第1話「祐徳稲荷神社門前商店街」②

※場所は前線カフェ店舗準備中の頃。オープン準備の為、機材の移動をしている蒼羽あおば。時間は深夜12時頃。(※)内は演出指示です。<>はセリフ以外の演出ほかシュチュエーションです。




蒼羽あおば:「(さて、いい加減遅いし家に帰るか)」(※心の声)




<ガタガタガタガタとカギのかかった扉から音が聞こえる。カチリとカギが開く音>




蒼羽あおば:「(※ビクついて驚く)うわあああーッ」




沙希さき:「あれ?大家おおやさんじゃない?」




祈里いのり:「ええっ!前線が通れるようになってるから…(※間を少し開ける)、てっきり…。この人(※間を少し開ける)誰?」




美琴みこと:「凄まじい神気しんきを感じるけど、この人からじゃない。」




神那かんな:「この人形!(※驚いた声で)人形じゃない!」




亜都あと:「(※待たされてやや怒ってる声で)やっと、現れましたねー沙希さき様。」




蒼羽あおば:「(※腰を抜かした状態で)狸の""が、しゃ、喋ってるー」




亜都あと:「沙希さき様が最近、祐徳稲荷神社ゆうとくいなりじんじゃ周辺に現れたと聞いて、ヌシ様に頼まれて、この姿で"おとぎ前線"の前で待っていたかいがありました」




沙希さき:「わ、私?」




美琴みこと:「(※至極、冷静に)とりあえず、ちょっと待って。この男の人、よ。大家おおやさんや宮司ぐうじさんでもない。それに神気しんきは別のところにある。離れたところから前線をこじ開けたの気配を感じる…。しかもこの人、そのを受けてる」




蒼羽あおば:「(※驚いた声で)き、君たちは一体」




祈里いのり:「私の名前は祈里いのり。宜しくね♪」




美琴みこと:「(※注意した声で)祈里いのり!」




神那かんな:「私の名前は神那かんな。そこの能天気で勝手に自己紹介した彼女が祈里いのり。そして、この美しいお姉さんが美琴みことさん、そして、このオドオドしてるのが沙希さきよ。私たちは(※小声で)沙希さきは違うけど…。


あなたたちが祭るウカノミタマ様、あなたたちがいうところのお稲荷様の眷属けんぞく。つまり眷属けんぞくというのは、お稲荷さまに連なる高潔な一族。なぜ、普通の人間では開けることができないおとぎ前線が開いたのか。そして、何故、あなたがいるのか?そして、あなたは何故、の、それもを受けてるのか?聞きたいことは沢山あるけど…。加護を受けている以上、秘密を知る権利はあるっていう事。(※怒った声で)そして、沙希さき!」




沙希さき:「(※怯えた声で)ひーっ!」




神那かんな:「このチビ狸は何?貴女と同じ気配がするけど…。」




亜都あと:「よーーく聞いてくれました。私の名前は亜都あと。そこにおわします沙希さき様が消息をお絶ちになって、数百年…。次期隠神刑部いぬがみぎょうぶと称された沙希さき様を探す為、八百八狸はっぴゃくやだぬき一族総出で探していたものの姿かたちも気配も感じず、(※物思いに耽る感じで)ようやく最近、この"おとぎ前線"で姿をみたという風の噂を耳にし……」




蒼羽あおば:「す、すいません。これって夢ですかね?」




祈里いのり:「夢じゃないよ♪」




蒼羽あおば:「と、とにかく、俺はもうおいとまします…。お、お疲れ様でしたー」




<駆け足で逃げる蒼羽あおば。バタリと出入り口の音が聞こえる>


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