「見えない花」

 寝たきりの祖父が布団に草が生えていると指差した。


「ちくちくするよ」


 僕は見えない草を引き抜いては

「大丈夫だよ」と言っていた。


 最期の朝、布団の隅を指して「あそこの花を」と言うので、僕は手探りで花を摘みとって祖父に差し出した。


 僕の目には花どころか祖父の顔すら滲んでよく見えなかった。

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