第27話 心理……戦?

「よいしょっと。ふむふむ、なるほど。」


俺は精霊さんが持つ2枚のカードの端っこを交互に触って、それっぽく唸る。


「見えてないと思うんだけど。」


「こういうのは気分が大事なんだよ。」


彼の言うとおり見えてはいないが、俺には何が見えているような気がしなくもなくもない。


まぁ、見えてるわけもなく。俺は勘で左側のカードを取る。


「よしっ。答えは、世界!!!」


そして、また間髪入れずに答えを言い放つ。

こんなもんはためていても仕方ない、バーっと男気よく言っちゃうのが大事。


「「は?」」


俺の答えに、またまたお二人さんが呆けたような表情をする。だから、なんでノースも?


「いや、ヒント世界だし。世界大事だろ? 世界なければ俺たちなんもできないしな。」


世界がなければ俺たちは存在せず、このゲームも成り立たない。いくら精霊さんといえど、住む世界そのものがなくなれば存在できまい。


「マジ世界大事。ワールド・イズ・ベリー・インポータント。」


俺は自分で自分の答えに心から納得し、ウンウンと頷く。


「単純すぎますよ……ヤバイ、僕不安になってきた……お腹痛い……」


「もう、僕は驚きを越えて畏怖の感情を抱かざる負えないよ。」


前からも後ろからもひどい言われようだ。

なんなら、味方のノースのほうがひどいまである。


ヒドイわ、俺上司なのに!!

仲間なのに!! 元帥なのにっ!!


「そゃどうも。で、あたりか?」


俺は少し傷つきながら、精霊さんに合否を尋ねる。


「いいや。答えは世界平和。似ているようで違うね。」


精霊さんはカードをくるりと裏返して俺に見せながら言う。


世界平和ね。まぁたしかに大切。けど、世界のが大切じゃね?


平和じゃなくても世界があるのと世界なくなるのだったら、平和じゃない方選ぶと思うけど。


いやでも、混沌になるよりは無くなったほうがいい説もある。


「はー、世界平和ね。俺も大切だと思うよ。俺のヒントは欲望まみれ。じゃあ、お前の番か。」


俺は慣れた様子で自分のヒントを告げる。

欲望まみれって、もはや答え言ってるようなもんだけどな。


「オッケー。じゃあ、これ。」


何かに納得した様子で精霊さんは、俺のカードの右側を抜く。


これでお互い残り一枚ずつだ。まぁ、俺が当てられなかったらの場合だけど。


「君の大切なものは、『船員達』。仲間は大切でしょう。」


精霊さんはやってやったとしたり顔で、ニッコリと微笑む。


たしかに、船員たちは大事だ。

命をともにし、様々な苦難を乗り越え、常に船長の砲口に晒される同士。欠けてはならないソウルメイト。


しかぁし!! 今回は違うっ!!!


「ブッブー。答えは『肩口で髪の毛を切りそろえたクール目の女の子がこちらを見て、にっこりと微笑んで首を少し傾けたときに、重力に引っ張られて少し目にかかる髪の毛、の下のおっぱい。』」


俺はカードを裏返して、答えを教えてやる。


「いいよね、肩口で髪の毛を切りそろえたクール目の女の子がこちらを見て、にっこりと微笑んで首を少し傾けたときに、重力に引っ張られて少し目にかかる髪の毛、の下のおっぱい。あれよ、待ち合わせとかしてるときにさ、自分が遅れちゃって女の子が待っててくれてんの。俺は走るわけね? で、俺の姿を見つけた女の子は、時計から目を上げてこっちを見て首をちょっと傾げるの。もちろん微笑みながら、大丈夫だよって言わんげな表情でね? そしたら、その神がかった表情の顔が傾けられることにより、髪の毛によってちょっと隠れるのね。 マジあれいいよな。かわいい。最高。 でよ、それでご飯7杯は行けるくらいなのに、そのおっぱいときた。これもう、世界中の白米を食べ尽くせるよ。マジで。」


「「……………………」」


俺が心を込めて力説していると、二人はもはや呆れるまでもなく可哀想なものを見るような表情で俺を見てくる。


いや、そんな顔で見られたらさすがの俺も少し傷つくんだが。


特にノース。お兄ちゃん、そんな子に育てた覚えはないぞ?


俺もこんなふうに育てられた記憶はないが。


「君は、本当にどうにかしてるね……。はぁ、ヒントは大切。」


深くため息をついて、精霊さんが言う。


「それ、ずるくね?」


「大切なものなのは確かだから、別にずるくはないよ?」


…………こいつ、ズリぃ。


それがありなら、俺だって使ってたし。


「それアリかよ……じゃあ、はい。」


俺はため息をついて、精霊さんの最後のカードを取る。


「もう最後だね。これで二人とも当たらなかったら、またもう一度最初からだよ。僕としては一生続きそうで怖いんだけど……」


苦笑いして言う精霊さんに、


「それはない。なぜなら、ここで俺が当てるから。」


俺は引いたカードを中指と人差し指で挟んで、ニヤリと笑いながら言った。


カッコいいだろ。これも昔からやってみたかったやつのうちの一つなのだよ。

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