ふたつ世界

桔梗 哲毬子

1.仲村 祐吾(35)会社員の場合

 朝起きると世界が混乱していた。

テレビのニュースでは、世界の半分の人が消えたとかなんとか。よく分からないので、チャンネルを変える。が、変えたチャンネルのニュース番組には、誰もいない。スタジオは写っているが、アナウンサーはいない。声も何もない。ますますよく分からない。

 友人に聞こうとLINEひらく。大学の同期で、今同じ会社同じ部署にいる田村にLINEをする。


 "どうなってんだ?"


ついでに昨日LINEが来ていた佐倉に返信をしようとLINEの履歴をたどる。しかし佐倉とのLINEは見つからない。昨日のLINEだし、こんなおっさんには、そんなにLINEは来ないから、大して遡らなくても在るはずなのに。

おかしい。

名前で検索してみても、佐倉の名はない。

もしかして、さっきのニュースの消えた人に佐倉も含まれるのか?

もし、消えたとして、なぜ俺のLINEからも消えるんだ?

失踪とかなら、履歴は残るはずだ。

こんなことがあるのか?何が起こっているのだろうか?


 "世界の半分の人が消えたらしい"


田村からの返信だ。当たり前だった。俺と同じ立場の田村が知っていることは、俺が知っていることと殆んど同じだ。田村に聞いても分かることはない。どうやら俺は少し動揺してるようだ。


 "佐倉のLINE有るか?"


田村に訪ねてみる。佐倉は大学の同期で、田村と共通の友人だ。

 返事を待つ間、LINEの友だち欄を見ていると、記憶の限りだが、大体半分になっている。じゃあ と、電話帳や仕事のメールアドレス等も確認する。電話帳はLINEと同じく半分くらいに、仕事関係は6割程度まで減っていた。


 "ない"

 "お前のところも無いのか?"


 "ああ、ない"

 "何が起こっているんだろうな…"


やはり、田村のところからも佐倉の連絡先は消えているようだ。

佐倉は無事で居るのだろうか?何か面倒なことに巻き込まれていないといいが…。


 なんだか良く分からないが仕事へは行くことになった。田村と話した結果、自分達が消えたわけではないし、休む理由はないだろうと。上司からも連絡はないし。というか直属の上司の連絡先は消えていたのだが…。

 髪をとかし、髭を剃る。パジャマからスーツに着替え、駅へ向かう。

駅につくと、電車のダイヤが乱れていた。

運転手で、消えた人が居たのだろうか?本当に半分の人が消えているなら、そう言うことも有り得るだろう。ごった返す駅で考える。

ああ、人が多いせいかとても暑い。前に電車が止まったときと比べると半分くらいの人数で、そこまで密集しているわけでは無いのだが。


「……本当に世界の半分の人が消えてしまったのだろうか。」


ポツリと呟いた。

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