第18話 1000年の魔力
◇◇◇◇◇◇
途中から、ラミーを魔法で眠らせたマリエラが参戦し、こちらの手数が圧倒的に増えたにもかかわらず、怪物は全く倒れる気配さえ見せない。
フィンの⦅駿脚⦆も、とっくに切れている。
流石に全ての攻撃を避け切ることは出来ず、フィンの体力は既に限界のところまできていた。
「だ、ダメです!フィンさん、もう矢も魔力も尽きてしまいそうです!」
その言葉に、フィンは視界の端で彼女のMPの現在値を確認するが、あと回復魔法を1回使えるかどうかという値だった。
「──わかった。マリエラは離れて自分の回復に専念してくれ!」
フィンは自身の攻撃の手を緩めないまま、マリエラの再びの戦線離脱を許可する。
「すみません……、お力になれなくて……!」
マリエラは悔しくて仕方がないというふうに唇を噛み締めながらそう返すが、この状況を招いたのはマリエラのせいではない。
先程から何かがおかしい。先程まではダメージが通っていたはずなのに、今では全くそれが蓄積していく様子がなかった。
「マリエラ、ミレッタ!この戦いで、何か気が付いたことはないか?」
フィンは、怪物と向き合ったまま少し距離をとり、傍らの2人へと問いかける。
「はい……、フィンさん。あの怪物、途中からフィンさんの攻撃で傷がつかなくなりました。それに、疲労も溜まっていく様子がありません」
マリエラがそう答える。
「それは、私も同感ね。そして一瞬だけれど、貴方の攻撃がアイツに届く瞬間に
ミレッタは腐っても大魔女だ。呪いや魔法には滅法詳しい。ミレッタがそう言うなら、奴は特殊な
「それで、ここまでやって無理だとわかっていても、やっぱり私には頼ってくれないのかしら?」
「……っ!」
「いいのよ。楽になっちゃえばいいじゃない?」
「私を⦅
ミレッタは微笑みを浮かべたままそうフィンに告げる。
「──っえ。そんな……
マリエラは
「……だが」
「ほらほら、いいのよ?……うふふ」
ミレッタは相変わらず、赤子を見る母の様な笑みをフィンに向けている。
◇◇◇
フィンは迷っていた。
ミレッタを⦅
このまま俺が戦って無駄死にするより、ミレッタに戦わせて
だが、ミレッタが災厄を倒して
だが、おそらく彼女は俺が⦅転生⦆していることまでは
となれば、彼女が
何とか上手く誘導して切り抜けたいが……上手くいくのか?
マズればいろいろと終わるかもしれん。
──やるべきなのか?この一か八かの賭けを
◇◇◇
悩んだ末に、フィンは、躊躇いながらも
「ミレッタ……聞け、俺は
「──⦅
その瞬間、辺り一帯の草花から一瞬にして⦅色⦆が失われる
「嬉し──……はぁんッ!」
それと同時、突如ミレッタが喘ぎ声をあげて仰反ったかと思えば、そのまま数メートルほど浮かび上がる。
──ズズズズズズ……
その場に居る誰もが、⦅死⦆を予感せずにはいられないほどの巨大な魔力が、
「ななな何、ですか……これ──」
マリエラは、尋常でない程の魔力に死の気配を感じ、ペタリとその場に腰をつく。
「もちろん……彼女の魔力だ。正確には、その余波だが……」
フィンは、額いっぱいに嫌な汗を浮かべてその光景を見ている。
──シュルルルル……
それまでフィンを相手に圧倒的優位に立っていた筈の災厄でさえ、突如現れた異様な魔力の大きさに混乱しているようだ。先程までフィンのみに向けられていたその警戒は、今では完全にミレッタへと向けられている。
「あ、溢れ出る魔力だけで、これですか!?ミレッタさんっていったい、何者なんですか……!?」
「……ああ。
フィンはマリエラへとそう告げる。
「うふふ、⦅最強⦆だなんて嬉しいわぁ……フィン。貴方のお陰よ、愛してる。」
その言葉に、ミレッタは嬉しそうな声を上げた。空中に浮かぶ彼女の顔は、歓喜と自信に満ち溢れている。
「とにかく、奴を、倒してくれるんだな?ミレッタ。」
「うう〜ん、そうねぇ、愛する貴方のためだもの、もちろんよ。だけど……そうね、一つだけ、──
フィンはその言葉に一瞬ゾクリとしたものを感じたが、考えておく。とだけ返した。
「ふぅん、確約はしてくれないのね。どうしてそこまで拒まれてるのかはわからないけれど、いいわ──」
──グギャオオオオオオ!!!!
刹那、怪物は叫び声をあげて猛然とミレッタに突進する。
その咆哮は、ミレッタから滲み出る威圧感を必死に掻き消そうとしているかのようで、何処か悲壮感さえ感じられた。
ミレッタは全く動じる風もなく、怪物に向けてその手をかざしながら、フィンに向けて可愛らしく片目を閉じた。
「今回だけ特別よ?」
その言葉と同時にして──
◇◇◇◇◇◇
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