第76話 港町での買い物
その後は街まで盗賊にも魔物にも襲われる事なく無事に港町ゴーダンについた。
「此処が、港町か」
「潮の香りがしてきますね」
「海が近いからな」
「それより、宿を取っておかないと」
「確かに」
ノンナに言われてしまったのであれば、仕方がない。
「大通りから少し離れた通りにある宿屋が良いらしい」
「そこを拠点にしてワープポイントは森の中に埋めるか」
「孤児院とかないの?」
「此処の領主が政策として孤児には職を与えるようにしているからね。孤児院に寄付は出来ないんだよね。森に埋めるのは発見のリスク上がるからあんまりやりたくはないんだよな」
「港町だから職は多いでしょうからね。子供のころから学ばせておけば産業もそこそこ成長性があるという感じか」
「噂によれば実験的に孤児を使ってみようって話らしい。ここで成果を見せれば孤児を大事にする領主が増えるだろうからな」
「スラム街とかでも少しは治安が良くなるかもですね」
「そうなると良いな」
取りあえず、俺達はノンナがお薦めした宿へ向かい、情報を確かめる結果としては程々に満足できる水準の宿であった。
ノンナが集めた口コミは無駄ではなかったらしい。
「今日は市場を見て回ろうか」
「そうしよう」
「おー」
それぞれにお小遣いを渡す。しかし、その前に冒険者ギルドで滞在することを伝えておこう。宿に荷物を置いたら全員で冒険者ギルドへと向かう。
「はい、滞在を確認しました。暫くの間かもしれませんが、この街の冒険者として恥じない振る舞いを心がけて下さい」
『分かりました』
今回のギルドの受付嬢は真面目そうな人であった。うむ、こういう事務員さんも良いよね。色んな意味で。
「じゃあ、二人と三人で別れて、市場の調査ね」
「「「「はーい」」」」
俺達は事前に決めていた通りに組を振り分けてそれぞれで街に市場へと繰り出していくのだった。具体的には俺、サザナミの二人組とワカバ、コクヨウ、ノンナの三人組だ。
夕方の鐘がなったら宿に戻るという事を決めて街に繰り出す。
「工芸品を見に行くか」
「そうしましょう」
俺達は食事に対してあんまり気を使わない。正直食えれば生ごみでもいける。その為、食事系は後回しにして装飾品とか工芸品が集まるエリアへと向かう。
「よく分からんな」
「そうです? 私は面白いんだけどな」
港町という事で工芸品は結構ある。庶民用の安い奴でも中には掘り出し物があると言われていた。が、俺にそんなもんを見抜く力はないので、よくわからないで完結してしまう。
しかし、サザナミはそんな事ないらしく、幾つか手に取って真剣に掘り出し物を探している様だった。
“サポートさん。なんか良い武器とかない?”
“検索完了。ご主人様が現在持っている武器を超える等級の武器が検索に引っ掛かりました”
なんか引っ掛かったらしい。見学だけでもしてみるか。
「サザナミ、面白いのがあるみたいだから見に行こうぜ」
「良いですよ」
サザナミを引っ張って露店の端の方にある武器屋の露店を覗く。そこには海外から入手してきたであろう剣、槍、弓等の武器が並んでいる。ここらじゃみない意匠も入っている。
「何があるの?」
「なんかいい武器」
「どれだろ?」
「んー、…………あれっぽい」
サポートさんが言うには奥にあるあのバスタードソード。両刃で作りもしっかりしている。飾りも邪魔にならない程度だな。んー、けどそれだけだ。ギミックとかもないけど。
「魔法の武器みたいだね」
「そうなのか?」
「何となくわかるんだよね」
「まぁ、良いけど。おっちゃん、これなんだ?」
「おう? ああ、それは呪いの武器だよ。触らん方が良い」
「呪いの武器か」
「ああ。強力な力が眠っているらしいが触れれば心臓が止まって即死する呪いがあるらしい。昔に仕入れたんだが、すっかり不良在庫だよ」
「じゃあ、俺が貰おう」
「おい、アンタ!」
道具屋のオヤジが声を荒げてきた。
「うん、良い剣だ」
「おい、あんた、大丈夫なのか?」
「心配ない。俺はアンデットの魔人なんでね」
「成程、だから死ぬ呪いは効かないのか」
「この呪いは俺には効かない。それでこいつを欲しいんだが、いくらだ?」
「置いてても負債になるしな、5万、いや2万五千エル」
「じゃあ、それで」
「値切りはしないのか?」
「身を守るのを値切りはしないんだ」
「おお、その意気、気に入った。なら3万エルにしておく。が、代わりに整備の方法を記した技術書と整備の為の品も一緒に渡して置く」
「このナイフもくれ」
「……ちっ、良いだろう」
質の良さげなナイフが手に入ったな。大型の魔物とかの解体に使えそうだ。
「儲けたな」
「ですね」
金額増やされたからなこれ位貰っていっても大丈夫だろ。あそこら辺にあったって事は売れ残りだったわけだしな。
「あっちは何してるのかね」
「さぁ~?」
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