第408話 マジか
ロスキートを二十匹倒してわかった。
こいつ、硬いのは鎌と胸辺りだけで、他は9㎜弾でも充分なくらい柔らかかった。
そうなればリンクスやタボール7じゃなくてもベネリM4でも充分だ。弾を節約するためにもロスキート相手ならベネリM4で対応することにした。
「てか、ロスキートばかり集まってくるな?」
ローダーは単独で動いており、タワマン群から奥にいかないようにしている。
いったとしても一匹か二匹。それでもすぐに戻ってくる。
だが、ロスキートはタワマン群を平気で越えてくる。しかも、オレたちの位置がわかるのか、次から次へ集まってくるのだ。お陰で魔石を取り出すのも大変だわ。
とは言っても魔石の場所はわかったし、慣れもした。次が現れる前に取り出せるようになったよ。
「イチノセ。次がきます」
「もう五十匹は殺してんだがな!」
現れた三匹に向けて鹿撃ち用のバックショット弾を放った。
最初、ロスキートは五、六十匹のはずだったんだが、なぜか時間とともに反応が増えてやがる。ざっと反応を見ただけでも百は越えているよ。
「この世のすべてのロスキートが逃げ込んできてんのかよ!」
ピクピクするロスキートの頭を吹き飛ばしてやった。
すぐに魔石を取り出し、次がくる前にその場から逃げ出した。
朽ちた建物に入り、弾の補給と水分補給。まだ十五時なのに膝が震えてきたよ……。
「──タカト。悪い知らせだ」
と、カインゼルさんから通信が入った。
「八匹のローダーが入ってきた。そして、ロスキートも。余裕で二百匹はいるな」
………………。
…………。
……。
「マジですか?」
「マジだな。わしも受け入れるまでしばらくかかった」
三次元マップを開くと、動体反応が重なりすぎて数がわからなくなっている。どうしようもないくらいマジだった……。
「カイン──」
「──くるなよ」
こちらから言う前に制されてしまった。
「お前は必要な存在だ。わしのために命をかけるな。こちらはこちらでなんとかする。お前は逃げろ」
こ、この人、万が一のとき、自分が囮になるために残ったな……。
「……わかりました。ですが、ロスキートをこのままにはできません。サイルスさんたちもまだ仮拠点に到着していません。あちらにもロスキートが向かっているみたいなので。あと一日か二日は陽動をします。カインゼルさんは潜んでいてください。これは命令です」
オレは誰かの屍を越えて生き残る趣味はない。安全第一、命大事に。死者ゼロがセフティー・ブレットのモットーだ。死ぬ前提の作戦などしていられるかよ!
「……わかった。タカトの命に従おう」
通信を切って息を吐いた。
大丈夫。数的にこちらが不利だが、地の利はこちらにある。武器も道具も揃っている。イチゴもいるんだからやりようはあるさ!
「考えろ、オレ。誰も死なない作戦を考えるんだ」
建物の中をグルグルと歩き、思考を巡らした。
「イチノセ。ロスキートの群れがやってきます」
三次元マップを開くと、三十近いロスキートが四方から向かってきた。まるでここにオレらがいるとわかっているように。
通信? いや、それならカインゼルさんのとこれにもいってないと辻褄が合わない。熱や音でも同じ。他とは違うなにかがオレらにあるってことだ。
「……イチゴか……」
違いがあるとしたらそれしかないが、イチゴのなにがロスキートを引きつけると言うんだ? なんなのかわからないが、イチゴが引きつけているかどうか確認することは簡単だ。
イチゴをホームに入れて、その建物から移動する。
少し離れたところの建物に入り、今までいた建物を見張った。
すぐにロスキートの群れが集まってきて建物を囲み、何匹か中に入った。
反応が消えたことに戸惑っているみたいだが、なにもないと判断するとバラバラになって飛んでいった。
うん。ロスキートはイチゴに集まってきている。
それなら作戦は簡単。イチゴをエサにしたらいいだけだ。
また建物から出て、ロスキートが群れた建物の中に入った。
ガソリンタンクを取り寄せ、建物の中に振り撒いた。
三本を振り撒いたら二十キロのガスボンベを三本買ってきたて三方にセット。イチゴを連れてくる。
三次元マップを開いて待っていると、バラバラに散ったロスキートが動きを止めた。
しばらくその場に止まっていたが、なにかを感知したかのようにウロウロと徘徊し始めた。
二分くらいしてロスキートどもが一斉に動き出して、こちらに向かってきた。そこまで感知能力は強くないが、半径二百メートルが感知できる範囲っぽいな。
ガスボンベの弁を開いていく。
「イチゴはそこから動くなよ」
「ラー」
EARを取り寄せ、建物から出てロスキートが現れたらここにいるぞと乱射した。
続々と集まってくるロスキート。罠とは知らず集まってくるお前らが大好きだよ。
全方位を囲まれたら建物の中に入り、イチゴをつかんでホームに入る。
窓から外を覗けばロスキートに侵入されていた。
「死にされせ、クソ虫どもが」
発煙筒を発火させてダストシュートにポイ。窓が炎に染められた。
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