第337話 やる気全開
二日目はさらに暖かった。
八時の時点で十度になっており、時間が過ぎるとともに気温は上昇。ゴブリンは増加。昼には二十度に到達。ゴブリン駆除は百匹を突破。さすがにキツくなったので午前中で止めることにした。
「ゴルグ。オレは町に戻ってヨシュアたちを連れてくる。明日も暖かくなったらさらにゴブリンが出てくるかもしれんからな、数を集めておくよ」
「わかった。おれはもうしばらくゴブリン狩りをするよ。雪も解けて歩きやすくなったからな」
「ああ。ちゃんと印をつけながらやれよ。方位磁石は持ったか? ちゃんと方向を確認してから進めよ」
「お前、たまに母親になるよな。遠くにいかないから安心しろ」
ベネリM4のストックのほうで「しっし」と追いやられてしまった。
ったく。心配してんのに失礼なヤツだ。まあ、そう遠くにいかなければ気配でわかる。迷ったとしても探すのは簡単だろうよ。
ため息一つ吐き、パイオニアに乗り込んで町に戻った。
こちらも雪は解けており、泥跳ねが酷い。舗装道路が懐かしいよ。
すぐに町へ到着。巨人区に向かってヨシュアたちに説明し、奴隷紋が消えた者を中心に巨人村(仮)に連れて戻った。
「ダイル。しばらくここに滞在してゴブリン駆除をやってくれ。巨人たちには話を通しておくから」
第三隊のダイルはまだ奴隷紋があり、戦争時は兵士長だったとか。奴隷紋をなくした者らを上手く纏めてくれるだろう。
「それと、ダイルたちには銃を覚えてもらう。ゴブリンには銃のほうが駆除しやすいからな」
プライムデー前に買ったP90五丁とグロック17六丁が使わずにある。消えても惜しくないものだから練習用に使うとしよう。
まずは斧を渡して薪を割ってもらい、その間に兄貴さんにダイルたちを常駐させることを伝え、家を造ってもらうようお願いした。
「おう、任せておけ。すぐに造るよ」
巨人のすぐは本当にすぐだ。きっと、明日には完成することだろうよ。
「ダイル。まず五人に銃の扱い方を教える。兵士だった者を選んでくれ」
兵士なら戦いの心得もあるだろう。武器は違えどバカなことはしないだろうよ。
選び出した五人にグロック17の、と言うか、銃の説明をする。
弾が空のままグロックを持たせて銃の重みと感じを慣れさせた。
三十分くらいやらせたらマガジンに弾を一発だけ入れさせ、装填して撃たせた。
これを五回繰り返させてから全弾入れさせて、木に向かって撃たせる。結構グロックって長持ちするんだな。
どれも千発は撃ってるはずなんだが、もっとイケるってことか? なら、練習用として使うとしよう。
慣れたら別の五人に交代して同じように教える。これで十人が知ったってことで、使ってない者に教えさせた。
大体二時間くらいで全員がグロックの扱い方を覚えた。
訓練としては付け焼き刃レベルだが、なにも知らずベレッタ92うんぬんかんぬんを撃ったオレよりは遥かにマシだ。
「皆、飲み込むのが早いな」
元兵士だから? 過酷な環境がそうさせたの? 数日でオレを追い越しそうなんですけど!
「マスター。この銃はおれらでも買えるのですか?」
「買えるのは買えるが、手持ちの報酬では無理だな。グロックは安いが、それでもゴブリンを十五、六匹は駆除しないとダメだな。それに、予備のマガジンと弾を考えたら二十匹は駆除する必要がある。もし、どうしても欲しいと言うなら山脈向こうにいって狂乱化を起こして駆除することだな」
アシッカやマイセンズにいるゴブリンは少なくなっているから狂乱化させるほど数はいないはずだ。洞窟内は別だろうが、今は探索中。それほど数はいないはずだ。
「この銃は貸していただけるのですか?」
「まあ、やりたいと言うなら貸すが、貸せる数はそれだけだ。銃は強力だが、とにかく金がかかる。オレも一万匹以上駆除してるが、報酬の半分は銃に消えている。剣や槍が使えるなら無理に銃に拘る必要はない。お前らならゴブリンくらい剣で余裕だろう?」
チートタイムなしで剣で駆除する勇気は未だにない。一匹二匹ならいいけどさ。
「まあ、剣と槍、装備はこちらで用意してやる。ゴブリン駆除の報酬は食料を買うことに使えばいい。金貨なら無駄にあるからな」
ノーマンさんに用意してもらった銅貨も伯爵からゴブリン駆除ギルドに譲渡してもらった。
無駄にある金貨もシエイラに五十枚は渡し、コラウスの本部にも五十枚は渡した。残り六十枚はオレら駆除員が管理している。装備を揃えるくらいなんら問題はないさ。
「そうだな。奴隷紋が消えたし、ダイルたちはアシッカの戸籍を持たせたから立派な領民だ。アシッカには冒険者ギルドの職員もきてる。初心者の証たる木符を発行できると聞いた。なら、冒険者となってマイヤー男爵領でゴブリン駆除をやる、ってのはどうだ?」
ヨシュアたちはまだ奴隷であることを知らしめる必要があるからどこにもいかせられないが、ダイルたちは奴隷紋が消えた。
ゴブリンが減ったアシッカよりマイヤー男爵領に移ってやるほうが稼げるはずだ。それなりにいた気配があったからな。
「はい! やります!」
と、ダイルだけじゃなく皆もやる気全開だった。
「よし。まずは銃の扱いと旅立つための資金稼ぎだ。まだこの周辺にはゴブリンがいるしな。一人五匹くらいは駆除できるはずだ」
「はい! 駆除し尽くします!」
やる気全開でなにより。未だにゴブリン駆除にやる気が出てこないオレにもやる気を分けて欲しいぜ……。
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