行動していたあの頃の私は、自らが所属する国家の行いに、何の疑問も抱いていなかった。
彼等に、オルタライズと、キャロンディールに会うまでは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます