猫来る!

@ajtgjm159

第1話 ジェリーが死んだ①

 愛犬ジェリーが死んだ。一年に及ぶ介護の末。目も見えなくなり愛くるしい目の片方は真っ白になってしまった。立つことも歩くことも難しくなり、認知症も出て、下痢も長く続いた。


食べるのもままならず、いつも赤ちゃんがするスタイをかけて抱き上げて食べさせた。時にはミキサーで流動食を作り、シリンジで口の中に流し込んだ。まるで育児だった。そして毎日の点滴。私の下手な点滴に毎回キャン!と悲鳴を上げながら我慢してくれた。


今になって思えばツンデレのジェリーが初めてゆっくり抱っこさせてくれた時間だった。最後は嘔吐が止まらず、吐くものも無くなって血を吐いて死んだ。介護に疲れてジェリーの傍でふと漫画を手にして数十分、静かになり吐き気がおさまったかと見れば、今まで見たこともないほど恐ろしい鬼のような顔をして事切れていた。


よく聞くような飼い主に見守られて天に召されるような穏やかな死に様ではなかった。どれほど苦しかったのだろう。なのに飼い主は疲れたとか言って目の前にいながら漫画なんか読んでやがった。


自分は家族を愛してくれたジェリーに最後の時をこんな形で迎えさせてしまったのか。もうひたすら可哀想なことをした、申し訳ないことをしたと後悔しかなかった。


しかし、泣いてばかりもいられない。飼い主としての最後のお仕事が残っている。それはジェリーをちゃんと見送ること。私は泣きながらその準備に取り掛かった。


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