EP8 試合開始《バトルスタート》
新進気鋭のRe-sports選手『ryo』はモデル出身の選手であり、ゲーム歴は浅い。
彼がゲームというものを真剣にやり始めたのは二年前のこと。今までほとんどゲーム文化に触れていなかったのにもかかわらず、彼は持ち前の高い運動神経と要領の良さであっという間に大会で結果を残せるほどの実力者になった。
現役のモデルでもある彼は当然のごとくルックスもいいので、既に彼には五社のスポンサーが付いている。芸能界との繋がりも強く今後更なる活躍が期待されてる優良株だ。
それと相対するのは謎の忍者マスクを付けた青年。
見る人が見れば彼が付けてるマスクは暗躍戦隊のシャドウブルーだと分かるが、その作品が放送されていたのは十年も昔の話、ネット掲示板では何人かのコアなファンが「あのマスク、超レア物じゃん」と気がついたが、一般視聴者はそれが戦隊ヒーローのものであることすら気がつかなかった。
「にしてもこんなサプライズがあるなんてな!」
「馬鹿、仕込みに決まってんだろ」
「それもそっか」
唐突に発表されたエキシビションマッチだが、観客の多くはこれが予め組まれたものだと予想していた。ライブにおけるアンコール的なもので、優勝者に見せ場を作ってあげるという粋な計らいだと誰もが思っていた。
しかしそれが違うことをスタッフと関係者、そして戦う二人の選手だけは知っていた。
「さて、気乗りはしないけどいっちょやりますか」
「くく、吠え面かかせてやるよガキが……!」
二人は眼鏡型情報端末
「
「
両者の
ryoのキャラは先ほどと同じ革鎧を身につけ、
空のキャラはもちろん忍者……なのだが、見た目は一般的な戦士に変装している。この姿だと能力値が下がってしまうし使えるスキルも限られるが、身バレするよりはマシだ。
「……やっぱ慣れないな」
目の前に現れた自分のキャラを見て青井空は小さく呟く。
いつもは自分の肉体となっているキャラが目の前にいるというのは不思議な感覚だ。Re-sportsを頻繁に遊ぶ者であればその違和感は薄まっているが、空はいつもVR空間でしかプレイしてないのだ。
ちなみに
この独特の視点も空を大きく困惑させた。
「ま、やってみっか。動いてれば慣れるだろ」
そう楽観的に言うと、空はキャラに指令を出し右手に持った小太刀を構えさせる。Re-sportsに置いてもキャラを動かすのは脳波による指示がメインだ。VR空間のそれと同じシステムだが自分の体を動かさずキャラだけ動かすのには慣れがいる。初心者はよく体も一緒に動かしてしまう。
「忍者くん、君の正体は知らないし興味はないがスポンサー獲得のため華々しく散って貰うよ」
「御託はいいからかかってきな。遊んでやるよ」
空はキャラが指をクイクイと曲げ挑発する。
それと同時にバトル開始のゴングが鳴り響く。
「恥をかく前に瞬殺してあげるよ……!」
ryoはそう言うと、
(このガキの武器は小太刀一つ。打ち合いになれば盾を持っているこちらが有利だ……!)
空のキャラは布地の防具を身につけており、金属や鉱石製の防具は身につけていない。盾も無く武器も小太刀のみ、必要最低限の装備にすることで重量を極限まで抑える
ryoのキャラも装備重量は抑えてるものの、急所部位はしっかりと硬めの防具を装備している。
おまけに左手には円盾『シルバーバックラー』を装備しているので見た目より防御性能は高い。
速度だけなら向こうの方が速いだろうが、守りはこちらに分がある。リング端に追い詰め接近戦に持ち込めば簡単に勝てるだろう。そうryoは結論付けた。
「燃え尽きろ!」
ryoは自慢の炎属性の剣、『
もちろん空のキャラは防御力が低いのでそれをくらえば一発でお陀仏だ、空もそれを理解しているので迎撃せずに後ろにステップして回避する。
「おっと!」
「よく避けたな、だが私の攻撃はこれからだ!」
ryoは逃げ回る空に対し何度も何度も斬りかかる。時には『スキル』と呼ばれる技を使い広範囲を攻撃してみせたが、狭いリングの中にも関わらず空はそれら全てを軽々と回避してみせた。
その軽やかな動きはまるで
「ちょこまかと往生際の悪い……! だがこれで終わりだ、クイックスラッシュ!」
壁際まで相手を追い詰めたryoは攻撃スキル、クイックスラッシュを発動する。
高速の剣閃を放ち相手を斬り裂くこの技は、
(決まった!)
相手の回避先を読み、そこにクイックスラッシュを先回りして放つ。これがryoの必勝テクニックだった。どんなに速い相手もこの方法なら確実に仕留められる、そう思っていた。しかし、
「あれ?」
キャラと感覚がリンクしているはずなのに、手に来るはずの感覚が来ない。
それもそのはず、ryoの渾身の一撃はなぜか空振りしており、相手の姿は目の前から消え失せていた。
「う、上にいる!」
観客のその声に反応しryoは上を向く。するとそこには空中を華麗に舞う空の姿があった。彼は華麗な身のこなしで地面に着地すると、ryoを見て口を開く。
「VR空間で動かすのとでは勝手が違って戸惑ったけど……コツはなんとなく掴めた。こっからは俺のターンだ」
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